隣の芝が青く見えるのは、多くの場合は「幻」です。
「10年前の世界的な金融危機をキッカケとした不況から、未だ脱しきれずに売上の低迷が続いています。今は、インターネット・ショップにチカラを入れていますが、将来が不安です」
以前、とある地方から呼ばれて講演をした際、外国人向けのスーパーマーケットを経営しているニ代目社長がセミナー終了後話しかけてきたことがありました。
写真を見せてもらうと、それなりの規模のお店で、全盛期は5店舗を運営。
今は、2拠点を閉鎖して3店舗で経営されているとのことでした。
縮小傾向にある中活路を見出そうと、ネット販売を開始。
しかし、これも思うような利益にならず苦戦続き。
どうしたものかと名刺交換の時に相談を受けましが、私は小売業は専門外。
ただ、セミナー終了後ずっと後ろで待っていてくれたようなので、藤冨が感じたことを率直に進言させてもらいました。
「せっかくの経営基盤をないがしろにして、ネット販売とは…あまりにも勿体ないです!」と。
売上構成比や財務状況などを詳しく見たわけではないので、あくまでも感覚でしかアドバイスができませんが、、商売を戦いとして捉えた場合、自分の土俵に相手(競合)を引きずり込まずに、他人の土俵で戦っているのは、決して得策とは言えません。
そもそも、地の利が活かせません。
全国どこから店がどこにあろうと消費者は無関心です。
まして、店などなくても経営可能です。
山奥の倉庫でだって経営可能です。
ネット販売が成長しているからと言って、安直に捉えて事業参入するのは決して得策ではありません。
隣の芝が青く見えるのは、多くの場合は「幻」です。
こっちは、せっかく先代が築いた実店舗があるわけです。
しかも以前は流行っていたというからには、場所は悪くないはずです。
であれば、売上が下がっているからダメだ…と目を背けるのではなく、一つ一つの商売の基盤となっているものをテーブルに並べて見るのです。
そして、何にフォーカスをして、どれを磨けば、売り上げが上がりそうか…
つぶさに検討してみれば、意外にも「金の匂いがするアイディア」が見つかるものです。
今回、最後まで残ってくれた2代目経営者には、ジャストアイデアレベルですが、私は次のように助言をしました。
「外国の食生活」を体験するというのは、ある意味「レジャー」として捉えられます。
現実、統計上でも、レジャー産業と外食産業の売上相関関係は数字として見て取れます。
外国の食事というのは、小さな冒険としての楽しさを持っています。
浪費せず、貯蓄に励む人々だって、ストイックな生活は飽きがくるものです。
小さな冒険なら、喜んでトライするはずです。
人々は「楽しい暇つぶし」を常に探しているからです。
という前提条件に立てば、外国の食材・食品を多く取扱うスーパーマーケットは、「外国人向けの買物の場」だけで終わってはもったいないと思いませんか?
日本人にだって売れるはずです。
でも、外国の料理は作り方がわからない…。
であれば、今来店している外国人を「教えてあげる人」として招き、料理教室やBBQパーティーなどを企画し、日本人に外国料理の作り方を教えてあげれば良いのです。
教える外国人だって喜びます。
ロイヤリティが強くなり、他店への浮気防止にもなりそうです。
コミュニティが生まれれば、日本人が外国料理を日常の食卓に出す頻度も増えるでしょう。
さすれば、外国人向けのスーパーマーケットだって、日本人が訪れてくれるはずです。
日本のスーバーマーケットでは売っていない食材で、日本人の口にあった簡単で美味しい料理をたくさん教えれば良いのですから。
小さな冒険を望む人は、今日本中にたくさんいます。
楽しい暇つぶしを探している人は、そこら中にいます。
マーケットは、渇望しているはずです。
足元に転がっているネタを活かせば、それが実現できるに、トライしないなんて勿体無い!
ネット販売を否定するわけではありませんが、まずは、自らの強みに気づき、それを最大限活かす経営をすることで、先代経営者も喜び、今の生活を支えてくれるお客様も喜び、さらに働く従業員の士気も高まるはずです。
ネットに販売比重をおけば、働く人たちは「いつか私たちは不要になるかも」と危惧して、隙あらば転職してしまうかも知れません。
それを、望む経営者はいないはずです。
自らの作戦で自らの首を絞めないためにも、隣の芝が青く見え始めたら、まずは現実を直視することが大切だと感じます。
御社では、足元に転がっている商売のネタを最大限に活かしていますでしょうか?
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