淘汰の運命に楯をつく。
「コザキ先生、わたしはね、決断しました。肚を決めました。しかし断腸の思いであります」。
昨日、半年間の弊社の商品リニューアルコンサルティングのプログラムを終えた社長の言葉です。一区切りついたので小さな乾杯をしました。新しい縁をたぐり寄せ新規に販路をひらいたお店でのひと時、6ヶ月間のさまざまな出来事が思い出されました。
断腸の思い。
広辞苑によれば「腸がちぎれるほどの悲しい思い」と説明されています。社長が何を悲しく感じこう表現されているのかは、詳細はここに書くことはできませんが、形容すれば「会社の根本的な膿に気づき、手を入れ、膿とともに血が吹き出しはじめている」という状況。そして、血を流しているのは、他でもない社長ご自身です。
社長とのご縁は昨秋からで、わたくしのセミナーにご参加くださいました。大きなカバンをお持ちでした。セミナー終了後、そのカバンをあけて「この商品をリニューアルしてほしい」と現物をドンとお出しになりました。ご要望は具体的で「パッケージを変えて営業ツールを一新したい。従来商品に今ブームの〇〇にひっかけて一発当てたい」という種のご相談です。結果的には、戦略を策定、実施して、社長の願いはすべて実現しました。幸運を手ぐり寄せ、新しい販路に乗せることもできました。事実としては「売上増」です。
半年のくくりで考えれば、ハッピーエンド。めでたしめでたし、ということでしょうか。しかし現実はもっともっと泥臭い状況で、冒頭の社長の言葉がすべてを表しています。このまま仕組みを回して行くステージですが、腸がちぎれるほどの悲しみを超える覚悟、血を流しながら進んでいる印象です。
肚を決めた。
社長の気持ちを動かしたのは「お客様」でした。コンサルティングプログラムの最後に打ち出したイベントへの出展。商品を使う最終消費者と交流できる年に一度のお祭りです。社長曰く「恥ずかしい話3回目の出展で、、、お客様からこんなに言葉をかけられるとは思わなかった・・・自分はいったい今まで何を見ていたのか」と。
イベントでのお客様の言葉はシンプルで「この商品はどこに行けば買えるのか」であったり「この商品が好きで楽しんでいますよ」であったり「社長に会いに来ました」であったり・・・、商売をしていればふつうに出会う言葉です。出展ブースがお客様でいっぱいになると、社員の一人が「今年は客層が変わったなー」と呟きました。
お客様が変わったのではありません。変わったのは「社長」です。
数百年の歴史を持つ由緒正しき老舗企業で社長就任から半世紀以上が経っています。半年前、口角泡を飛ばしながら「業界の衰退と旧い業界体質」の問題と「自社の不運」をくり返し語られていました。不満が澱のようにたまっておられ、そこからスタート。コンサルティングの終盤で、社長は会社の本質に気づいたのです。この次へ進むために大きな決断をしたと仰るのです。
真っ直ぐにわたくしを見つめ「お客様がたった一人になったとしても・・・期待してくださる限りその期待に応えてゆく。お客様のためにね、命の限りやろう!」と。
そして、わたくしのグラスにお酒を並々と注ぎ、
「コザキ先生、次のステージに進みましょう!」そう決起されました。
半年のプログラムを修了した今、愚痴も泣き言も「〇〇ブームにひっかけて一発当てる」というような軽い言葉もありません。社長の悪あがき。そうかもしれません。背中にはたくさんの傷、吹き出るこころの血、、、。半年前には静まりかえっていた社内がドタバタし、理想を描いた環境整備とは程遠いものです。正解も無く、腸がちぎれんばかりの悲しみに直面する重い時間、、、世の中に溢れるスマートな成功事例とは真逆、と思われるかもしれません。どうでしょうか。
今、わたくしたちのビジネス環境は社会構造の激変により、さまざまな常識が崩壊しています。1年前だったら「そんなバカな」と笑っていたことが次々と実用化。ロボットと人工知能による「第4次産業革命」の到来と叫ばれ、無人経済に舵を切っています。18世紀の蒸気機関、20世紀初頭の電気エネルギー、20世紀後半のコンピュータ、そしてAIとロボットの台頭。歴史が証明しているように「企業淘汰」が必至で、日本のマーケットは急激な人口減でいっそう深刻です。
今、はじまっているのは、第4次産業革命を生き抜くための戦いです。それは、競合他社やロボットやAIとの戦いではありません。社長ご自身との戦いなのです。たった一人のお客様がいる限り、お客様の想いに応えてゆく、そこを極めてゆく。運命に楯突き、乗り越えていく強さ。そして決意。
運命に楯突く「覚悟」を持ち、本気で取り組むその先に「事業発展」があります。“楽しい”とか“ワクワク”といったキラキラ言葉で済むのであれば、それはもはや「事業」とは別物です。血を流したり断腸の思いなど経験せず、孤独になったり、リスクを冒したりせず心地よく生きてゆけるならそれはそれでアリではないでしょうか。あがいたりしなくても時代が「答え」を出してくれるはずです。
ドロドロの汚濁を避け運命に流されてゆくのか、
それとも楯突いて悪あがきしてでも使命の道を進むのか。
即答できるのであれば、あとは進むのみ。社長の本気をカタチにしてゆきましょう。商品リニューアルを通し、ご自身の手で「運命」を再定義し、独創してゆきましょう。胸躍り心奮える真の運命、“使命を運ぶ”道を、一緒につくってゆきましょう!
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