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「弱点上等」の発想法

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

先日、消費財メーカー社長と首都圏の百貨店に出向き、洋菓子店と和菓子店の店舗廻訪をいたしました。

店舗廻訪の目的は2つあります。1つは「トレンド傾向」をリアルに実感すること。もう1つが企業視点ではなく「消費者として」商品を視ることです。わたくしが提供している商品リニューアルコンサルティングにおいて、このプログラムの意味は、知識を増やすことにあるのではなく、即実務にあります。他社拝見といった趣向の「〇〇見学」的なリサーチとまったく視点が異なり、刹那、真剣勝負です。

無事終了し、最後に、社長が「消費者として」購入する時間になりました。数多の会社、商品の中から選んだのは、株式会社グレープストーンが出店している“銀のぶどう”の生菓子「チーズケーキ かご盛り白らら(しらら)」税込1,080円です。

社長はご自身の奥様とお嬢様へ1つずつご購入されました。従来商品をひとつ、そして今季のリニューアル商品で6月1日に発売したばかりの“白らら パッションマンゴー”です。社長はショウケースを指差しながら「今日1日廻って、この“白らら”が気になって。他の店にもなかったし、コンビニなんかでも見たことがないですよね。これお土産にしたらきっと喜ぶと思いまして」と。

レジを待つ社長の背中を見ながら、わたくしは個人的に懐かしさと驚きが入り混じった、不思議な気持ちになりました。

実はこの生菓子はロングセラー商品。グレープストーンのWebサイトによれば、2001年発売で、累計500万個売ってきた生菓子の主力商品です。17年前わたくしが前職の洋菓子メーカーで商品部にいた頃の発売で、当時社内でも話題となり競合商品として研究テーマにあがることもありました。

実際、身内でもファンが多く、洋菓子とは無縁だったわたくしの義母がこの「白らら」が好きで、わざわざ混み合ってるデパ地下に立ち寄り買ってきてくれました。しかもリピーターで、何度も何度も買ってきてくれました。当時60代のキャリアウーマンでしたが「ワインにも合うし、このかごに盛るパッケージも、発想もおもしろいと思うのよね」と話していたことが想い出されます。

そんな想い出のスイーツですが、前職の洋菓子メーカー視点でこの商品を見つめれば、実は「弱点だらけ」の商品なのです。サイトの商品説明にあるように「上質なフレッシュチーズを自然に水切り」し「かご盛り」する、というキモの部分には、製造においてクリアしなければならない条件が多々あります。

ここ最近、消費者の間では発酵ブームが続き、そのひとつに「ヨーグルト」ブームがあります。さまざまなヨーグルト商品だけでなく、オシャレな雑貨感覚のヨーグルトメーカーで牛乳から自家製ヨーグルトを作るコト、買ってきたヨーグルトを水切りして自家製ギリシャヨーグルトを楽しむ人も。健康志向は加速し、「菌活」という新市場での展開も増えました。

一般的には乳酸菌を含んだヨーグルトやチーズは「おいしくて体に良い」ということでお客様に喜ばれています。その一方で、家庭用ヨーグルトメーカーで自作した時に雑菌が繁殖しおなかを壊したりするケースもあり、各メーカーも注意喚起をしています。一般家庭において、自分で作って「おなかを壊した」程度のことならフレキシブルに対応できます。

しかし企業においては「菌」についての取り扱いには生命線で、超がつくほどシビアに対応せざるを得ません。かご盛り 白ららにおいては、商品に付随する「水」を切る製法、「かご盛り」のパッケージ、そして「フレッシュ」なチーズケーキ、という商品特性は開発において「弱点」です。普通に考えて、リスクのある「弱み」だらけの商品と考えることができます。

冒頭の社長は一日をかけてデパ地下を巡り、帰り際に買った商品がこの弱みの極みともいえる生菓子「白らら」です。そして、洋菓子に興味のない義母を魅了し、リピート買いを促進させ、今でも「食べたい」と言わしめています。製造メーカー視点で考えれば〈弱み〉だらけの商品ですが、17年も淡々と販売されている事実、お客様がついている事実に驚きとともに、弱みこそ、圧倒する強みであることに気付かされます。

コンビニスイーツの台頭で、いまや菓子メーカーの多くが、自分の工場で、自社商品ではなくコンビニ向けスイーツ製造している矛盾があります。そして、わたしたち消費者にとっては〇〇社のスイーツがコンビニでも買えるようになり、「かつて胸をときめかせた△△△がどんどん一般化されている!」という現実が加速しています。前出のグレープストーン社もコンビニ向けに、銀のぶどうブランドの人気焼菓子「シュガーバターの木」をセブンイレブンとの共同開発商品としてリリースしています。

企業が伝える「共同開発」とか「コラボ」というのは、とても耳触りが良い言葉です。が、一般消費者にとっては、食べてパッケージの裏をみれば製造者が明白で「あのシュガーバターの木も、ついにコンビニスイーツか!」となります。

洋菓子というワクワク感で満ちていた非日常的な世界も、いまはコンビニでも手に入る一般商品世界として、無意識のうちにコモディティの大波に飲み込まれています。同じような商品が、いつでもどこでも安く手に入る時代に飽き飽きしているのが消費者の本音です。

にもかかわらず、企業は「リスクをおかしたくない」とか「失敗できない」という企業起点の事情で「弱み」や「リスク」「失敗」を採ることはできない、と言います。リスクは排除して「一般化」し横展開する。ヒットしている間にさらにプレミアム化を研究開発しリニューアルをかけ売っていく。商品寿命の短命化を招き、作っては忘れられていく「消費」が加速しています。

こんなやり方を繰り返すことができるのは、組織力と資本力を持った大手企業だけです。そして、その分野は大手企業の十八番としてお任せすれば良いのです。

わたくしたち中小企業はむしろ大手企業の考え方を真似してはなりません。ちがう道を創ってゆくこと。「弱み上等」と決意し、一般化と真逆の発想で勝負をかけてゆくことが問われています。自社で商品戦略を策定し、企画立案、仕掛けてゆくプロモーションができなければ、企業としての独自性は淘汰されてゆくでしょう。

「強み」は簡単に一般化されてゆきます。独自でプロデュースした商品でさえ、あっという間にコモディティ化。ましてや人が作った「強み」のパッケージをそのまま自社に取り入れた商品サービスは瞬殺と肝に命じてください。消費者をワクワクさせ喜びを提供していくことがわたくしたちの使命です。消費者を侮ってはなりません。

大手企業にはできない商品戦略、他社を圧倒するような商品の魅力は、弱みや失敗から生まれます。怖いからだれもやらない、不安だから取りに行かない。そこに、ダイヤモンドがあるのです。弱み上等。この道で勝負するという気魄を持ってください。

  誰でも自らの強みについては

  よくわかっている。

  だが、たいていは間違っている。

  わかっているのはせいぜい弱みである。

  それさえ間違っていることが多い。

経営学の父、P・Fドラッカーの言葉です。これからの時代、競合他社との戦いではありません。従来ビジネスモデルが染み付いている自社との戦い、経営者ご自身の意識との戦いです。つまり、自分との戦いなのです。

SWOT分析をはみ出してしまうような視点を持つためにも、経営者自らが企業起点ではなく、消費者として生活者としての視点を取り戻すことが求められています。ドラッカーの言葉を持ち出すまでもなく、自社のことがわからないのは当たり前。だからこそ、わたくしたちコンサルタントが全身全霊で社長にお伝えしていくのです。コンサルタントであるわたくし自身が先陣をきり実業において挑戦しつづけるという覚悟をもって、渾身でお導きしております。

社長、弱み上等、です。

笑われたり、

理解されないことを、

戦略的になしてゆきましょう。

ビジネスをリニューアルし、

社内に風穴をあけ

新しい風によって、

社内に嵐を起こしてゆきましょう!

 

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