親子経営 父と子へのエール
とかく私も含め、父と子の関係というのは難しいものです。特に父親と息子というのはどうしようもない位、厄介なものと昔から相場が決まっています。皆さん方もご自分の父親との関係、そしてご自分の息子との関係が如何なものか考えてみてください。
またご自分の親戚や知り合いの父と子の関係が上手くいっているかどうか思い浮かべてみてください。おそらく思っていた以上に多くの親子が余り上手くいっていないことに驚かれるのではないでしょうか。
人類の長い歴史を見ても父と子の相克と確執による悲喜劇は古今東西を問わず事欠かないのが現実です。なかには父と子が互いに権力を争い互いの命を無きものにしようとすることなども多く現実として起こってきました。
人類にとって父と子の相克と確執は解決されることのない永遠のテーマです。親子が存在する限り、父と子の相克と確執は繰り返し繰り広げられることになります。長い人類の歴史のなかで先人から学べることはないのでしょうか。
そこで歴史上多くの偉人のなかから孔子先生にご登場願うことにしましょう。孔子は今から約2500年前頃に魯の国を中心として生きた人物です。74才の生涯において弟子3000人といわれています。
孔子の死後、弟子たちが編纂したのが『論語』になります。『論語』のなかで孔子と彼の息子鯉との逸話が載せられているのは3か所しかありません。しかもその一つは孔子よりも先に死んだ息子鯉の葬儀の話ですから、父と子がどのような関係であったかを知ることができるのは2か所のみになります。
その章句から伺い知ることができるのは、多くの弟子たちに交じって息子鯉が暮らしていたであろうことです。そして学ぶのも弟子たちと全く同じようにして学んでいたであろうということです。
孔子は我が息子鯉を特別扱いすることなく、他の弟子たちと全く同じように扱っていたことがその章句から伺われます。あえて言うならば、孔子は息子鯉をわざと遠ざけていたとも考えられます。
私が思うに、孔子は息子鯉との距離感をあえて保っていたのだと考えています。父と子というのは距離が近すぎると愛憎が露わになり過ぎることがあります。それを嫌った孔子が息子との適当な距離感を保つことが必要と考えていたのだと思います。
父と子の関係性において適当な距離感を持つことが重要であると孔子先生が教えてくれているわけですが、では息子の教育はどうすればいいのでしょう。この問題については孟子先生に聞いてみることにします。
孟子は今から約2300年前頃に活躍しました。孔子に遅れること約200年の人物です。孟子は四書『孟子』のなかで父と子の関係について話しています。孟子もまた、父と子のどうしようもなく厄介な関係を見抜いていました。
孟子が言います。父親が息子を直に教えようとしてはいけないと言い切ります。何故なら、父親の言うことが正しければ正しいほど息子は反発するからだと言います。父親は息子に良かれと思って正しいことを教えようと当然します。
折角、父親が世の道理を教えようとしているにもかかわらず息子が反発し、親子の関係性が悪くなることは馬鹿らしいからやめなさいと言っています。ではどうすればいいかというと、孟子は、自分の子は他人の子と取り換えて教えなさいと言っています。ようするに、自分の子は自分で教育するのでなく、第三者に教えて貰えと言っているのです。
どうでしょう、みなさん。孔子先生、孟子先生の言われることに一理あると思われませんか。息子との関係が上手くいっていないと言われる方は、是非、息子さんとの適当な距離感を保つことを考えてみてください。
そして息子が頼りないと思っているお父さんは、是非、ご自分で息子をどうにかしようとするのでなく、是非、第三者に息子さんの教育、指導を任せてみてください。父と子の関係性を改善する一つの方法としてお勧めします。
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