接客マニュアルは必要か?
接客を伴う店舗ビジネスでは、その“接客技術”の指導が重要なのは言うまでもありません。さらに重要なことは、社内における接客技術をマニュアル化して、指導が属人化しないようにしなければならないことです。
マニュアル化というとすぐにアレルギー反応を起こす人が一定数いますが、ここで勘違いしないでいただきたいのは、基本的な行動をマニュアル化(明文化、図式化)するということです。基本的な行動とは、再現性が高く、誰もが一定の成果を得ることができる動きのことです。スキル(訓練や経験で身に付けることができる技能)とセンス(訓練や経験では身に付けるのが困難なその人が持つ特有の感覚)を分けて考える必要があります。
という説明をしても、「マニュアル化すると型にはまった接客になりがちで、店舗としての面白みがなくなる!」「そもそもうちはお客様に合わせた接客をすることで他店と差別化し、お客様にも喜んでいただけているんだ!」という声が聞こえてきそうです。
しかし、人によってやり方が違うということは、強みにもなれば、弱みにもつながります。
いわゆる“できるスタッフ”がいれば100%その人のやり方でもいいのですが、そうでないスタッフの場合、任せてもお客様が満足することはほとんどないでしょう。そのままではリピート率も下がっていく一方となります。“できるスタッフ”の方も、その人が退職してしまえばその後の店舗運営はガタガタになります。もちろん売上も…
ですから、どんな店舗でもマニュアル化は必須です。マニュアルはすべてのスタッフができるようになることが前提であり、その内容は「スキル」がメインとなります。「センス」はマニュアルにしようがないし、してもしょうがないのです。「センス」はあくまで“個人の強み”なのです。このことを理解したうえで、店舗としての最低限のレベルとなるマニュアルをつくりあげていきましょう。
それに加えて、当然ですがマニュアルは理念に即したものでなければなりません。理念とは言い換えれば存在意義であり、ほとんどの会社には経営理念があるはずです。その理念をベースにマニュアルがつくりあげられる必要があります。
マニュアルがあれば人によって教えることの差がほとんどなくなります。それだけで店舗の接客レベルの底上げができます。逆にマニュアルもなく各個人の自由に任せたやり方は単なる放任であり、典型的な属人化を招きます。そうなると会社の成長にとってプラスにはなりません。
理念に基づいた基本的な行動の集大成であり、必要な「スキル」をまとめたマニュアルがあるからこそ、その先のスタッフそれぞれの「センス」が生きてきます。そしてスタッフが持つ「センス」を十二分に発揮できるような環境をつくることが、競合他社に対する真の差別化となりえるのです。
これはつまりマニュアルだけではお客様に支持されないということでもあります。マニュアルにスタッフそれぞれのセンスを組み合わせたものが店舗の真の強みとなります。ですから、店舗スタッフには徹底的に基本を身に付けてもらう必要があります。その上で各々のセンスを如何なく発揮してもらい、それをお客様との接客に生かすことで支持率が上昇し、結果として店舗のファンが増えていくのです。
スキルは属人化せず、センスは属人化する。
こうすることで安定しつつ独自性の高い店舗経営が可能となります。
つまるところ店舗経営者の仕事はスタッフの「センス」を引き出す環境をつくることでもあるのです。そしてマニュアルはそのための手段として絶対的に必要なものなのです。
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