賃金の足りない社員の増やし方
賃金制度を構築または見直しをすると、経営者自らが特定の社員の賃金が低いことに気が付きます。
さらにその具体的な金額が説明できるようになります。
こういった場合、おおむね経営者はその足りないと思った金額を加算してあげようと考えます。それが経営者の決断でしょう。
しかし経営者と社員の立場では、このことに対してまったく違った感覚を持ちます。
経営者は次のように考えます。
「足りない金額が明確になったのだから、足してあげよう。これでその社員も喜んでもっと仕事を頑張ってくれるだろう」
ところが社員は別の事を考えます。
「足りないということは、今急に足りなくなったわけではない。おそらく3年前くらいから足りないという状況が続いている。かすかに自分もそう思っていた」
つまり、経営者が「毎月1万円足りなかった」と発言すると、その発言を聞いた社員が「では私は1万円×12か月で、1年間12万円。3年前からだと36万円不足していたことになりますか?」
まさかの質問が社員から返されます。
足りないから足してあげようと思った社長は冷や水をかけられたような思いになります。これが経営者と社員の考え方の違いです。
「増やしてあげれば頑張るだろう」と考える単純な変更をしてはならないのです。
賃金制度を新しい賃金体系へ移行する経営者に、この際の対応については気を付けるように常々話をしています。
正しい伝え方は、次の通りです。
「今、新しい人事制度を導入するにあたって、成長支援制度を作りました。その中心のツールである成長シートが完成しましたが、その成長シートであなたの点数を確認した結果、60点という点数になりました。
もし、これから仮運用する1年間であなたの成長点数が60点と最終的に決まれば、そのときにあなたの成長給の見直しを行うことになります。その際は今の成長給に1万円加算することになります。ぜひ、この仮運用期間中にこの成長点数が継続して取れるように頑張ってください」
こう説明された社員は
「よし、頑張ろう。これからもこの点数が維持できるように努力しよう」
となります。
昇給される将来に向かって、自分は努力をすることを考えることになるのです。
賃金の見直しは、社員の知らない過去の結果で金額を加算するのではなく、どういう要件が整ったらどう賃金が増えるかということを説明すること。
これ以外に社員に納得してもらう、喜んでもらう臨時昇給の仕方はないと考えてください。
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