致命的な投資ミスが資金ショートを招く理由
当社は、同族会社と社長の財産管理(お金が残る仕組みづくり)実務の専門機関なので、実に様々な会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。その中でも多いのが投資に関する経営判断の考え方や、銀行との上手な付き合い方です。
たいていの場合、「新たな投資をしよう!」と考えるのは、「事業が思いのほか上手くいった時」だったり、その会社の好調を聞きつけた銀行が、「当行に融資をさせてくださいと日参してきた時」だったりするものなのです。
業績も好調で、しかも、銀行も「いくらでもお金を貸します!」という話になってくれば、当然、社長の気も緩みますし、ましてや「悲願の自社ビル建設」だったりした場合には、社長だけでなく、社員もウキウキワクワクするものです。
しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいるのです。特に、自社ビル建設そのものは、「収益に直接貢献しない」ため、本当に注意しないと資金ショートの元凶になりかねません。
例えば、業務に関連する設備投資をしたり、社内インフラを整えたり、人材教育をしたり、ノウハウや知見を得たりすることなどへの投資は、時間の経過とともに、なにかしらの収益という形で還元されてきます。したがって、その「将来得られるであろう収益」から、借入金を返済していくことができます。
しかし、自社ビル建設を借金で賄った場合、自社ビル建設そのものは将来の収益に貢献しないので、既存の売上・利益の中から借金を返済することになります。それも、返済期間に応じて、つまり、将来10年間とか20年間とか、返済期間中ずっと…です。
このようなお話をすると、「自社ビルを建てて何が悪い!」と勘違いされる方もいらっしゃるので、念のため申し上げておきますと、ここで、自社ビル建設自体がダメと申し上げたいわけではありません。
ここでお伝えしたいことは、「自分の会社の未来を数字で語れない段階で、やみくもに投資をしてしまうと、後々、社長自身が苦しくなってしまいますよ…」という話です。ここでいう間違った経営判断とは、自社ビル建設だけにとどまりません。
あらゆる事業投資があてはまります。会社の事業規模にもよりますが、数千万円から億単位での事業投資をする場合には、絶対的に財務の視点から見た「投資戦略」と「融資戦略」を踏まえた「数値計画」が不可欠なのです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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