人時生産性を上げたいのなら「正解」より「結果」を求めよ
「先生、彼にあんな特技があったのには正直気づかなかったです。作業指示書をLSP化させていくと、予想もしない結果がでてくるものですね~」
今、プロジェクトに取り組んでおられ、生産性を爆発的に改善させてる、社長の一言です。
作業指示書をつくりLSP(レイバースケジュールプログラム)に移行する中で、いち早く取り組んだのが、青果担当のマネジャーでした。マスター入力を丁寧に行い、日々の作業量を個人に振り分け、一週ごとにつくってきたLSPは、着実にその店の生産性を引き上げるきっかけづくりを担ったのです。
――――なぜ、誰より早く取り組もうと思ったのですか?とお聞きすると
皆に、遅れをとってはいけないと思い必死に勉強されたとのことで、他のマネジャーも皆やってるのかと思ったら、やっていたのは、自分の売場だけであったと気づいたときは驚かれたそうです。
さらに、このツールなら、自分でも操作できる。と直感的に思ったそうです。
LSPを入れたからといって、人時が自動的に下がるわけではありません。
しかし、実際に入力して、使うことによって、何を変えれば自分のチームの結果を変えることができるのか?ということが見えるようになります。
今まで、日々の作業に追われていた自分を こうして客観視することで、改善する余地がたくさん見えてくるようになります。
例えば、品出しの理想は、開店前に全ての品出しは完了していて、開店時刻には品切れのない状態に売場にしておくことが重要となります。
途中補充があったとしても、せいぜい1回~2回ぐらいがベストと、LSPは気づかせてくれるツールになります。
よくあるのは、朝から晩まで一日中かけて、一人の人が延々と品出し作業が割り当てられているパターンです。
――――あなたの集中力はどれくらいですか?と聞かれたら何と答えられますか?
人によっては15分、長い人でも一つの作業への集中力は1時間が限度で、それ以上は効率が落ちるといわれています。
つまり、こういった一日中一人の人が単一作業を行うような、作業割り当てをすると生産性を著しく低下させます。
やるのであれば、応援をもらってでも、一括で1時間以内に片付けていくような工夫が必要となってくるわけです。
また、その反対に、細切れに作業が割り当てられてはいるものの、ところどころに、作業割当てのない空白の時間が、多くある場合もあります。
これも作業時間が間延びしてしまうので、作業効率低下の要因となります。
現状のあるべき作業の流れはこうして、修正を加えながら、契約人時の見直しをかけていくことになります。
LSP上でもっとも調整が難しいのが、チラシによるばらつきの是正です。
運用されている企業ならわかるとおもいますが、そもそも人の採用は、チラシの訴求の忙しい日に合わせ人時を確保していることから、暇な時は業務の空白が発生するといった、バラつきがでてくるのです。
店舗は、作業が間に合わなくてはいけないですから、どうしても、チラシの売上のピークを基準に、多めに人を採用しがちとなります。
そのためチラシの多い会社ほど、人時は多く、人をたくさん抱えていることから、人時売上が低い構造となるわけです。
「だからといって、チラシを止めたら、売上も減ってしまうのでは?」という声が聞こえてきそうですが、最近では、戦略的にそのバラつきを無くすために訴求本数を減らすことによって、人時の高止まりが解消し、人時生産性を引き上げ営業利益率を確保するチェーンも現れてきています。
実際に、チラシの訴求を止めた場合、週の売上減よりも、人時売上の上昇の方が高くなることから、結果的に利益がプラスに転じることは、よくあることです。
もちろん、これは実際に取組んでやった企業しかその結果を得ることはできないわけですが、結果が得られると言うことは、そこから先、また新たな仮説を立てることが出来て、新たな成長のチャンスに巡り合える可能性が高くなるということです。
チラシを止めれば客数が減り、売上は落ちる。たしかに、机上だけで考えれば、これが「正解」となるわけですが、経営は、学校試験のように正解があるわけではないので、結果はやったことのある企業でなければこの「結果」の価値わかりません。
楽天の三木谷氏が、立ち上げの時に、毎日プログラミングについて、SEの家庭教師を雇って、その仕組みを学んだ話は有名です。
トヨタ社長の豊田章男氏も自らハンドルを握りラリーに挑んで、楽しい車づくりを目指しています。
スティーブジョブスは、タッチキーをなくしたスマホを開発しました。
自社が勝ち抜いていくうえで一番求められることは、自社製品が日々使われるコトへの改革であり、それこそが顧客が日々使う自社の付加価値に直結しているといことから、自らをその場において、解決にあたることが重要といえます。
小売現場で日々使うLSPも同じで、まず社長自らが、使ってみて、使えるかどうか?その操作してみることがとても大事だからです。
それを使いこなすことで、店の生産性、店舗コンディションは向上し、気づけば、競合より優位なポジションいたということは良くある話です。
誰でも普通に使えるようにするためには、経営者自らが、誰よりも、その仕組みや操作性に触れ、決して現場に丸投げしないことが、「結果」を生み出しつづけることで、人時生産性の結果を変えることに繋がります。
平昌五輪で、6個のメダルをもたらしたスピードスケートコーチのデビット氏は、「選手同士の距離、左右幅、先頭交代のいずれにおいても、他国とは違うノウハウを持っていた。だが、いくら理論が優れていても実践しなければ意味がない。選手たちがトレーニングを重ねることが前提だ。」と語っています。
その道を切り開くには、ノウハウを知ったうえで、それを実践することが、結果を導く最も近い道と言えるでしょう。
さあ、貴社におかれましては、まだ 実践されない「正解」を探し続けますか?それとも、「結果」にこだわりますか?
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