知られざるチェーン経営PB戦略の落とし穴
「先生。品揃えを見なおしているのですが、新規出店コストもかさみ、収益結果が厳しいのです。」
先日、ご相談にお見えになった あるチェーンの社長からのご相談です。
お聞きすると、所属している団体のPBの割合を増やし売上をあげていきたい、しかし、既存店での販管費が上がる一方で、そこに新店コストがかさみ、苦戦されてるとのこと。
―――価格訴求型のPBを増やすと、コストアップになりますが、それは見込んでおられますか?
「え?粗利率を稼げば行けると思ってたんですが・・・・」と少し驚かれた様子。
理由は簡単で、商品陳列1個にかかる時間は、単価が高くても低くてもあまりかわりません。
しかし、単価が低ければ、数量を売らなくては儲からないため、2個売らなくてはとれないようであれば、2倍の人時を投入しなくてはならず、販管費が増えていくからです。
その分の人を採用するか、どこかで利益を生まない非効率業務を止めさせて、そこに引き当てていかないと、思うように結果がでてこないのは無理もないのです。
前職時代も、同じことが起き危険水域までいったことを思い出します。店舗業務効率の見直しをしないまま、品揃え変更で無理にPBを増やしたことで、販売点数は上昇したにもかかわらず、売上は横ばい。
結果として販売管理費が上がって減益。という構図となったことから、安売りPBを一旦中止としました。
売上を上げていくためには、確かに商品の先差し替えは必須です。しかし、そのためにはお金と時間がかかってくるということです。
どういうことかと申しますと、商品差し替えには、新商品の発注、旧商品の値下げ、プライスカード差し替え、陳列といった、通常の品出しとは異なる一連の作業が発生してきます。
単品の差し替えであれば、これで済みますが、棚をまたいだ商品移動や、棚を付け替えての商品さきかえとなればおおごとになります。
このための人時計画が、作業指示書組み込まれているかどうか?ということになります。
もし、全体の2割の商品を入れ替えするとなれば、現状の品出し時間にその人時を上乗せしなければ、商品は入れ替えは完了しないことになるからです。
既存店の通常の品出しコストを増やした上に、一過性の人時を乗せておく必要があるということです。
冷静に考えてみればわかることですが、PBというのは、製造元やメーカーは宣伝コストを支払わなくて済むので、低価格で販売することが出来ます。
しかしながら、絶対に忘れてはならないのは、小売側にとっては人件費をかけて販売するという、店舗コストのかかる構造であるということです。
そういう意味では、地方や地元の名産品であったりといった、付加価値の高い商品を開拓して導入するほうが、単価が張るために利益もしっかりとれる。バイヤーが苦労して交渉し、そこしか取り扱いがない。といったものを品揃えの幅としているのであれば、確実に売上利益に寄与します。PB専門会社がつくる商品はどこでも手に入ることが出来るわけで、それでは、差別化にすらならないことになります。
断っておきますがPBがダメだと言っているわけではありません。
商品の品揃え改善には、多大なコストがかかるということを考慮せずに、単にPBの構成比を上げようとすれば、やればやるほど、高コスト構造にはまっていくことになります。
大手チェーンが高コスト体質でも維持できるのは、家賃収入であったり、PB商品の収益であったりと、本業以外の収入源があるからです。
対抗軸にある中堅チェーン企業が小売本業で儲けるためには、本業以外の支出源を増やさないように注意することとなります。
しかしながら、売上アップの品ぞろえ改善は重要であり、こういったオペレーションコストは日頃の既存店で、生み出す仕組みを創っておかなくては、外部の資金調達に依存しなければならなくなるなってしまいます。
そこで重要なのが、「作業指示書」であり、これを活用できるレベルに組み立てていく戦略が必要となってくるのです。
いくら新店舗をつくっても、こうした人時売上戦略を持たぬ限り、チェーンのお家芸である人海戦術で、忙しいばかりで利益の残らないラットレースをつづけることとなります。
PBの品ぞろえの拡大、新店の出店。これを謳うのであれば、まず、既存店でそれを毎年、更新できるしくみをつくることが、先に必要となるからです。
先のチェーンは、ご武運を祈念する限りですが、あなたのチェーンでは、こういった手順を間違えてやっておられませんでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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