社長のプレゼンテーション、それは営業以上の効果―「自己アピール」よりも「自己プレゼン」を―
前回のコラムでは、「社長の装い」の効果について書きました。「見た目」の影響力は、場合によっては「言葉」に匹敵するくらいインパクトがあると思ったからです。
今回は社長の発する「伝導力」について、さらに考察し深化させてみたいと思います。「伝導力」という言葉はあまり一般的には使われません。
ただ、私が言いたいのは、社長の「情報発信」の及ぼす力を、単なる「影響力」という範囲に留まらせたくない、ということなのです。
社長の「情報発信」は、それに触れた相手に、ちょっとした影響を与える・・といったレベルではなく、結果としてもっと強いインパクトを与えなければ意味がないからです。少し時間がかかったとしても深く「伝導」していくことが求められているのです。
こう考えてくると、一般的にもよく使われている「アピール」という言葉に思いが至ります。中でも「自己アピール」という言い方は、比較的頻繁に使われています。
「自己アピール」について、意味を調べると、
―(自分のことを)相手に訴えること、相手の心に強く食い入ること―
と、あります。
なるほど、この意味からすれば「自己アピール」は、私の言っている「情報発信」とイコールのようでもあります。しかし、私にはこれでは何か足りないような気がするのです。それは、そのアピールされた相手がどう感じるか、ということになります。言葉の意味にあるように「訴えかけたり」「心に食いいったり」はしますが、これでは「一方通行」です。相手の気持ちまでは思い遣っていません。この「一方通行」というところに何か物足りなさを感じるのです。
これに対して、もう一つ「プレゼンテーション」という言葉があります。近年、特によく使われるようになった言葉ではないでしょうか。
これも意味を調べてみると
―情報を提示し、(相手の)理解・納得を得る行為―
と、あります。
情報を提示するという意味においては、これまで述べてきた「情報発信」と変わらないのですが、「理解・納得を得る」というところが大きく異なっています。
つまり、「プレゼンテーション」というのは、相手の「理解や納得」を得ることができて初めて達成した、と言えるのです。
「プレゼンテーション」は、企業の営業活動において、極めて重要な方法論の一つとなってきていますが、日本ではまだまだその本質的な意味が理解されていないように見えます。
「プレゼンテーション」は、先述のように「理解・納得を得る」ことがその達成の大きな条件になります。しかし、これだけではまだ少し解釈が浅いような気がするのです。
というのは、営業の場では、「理解や納得」を得られたけれども、残念ながら最終契約までは至らなかった、というケースも、実務では多く見られるからです。
そこで私は、「理解や納得」に加えて「共有、共感」という言葉を考えてみたいと思います。
つまり、「プレゼンテーション」というのは、充分な情報(資料・データ等)をもって、相手の「理解や納得」を得る努力をするのですが、契約という具体的かつ踏み込んだ関係にまで持ち込むには、もう一段上のレベル、「共有・共感」まで行かないと難しいのではないかと思うのです。
「プレゼンテーション」は、これまで一般的に行なわれてきた営業、売り込み、説明、説得・・・といったビジネス上の方法論とは一線を画す、新しいコミュニケーションのあり方と考えてもいいかも知れません。
社長の「情報発信」は、営業、売り込みといった直接的なアクションではなく、かといって「自己アピール」という個人的な訴えの場でもなく、それに接した人から「共有・共感」といったプラスの感情を引き出さなければなりません。
これを私は「自己プレゼンテーション」と呼びたいと思います。
社長の「情報発信」というのはすべからく「自己プレゼンテーション」の場であるべきと思うのです。
そこでは、前提としての「情報提供」ということはもちろんありますが、常に何かしら「プレゼンテーション」の要素が仕込まれており、多くの人の「共有・共感」を得るべきではないでしょうか。
「情報発信」を続けることによって、その「共感者」の分母を厚くすることができたならば、その後の「営業や売り込み」といった具体的なビジネス上のアクションは、かなりやりやすくなると思います。
「情報発信」時における「自己プレゼンテーション」・・・社長はこれを常に意識して取り組んでみては、とご提案申し上げる次第です。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。