「チェーン経営 業務自社化の落とし穴とは」
先生、基本から、順序立ててやっていくと、こんなに、結果ってかわるものなのですね。
とあるチェーンの経営者の一言です。
――――社長の叫びが届いたからですよ。と伊藤は申し上げました
こちらのチェーンは、素晴らしい店づくりで定評の企業です。しかし、それを長年続けてきたことで、かなり無理をしておられました。
今後はもう少し、楽に、儲かるようにしていきたい。ということから、プロジェクトをスタートさせました。
当初は、参加メンバーも戦々恐々で、「今度は何が始まるのだろうか?」「また、早く帰れなくなるのでは?」といった、表情でしたが、次々に取組みの成果を出し、売上は横ばいながらも利益改善をしておられます。
店長曰く、「品切れ件数が、一年前の10分の1になり、昨日はもっとも少ない件数の記録を更新しました!」と満面の笑みで、報告してくださいました。
店長とゆっくりと店内を歩いていきますと、ケーキ材料売場の棚越しに「最近、ちゃんと商品があるよね」「ここしかないものが、今日あってよかった」と、お母さんと娘さんらしき、お客様の会話が聞こえてきます。
一年前は、といいますと、店長と一緒に歩くことすらできませんでした。というのは、行く先々で「これいつ入りますか?」「○○はどこにありますか?」とお客様から、聞かれるので、売場で立ち話をすることすらできなかったのです。
売場の品切れがここまで減ると、売場が引き締まり、まるで違う店舗のようになります。
ここに至るまでは、語りきれない程の、取り組みをされたそうです。最初は、品切れ点検結果の重要性を、店の全員に浸透させることに時間がかかったこと。
商品部のバイヤーは取引先に、品切れに対する改善要望をすることで、一触即発となるくらいのハードな交渉を続けたこと。その努力がこうした好結果に結びついたのです。
お取引先からは、「ウチの商品をそこまで一生懸命に売ってくれるのであれば、どこよりも優先的に入れさせていただきます」というふうに、その販売数量をあげていくことで、合意がとれ、逆に感謝をされたそうです。
これにより、粗利率は部門によっては5%以上も改善し、昨年あんなに、販促チラシで売りまくった時よりも、高い粗利がとれ、店舗全体ではなんと2%近くの利益改善となったのです。
戦略人時のひとつであります、この品切れ点検は、特に、粗利と相性がよく、この取り組みをキチンと進めることができるチェーンは、非常に立ち直りが速いといえます。
一方で、こうしたことに、無関心な企業は、作業指示書の、LSP移行の自社化にこだわり、その間に新規競合の出店をうけ、価格競争に巻き込まれるようになっていきます。
確かに、自社でLSPをつくれば新たな資金は必要ないかもしれませんが、それ以上に、時間のロスの方が大きくなります。
何か新しい取り組みをするときは、何かを止めなくてはなりません。そしてそこで浮いたコストを新たな取り組みのために、再投資していかなくてはなりません。
成長戦略の代表格である、新規商品、新規出店、改装、そういったことには、全て投資予算を設定して取り組みます。
ところが、人時生産性となると、カタチとして見えにくいことから、金をかけずに、現場の工夫でやれば、利益改善ができるものだと、枝葉末節なことをする経営者がいます。
冷静に考えてみればわかることですが、新店、改装よりも、業務改革で人時生産性をあげるほうが、圧倒的に収益額が高いことは明らかです。
タダで仕入れてきた商品を売ることができないように、日々の店舗オペレーション収益を上げていくためには、組織も予算もなしに、新らたな利益を得ることはできません。
仮に、自社で作ったLSPで一店舗が動いたからといって、それを2店舗3店舗と広げるためには、ふたたび地区部長や店長にそれを指導する、本部の組織が必要となります。
しかし、本部に業務改革組織を作るとなると、尻込みをされる経営者は「まだ、うちでは」とか「本部を増やすのはちょっと」とか「まず、一店舗動かせるようになってから」と言い、たとえ、お金や人があったとしても「絶対に改革はやらない」と断言できます。
現場であったり、お取引先は、そういったことにすぐ気づきます。先の品切れ問題などは、まさにその一例で、社長の業務改善の取り組みの声が、社内だけでなく、取引先にまで届くことによって、大幅利益改善という成果を手に入れることが出来たと言えます。
なんでもそうですが、上司の取り組み意識は、従業員の言葉の端からすぐにわかります。言い換えますと、社長が本気でやろうとしているのか、単なる勉強をやったふりをしているのかどうか、従業員もそのお取引先も、お客さまも、全てわかっている。ということです。
先のチェーンは社長の叫びが原動力となり、お取引先の協力が得られ、作業量は減り、利益は上がり、お客様の満足度を上げる3つの宝を手にすることとなったのです。
さあ、貴社では、まだ、何もせずに相手に合わせますか?それとも、やるべきコトを叫び、相手を動かし目標を達成させますか?
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