なぜ、儲かる社長は、試算表より来月入金予定額を大事にするのか。
「ウン、助かるよ、ウチの経理は、ちゃんと残を教えてくれる!来月の予定も分かるし、2ヶ月後の予定だってほぼ立つ。試算表?確かに試算表がないと原価率がぶれてないかとか、昨年対比とか、労務費の事とか分からないよね。でも、目先安心をくれるのはウチの経理のこのメモ。なにせ毎日だからね。本当に助かるよ。」
社長さん、もしあなたが、「重要な数字を3つ上げてください」と言われたら、どんな数字が重要だとおもいますか?
儲かっている社長さんの多くが、
1.現金(預金残)の数字
2.来月末の入金予定金額の数字(売上・売掛入金額)
3.来々月末の入金予定金額の数字(売上・売掛入金額)
と、お答えになります。
試算表には、大事な数字が たくさん詰まっていますが、儲かる社長さんは、なにより現金を一番重要だと考えています。
それには理由があります。
経営は、お金が無くなったら終わりのゲームのようなモノ。
支払は約束どおり、でも売上の約束はありません。
社長の心配は何より今の手元資金、今の売上、来月の入金予定、来々月の入金予定です。
この重要な数字を毎日手に入れられる、簡単な方法があります。
① 売掛金入金口座を1つにまとめます。
② 月初の基準金額を設定します。
③ 翌月月初基準額以上の金額を支払い口座・季節資金口座へ振替します。
④ 入金予定日の5日前、営業経理担当者から得意先へご入金のお願い電話連絡
⑤ 営業経理担当者は、預金残・入金予定を毎日メモし社長へ渡します。
たった、これだけ。
これを着実に実行して、手元資金が○○億円になっている会社があります。
社長が、いつも嬉しそうに眺めるのは、数字が書かれたメモです。
営業経理担当社員から、小さなメモをもらうと、早々に工場の見学に出かけます。
笑顔で見送った社員は、「うちの社長天才ですよね~。残高メモを見てニコニコだ。」
この仕組みを取り入れたのは、会社が資金を回収し損ねると、営業にも経理にも社長にも大損害が発生すると実感した事件があったからです。
当社と、年に4回、3ヶ月ごとの取引を長年継続していた企業が、ある日突然、気がつくと廃業していたのです。
経営者夫婦は、高齢。
子供はいるようでしたが、別な仕事についていると、うわさで聞いていました。
訪問すると、従業員も数人いて、事業所はいつも同じ状態に見えていました。
入金が無かった仕事も、営業担当者が電話でいつもどおりに受けました。
電話口での事業主婦人は、「いつもどおりにお願いします。」
業務を終えたと売上伝票が回り、経理は請求書を発行しました。
3ヶ月後、決算の作業が進んでいます。
経理担当は、サイトどおりの回収になっていない、入金が遅れている会社を一覧にして、営業部長に渡しました。
未入金のリストを見て、これは大変早速回収に動きます。
そこで初めて、「この事業所もう無くなっていたよ。そのまんま、誰もいないの。」
お客様に伺った営業マンが、驚く情報だ!と話し出しました。
事業主が、病気で倒れ病院へ。
しばらく老婦人が一人で営業していたものの、事業主の病死で突然廃業。
数人いたと思っていた従業員はみな外人、その日の日当をもらえば、すぐ離職です。
毎月出していた請求書は、確かにポストに数月分そのまま入っていました。
営業部長は、郵便局に転送先を尋ねましたが、行方不明、届け出はありません。
貸し倒れは、値引きとは違います。
値引きなら、想定した利益が出せなかった、と社長に頭を下げて済ますこともできます。
ところが、貸し倒れとなると、会社はタダ働きして、社長は売り上げのない従業員に給与を払って、「5年後の損失」になるまで税金まで払うのです。
「この貸倒金は、課税対象額に含まれますから、残念ながら、今期は、その分の消費税も法人税も払う事になります。」
税理士事務所職員の冷静な言葉に、営業部長は、矛先を経理に向けました。
「なんで、こんなに時間が経ってから報告するんだ!もっと早く報告しろ!」
「経理がもっと早く、『この会社まだ入金がありません』と、教えないからだ!」
「お言葉ですが、営業して回収するまでが、営業の仕事ではないですか?毎月の請求書の発行時に、担当者には、請求書を渡していつも見てもらってるじゃありませんか?」
社長がその議論に割って入りました。
「売掛金の回収は、社長の大事な仕事だ。みんなの働きに報いる給与を払うお金だ。だから、入金の報告はオレに上げてくれ。」
さて、どうすればうまい仕組みになるか?
社長が小声で言いました。
「ノグチ先生 オレにうまいやり方 そっと教えてよ。」
それが、入金口座をまとめ基準額を設定するやり方です。
この方法は、売掛金の回収を早く確実に実行できます。
経理担当者がお客様に声をかけるからです。
「先月は○○日にご入金いただきましてありがとうございました。今月確か御社の支払い日は、銀行の休日と重なりますね。ええ、今から設定していただくと、前日には…。」
一声かけるだけで、気遣ってもらった・気にかけてくれた、想いが伝わるものです。
まして、相手はいつも会社では注目されない経理もしくは支払い担当の奥さんです。
何度も声をかけて、親しくなると、送料も引かずにお金が振り込まれます。
お役所だって前金で支払うようになるものです。
さらに、前月の入金リストが、翌月の入金見込み表になり、翌々月の入金見込み表になります。
前年同月の入金リストが、当月の入金リストのひな型になったりもします。
それは、お金の支払い・動きは必ずルールがあるからです。
そのルールが、たとえ若い経理担当者でも、翌月の入金を把握できるようになります。
ルールが破られ、入金が遅れれば、どうしてだろうか、弊社への不満があるのか考え調べる材料を提供します。
支払いが滞るのでは?という問題会社を掴むのです。
毎日入金先に経理担当者が電話をかけるのは、入金の報告先が社長だからです。
そのうえ、社長が喜んでいる、社長がありがとうと声をかける。
褒められて木に登るのは、人皆同じです。
メモは社長に直接・毎日手渡しされます。
経理担当の指摘する問題会社は、一度社長のフィルターを通ります。
まるで、社長は全社員の動きを一人一人「確認できている」のと同じです。
担当者の話を聞いてみる、問題会社について同業者から意見を聞く、直接伺う。
問題点を把握して、問題の解決を幹部に担当してもらえば、解決策はついてきます。
資金繰りは多くの社長にとって、一人で背負う重圧になっています。
改善には、幹部社員に資金の滞留しているところを教えて、社員の問題として改善する手立てを考えさせなければ、実際には改善できないのです。
キャッシュ残高、翌月入金予定額を手にした社長がニコニコできるのは、資金繰りの重圧よりも社員が社長と一緒に売上入金を達成すると信じられるから、そして社員と一緒に自分の夢が達成できると確信できているからです。
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