税務調査を乗り切るために、会社が日頃注力すべきこと
「メルカリが消費税1億円申告漏れ」
最近ニュースで、こんな記事を目にしました。
税金の申告漏れと言葉に接すると、一般的にはなんだかすごく悪いことをしたように感じます。もちろん、中には意図的な所得隠しや租税回避をしている会社もあります。けれども、税務調査を受けたことのある経営者であれば、よくご存知の通り、当方が税理士にも確認した上で、問題ないと判断した税務処理であっても、税務当局との見解の相違によって、申告漏れだと指摘される場合があります。
このため、経営者の方にとって銀行交渉と同じく、もしくは、それ以上に気が重いのは、「税務調査」ではないでしょうか。
銀行交渉はお金を借りずに資金繰りが回っていれば、いやな思いをせずに済みます。一方、税務調査の場合、「できれば避けたいなあ」とこちらが思っていても、先方が「調査にお伺いしたいのですが…」と言う以上、対応せざるをえません。
ある税理士の先生曰く、「税務調査は合法的な白昼強盗だ!」まさに、突然やってきて、法律に基づいて会社から税金という名のお金をとっていく訳ですから、気が抜けません。
先日もある会社で設立10年目にして初めて税務調査が入りました。
その会社では、3年ほど前から新たな収益の柱としてゴルフ事業を始めるべく、定款を変更し、準備を進めていました。そして、税務調査が入ることが決まった瞬間、社長が一番気になったのは、ゴルフ関連の経費の計上です。
つまり、その会社では新事業のために、ゴルフクラブを購入する、レッスンプロに教えてもらう、コースに出てラウンドするといった支出を会社の経費として計上していました。
中小企業の場合、社長の使う経費が会社のための経費なのか、個人の費用を会社に回しているのかは微妙なところ。特に、日本ではまだまだ「ゴルフ=社長のお遊び」という認識を持っている人が多いのが現状です。
しかも、悪いことに、税務調査が入った時点でその会社のゴルフ関連の売上はゼロ。いろいろと準備を進めてまさにこれから売上を上げようとしていた時期だったのです。このため、ゴルフ関連の支出が経費として否認される恐れがありました。
この場合、経費の否認によって利益が増えるため、法人として追徴される支出した分は社長への賞与として認定されるため、個人として追徴されるという、いわば「往復ビンタ」をくらう恐れがあったのです。
そして、2日間にわたって税務調査が実施。その結果は、ゴルフ関係での追徴金は0円で済みました。
税務調査が終わった後、社長の話を基に分析してみると、無事に終った要因として以下の三つがありました。
- ゴルフ事業に関する調査を行い、計画をきちんと立てていたこと
- 税務調査の冒頭に行う概況説明で、ゴルフ事業に対する社長の熱い思いや取組み姿勢を詳細に説明したこと
- 経費関係のみならず、売上等も含めて契約書や帳簿類を整備していたこと
つまり、
- ゴルフ事業は遊びではなく、真剣かつ本気で取組んでいたという事実
- 会社の状況を調査官にも理解してもらうというプレゼン力
- 単に口先だけでなく、事務処理も含めた実務面での実力
が税務署の人にも通じたのだと私は理解しています。
先の会社の場合、結果的には多額の追徴金を払うことなく、税務調査を乗り切ることができました。しかし、「見解の相違」ということで税金を追加で払わざるをえないケースも多々あります。
したがって、税務調査は気分的にいやなだけでなく、資金繰りの観点からも注意が必要です。特に前期まではそこそこ利益が出ていたが、今期に入って業績が落ち込んでいる時は要注意。過去の好決算をもとに、業績が厳しい中、追加で税金を支払う事態になると、金額によっては資金繰りにも大きく影響してきます。
税金を巡る解釈については専門知識が必要ですが、前述のような、仕事への取り組み姿勢、プレゼン力、実務能力であれば、常に意識していれば、日々向上させることができます。
時期的には例年来月ぐらいから税務調査も本格化すると言われています。想定外の出費を出さぬよう日頃からの備えをきちんと行いましょう。
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