売れるコピーライティングの技術
先日発生した大阪府北部での地震において、被害に遭われた方、そして今も不安のなかで耐え忍んでおられる方、お見舞い申し上げます。
地震発生の日、午後からある会社のコンサルティングをしておりました。家事代行サービスと福祉用具を提供している会社です。経営者のS氏は、高齢者宅での家事代行の現場が年々増加していく中、人生の最終章で最も大事なことは「自立して生活すること」だと気づいたそうです。自立して生活するとは、自分の足でトイレにゆくことができる、人の手を借りずに排泄ができることだと確信。「それが人間の尊厳を守り、個人の命を輝かせていく」と定義し、福祉用具の中でも「排泄ケア」に特化したユニークな商品サービスの提供をスタートさせました。
そして、昨日は事業所向けワークショッププロジェクトの打ち合わせでしたが、急遽、大阪府北部での地震について、自社の商品サービスに引きつけ、自社が役に立てることはないか等々、意見を出し合う時間となりました。
社長は阪神・淡路大震災の経験者です。当時を回想しながら、今回の地震発生後も高槻市の水道管が破裂して道路に水があふれる映像や、個人宅ではトイレの水が逆流して困っている情報が心にひっかかっているようでした。そして、介護用品のひとつであるオムツ各種を「震災時、大人のオムツこそ災害用トイレになる」。介護や福祉アイテムのひとつとして提供していた大人のオムツを再定義し、大人のオムツのリニューアルを仕組み化。さっそくアウトプットする準備を調えました。
昨日までの空気感と今日の街角の空気感は、事実変化しています。SNSのタイムラインひとつとってみても、いつもの日常風景の中に、震災の安否を気遣う発信やニュースが流れています。こうした小さな変化の積み重ねこそ、わたくしたちのマインドを変えてゆきます。昨日の世界と今日の世界にわずかな「ちがい」が生じる。ゆえに、わたくしたちが使う「言葉」にも「ちがい」が生まれます。日々、意識的に言葉を変えて行く必要がある、ということです。
前出の会社においては「大人のオムツは防災グッズ」と再定義した瞬間、例えば「大人のオムツ」を「災害用携帯トイレ」とネーミングすることができます。そこに掛かってくるキャッチコピーも全て変化します。対象とする人も、介護を必要とする方はもちろん子供から大人まで広がります。大人用オムツという従来商品はそのままに、5W2H(いつ、どこで、なにを、だれに、いくらで、どうやって、そもそもなぜ)をリニューアルしていくことで、新しい価値と喜びを提供することができます。S社長は目を輝かせて、入手方法、使い方、使用後の処理方法、行政との連携、情報提供と啓蒙活動など、防災アイテムとしてのモデル化に着手しています。
商品リニューアルとは「言葉のリニューアル」に他なりません。
言葉は商品サービスの世界観を創り、使う人の世界観を変えます。
たった一行、たったワンワードで売上が変わります。
言葉は、人の心を動かす「パワー」そのものです。
弊社のコンサルティングプログラムの中で「ココロをぐっとつかむコピーを創りたい」「売れるコピーづくり」に関する相談は後を絶たず、もっと深めれば、経営者ご自身に「センスやひらめきがないから自分では作れない・・・部下やコピーライターが出してきたコピーがよくわからない」「良いのか悪いのかジャッジできない」という実情があります。
たった一行、たったワンワードを変えるだけで売上倍増も夢ではない言葉の世界です。それを「言葉はセンスとひらめき」とし、諦め、数人の専任者やコピーライターに依存、任せきりの状態は勿体無いだけでなく、企業としてはリスキーな状態です。きっぱりと、売れるコピーライティングは「ひらめきとセンス」から生まれるのではなく、言葉の「研究開発」から生まれます。「コピーラティングは技術」なのです。
例えば「アサヒスーパードライ」。
発売から30年のロングセラー商品です。1987年の発売1年目にしてフル生産でも間に合わないほどの大ヒットを飛ばしました。商品発売時のコピーは、
飲むほどにDRY
辛口の生。
一方、ビール各社の歴史的キャッチコピーは、
「どういうわけか、キリンです」
「男は黙って、サッポロビール」
「うまいんだな、これがっ」(サントリー)
これらはブランド自体の持つイメージから訴求した言葉を選んでいます。一方、前出のアサヒスーパードライはブランドイメージ訴求ではありません。
「飲むほどに」
「DRY」
「辛口」
ビールの品質を訴求したコピーとなっています。1980年の中頃までのキリンビール1社独占状態のビール業界に風穴をあけ、万年2位を返上したアサヒビール。その勝因は、顧客心理の研究、商品の魅力を伝える言葉を開発できたからこそ、従来品に飽き飽きしていた顧客をグッとつかむことに成功したのです。品質を訴求し、顧客の期待感を高め、購買へのテンションを上げることができました。
企業には商品サービスの「商品研究開発部門」があるように、商品サービスにかかわる言葉にも「研究開発」の意識が求められています。言葉は商品サービスの生命線であり、売上利益を拡大する近道であり、言葉は企業の「命」そのもの。言葉の開発にこそ「社運」がかかっているのです。「商品研究」と「言葉の開発」は2つでワンセットです。
言葉は「カン」とか「ひらめき」「センス」から生まれるものとされ、「思いつき」どまりの言葉にあふれています。コピーライティングの責任を、社内外のコピーライター、広告代理店に負わせることは簡単ですが、自らが進んで「よくわらないコピー」を承認し黙認したことを受けとめ、対応策を示してゆきましょう。最高責任者である経営者自らの、言葉に対する心眼が変わらなければ、質の良くないコピーは量産されてゆきます。経営者ご自身の言葉に対する「眼力」を高めましょう。言葉の開発ができることが、商品サービスの寿命を伸ばし、売上を伸ばしてゆきます。
昨日とはちがう今日、顧客のマインドも変化しています。昨日までの言葉を捨てましょう。言葉をリニューアルすることで、世界が大きく変わります。御社の商品サービスが生きるか廃るかは「変化対応力」にかかっています。時代が大きく変化する今だからこそ商品リニューアル戦略を取り入れ、「言葉の技術力」を高める仕組みを確実に定着させましょう。
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