業務マニュアルの改善と憲法改正
毎年憲法記念日の前後には日本国憲法が話題に上ります。
憲法を改正するには、国会の衆参両院の三分の二以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成が必要です。一方、法律は国会で過半数の賛成があれば改正することができます。
これらのことは教科書にも載っていることですが、憲法の改正がより複雑な手続きになっているのは憲法は法律の上位に位置づけられているためです。
法律は憲法の規定に準拠していなければ憲法違反としてその有効性が問われます。つまり、法律が正しいかどうかの判断の根拠になるのが憲法なので、その根拠がコロコロ変わってしまうと法律を運用していくことも難しくなります。
一方で、世の中の変化は早く、その振れ幅も激しいので、ルールを作るにしても柔軟かつ迅速な動きが求められます。
先般無人飛行機であるドローンが首相官邸に不時着してニュースになりました。そして、リスク管理の観点からは、現行法上ではドローンの飛行を規制できないことが問題視されました。
今はいろいろと検討されているようですが、いざ法律で決めるとなると現行法との整合性や規制を設けることの影響も検討せざるをえないので、今日決めて、明日から運用を開始するという訳にいかないのが現状です。
ましてや、たとえ内容について合意が得られたとしても、法律を改正するのに、いちいち衆参両院の三分の二以上の賛成や国民投票で過半数の賛成が必要となれば、その実施はますます後寄せになってしまいます。
このように、ルールを決める際には変わらない部分をどう担保するかという点と、変化に対してどう柔軟に対応するかという点をどう折り合いをつけるのかが難しいところです。
さて、中小企業においては「社長の考え=憲法」みたいなところが多分にあります。でも、その憲法がコロコロ変わる(ように見える)ので、社員はいったい何を根拠に動いたら良いのかが分からないというケースが少なくありません。
一方で、いったん作ったマニュアルがその後全然改訂されていないので、マニュアルの内容と毎日やっている業務が全然違っていて実際に仕事をやる際には現行のマニュアルが使えないという事例もあるのではないでしょうか。
そこで、業務をスムーズに推進するために私がお薦めしているのはルールの階層化です。
たとえば、ポリシー>規程>マニュアルのようにルールを階層化して、上位のルールに反しない範囲において権限を持つものが随時ルールを変更できるようにします。
ポリシー=会社全体、規程=各部門、マニュアル=各業務フローという位置づけで、経営者はポリシーをしっかり定め、部長は自分の部門のルールについては責任を持って遂行し、課長は現場の声を拾い上げてマニュアルを日々進化させていきます。
例えば、経理ポリシーとして「会社の経理においては、事実に基づいて正しい数字を報告する」という方針を定めます。つまり、ポリシーではある程度普遍的な方針や方向性を定め、数字をごまかなさい、粉飾決算はしないというベースを決めます。
次に、経理規程で「毎月月次決算を行う」という具体的なルールを設定し、その規定に従って、月次決算マニュアルで「月次決算の数字は毎月10日までに経理部長が社長宛に所定の文書にて報告する」とより詳細を決めていきます。
会社がまだ初期の段階で月次決算を行う体制が整っていない場合はまずは1年毎の決算をきちんとやることからスタートし、半期決算→四半期決算→月次決算と徐々に進化させていきます。
また、月次決算を行うにあたっても、最初は翌月末まで、次に翌月10日まで
最終的には翌月5日までというように、会社の情勢に応じて柔軟に変化させていくイメージです。
コロコロ変えるべき部分と慎重によく検討した上で改定すべき部分。
ポリシーが社長の気分や会社の業績ですぐに変わるのも問題ですし、マニュアルが憲法のように一度も改正したことがないのも問題ありです。
マニュアルの活用で業績の大幅改善に成功された無印良品さんでは毎日のように発見される問題点や改善点を基に店舗で使っているマニュアルMUJIGRAMを毎月更新されています。
そして、そのマニュアルの背景にあるのは、「個人の経験や勘に頼っていた業務を仕組み化し、ノウハウとして蓄積させる」(「無印良品は、仕組みが9割」より)というポリシーです。
あなたの会社のルールは上手く階層化できているでしょうか。
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