業績の良い会社の社長は非常時に非情な鬼と化す!

ドラマ「Missデビル 人事の悪魔 椿 眞子」の録画が溜まっていたので時間が空いた時に見ています。セクハラ、働き方改革、人員削減など人事における様々なテーマが出てくるので、なかなか興味深いドラマです。
1話は新入社員50人を10人に減らすというストーリー。一言でいうと強烈な人員削減です。
新入社員に研修と称して穴を掘らせて自分達で掘った穴をまた埋めさせるというシーンがありましたが、あれは確か拷問でやる手口だったと思います。そして新入社員が同期の欠点を紙に書いてお互いに渡しあうというかなり精神的にもキツイことをやっていました。これらはドラマだから成立するのであって実際にはできないことです。
せっかく採用した新入社員50人を自主的に辞めさせるような手段を使って10人に減らすという行為は客観的に見れば悪と見えます。
人員削減を実行した人事コンサルタントに対し、人事部長は冷酷とも言えるやり口と過激な手法による人員削減に反対します。
この人事部長の言うことはもっともなことであるし、正しいことです。しかし実は会社の業績が悪く、雇える適正人員が実は10人だったとしたらどうでしょうか?
経営的な視点に立ったらこの人員削減は正しいということになります。
このように組織人事に関することは側から見れば悪だけれど本質的に正しいということは多々あります。私も実際にこのようなことは経験してきました。私は今まで多くの社長から相談されましたが、その時にこのようなことを言われます。
「重要なのは分かっているけれど、人の問題ほど面倒くさいものはないですよ。労力かかるわりに売上に直結するわけでもないし、今それほど大きな問題にもなっていないから後回しにしてしまいますね。」
社長のやるべきことは事業を創造し発展させることですので、このように考えるのは
当然だと思います。
社長が最もやりたくないことは、社員に辞めてもらうということです。自分が採用した社員に解雇を言い渡すのに気が引けると仰る人情派の社長は多いです。
実は会社の方針に従わず、周りにも悪影響を及ぼす社員がいて困っていて、どうすればいいか分からずにそのままにしているということは実はけっこうあります。一般的に解雇というのは悪というイメージがあります。
「あいつは家族もあるし、この会社を辞めたら次の仕事は見つかるだろうか?解雇して訴えられたらどうしよう・・・」
ということが社長の脳裏を横切ります。しかし社長は、社員個人の人生を考えるだけでなく、会社の存続という全体最適の視点で物事を考えなければならず、会社のために非情な決断を迫られる場面もあります。
組織人事に関することは、清濁併せ呑むというスタンスが重要であり、何が大事なのかということを本質的に考えなければなりません。
本やセミナーで学んで一般論を知っていてもそれがそのまま自社に当てはまるということは滅多にないですし、解決策を知っていてもその通りにいかないという点が組織人事における課題解決の難しさです。
それは組織人事の領域は白黒つけられないグレーゾーンが多く、その時々の状況によって対応を変えていかなければならないからです。
会社の風土、業界、業務内容、社員のパーソナリティー(性格や能力)はそれぞれ異なるのですから、問題の解決策は1つであったとしても、解決に至るまでのプロセスは異なります。
大企業には人事部があり、組織人事の専門知識に精通した人材がいますので、彼らが対応しますが、中小企業の場合はこのような人材がいることはほとんどないので社長が対応することとなります。
多くの社長は売上を伸ばすことには労力を惜しみませんが、内部体制の強化などの組織人事に関することは課題が見えていたとしても着手するのに腰が重くなります。これには3つの要因があるからです。
- 内部体制の強化をしてもすぐに売上が伸びるわけではない。
- 単純に人の問題は面倒くさい
- 緊急性を要するものではない。
社長のお気持ちはよく分かりますが、先ほど挙げた解雇の例で説明すると、問題を先延ばしにすればするほど問題は悪化していきます。
経営が上手くいっている会社の社長ほどネガティブなことに対する対応は早く、問題が大きくならないうちに解決します。
社員に対して厳しいだけだと疲弊しますし、甘すぎると緩んでしまいます。業績の良い会社の社長は、普段は温和で明るい未来の話をしているけれど、会社を守るためには非情な鬼と化し、冷酷な決断をして実行します。
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