コピーはいつでも36.5℃
先日、コピーライティングに関するご相談がありました。通販部門を立ち上げたばかりのお茶メーカーの社長です。
都心に新聞折込チラシを入れることになっているそうで、印刷会社に依頼するための原稿作りに苦戦しているので見て欲しい、とのこと。通販事業起ちあげにあたり、半年間マーケティングの勉強会に通いコピーライティングについて習ったそうです。
社長曰く「マーケティングの先生に教えてもらったけれど、実際に自分で書くとなるとキャッチコピーを書くのは非常にむずかしいです。書くこともままならないのに、どうやって“バカ売れコピー”が書けるようになるのか、、、」と不安そうです。お話を伺っているうちにマーケティング教室で習った「“ベネフィット”、便益とか利便性を書くんですよね」と気づかれ、その場でご自身で書いてきたコピーに赤字を入れてくださいました。
しばらく修正したり書き加えたりして、お持ちになった原稿が真っ赤になりました。拝見すると、つぎのような言葉が散りばめられていました。
- 緊急告知!
- おいしい深蒸し茶
- お茶どころ〇〇よりお届け
- 〇〇ならではの深い味わい、、、
- 話題の〇〇茶のココがすごい!
- 産地直送
- 八十八夜に先駆けて販売、、、
社長は想いを込めて伝えてくださいました。「うちのお茶は、三つの特長がありまして、、、これが他社と比べてみてもスゴイんですよ。飲めばわかります、、、どこよりも早く、先行発売します!」と。
ここまでお読みになって、いかがでしょうか。
コピーライティング教室ではないので詳細は省略しますが、社長が書いたコピーは商品の良さを伝えるコピーで、作り手、売り手が主語になっています。
このコピーを読んだ消費者は「これは商品がいかに良いものかって言いたいんだなー」と思い、「商品の自慢話が書いてある。今の私とは関係ない」となります。
興味深いことに、自分がお客として読めば「このコピー全然刺さらないなー」とわかるのに、実際に、自分でコピーを書くとなると客観的にはなれないものです。考えれば考えるほど、何を書いて良いのかわからなくなってしまうのです。「人のふりをみても、なかなか自社に活かせない」のがコピーライティングの現実で、実際に書いている人の悩みなのです。
一因は「熱量」にあります。潜在的に「自社可愛さ」があるので、自社の素敵なところを多くの人に知ってもらいたい、認めてもらいたい、認めてもらって好きになってもらいたい。ファンを増やして儲けたい、という想いや期待でいっぱいになり、視野狭窄に陥ってしまうのです。自社の熱い想いを、安易に書いてしまうことが原因です。
お茶のコピーについて話を戻します。
例えば、
「緊急告知」ではなく
「今だけの特別なご案内」
「おいしい深蒸し茶」ではなく
「1日の終わり、疲れた自分へご褒美深蒸し茶」
「〇〇茶のココがすごい」ではなく
「赤ちゃんもジィジバァバも、家族全員の健やかな毎日にお役立てください」
「先駆けて販売」ではなく
「他社よりも〇〇日も早くお届けいたします」の方が「伝わる」のではないか。
自社が可愛い。
自社を好きになってほしい。
それが、わたくしたちのむき出しの本能です。
「自社商品サービスの特長をしっかりと伝える」。そんな大義名分のもとどうしても甘くなって、自社中心の文言をアウトプットします。結果、お客様にとってはただの「自慢話」になります。お客様は、「どことなく上からの目線だなぁ」と敏感に感じ取ります。
残念ながら、コピーだけで売れる時代はとっくに終わりました。今の時代「売れるコピー」と形容されるような「魔法の言葉」はありません。それは1980年代の夢となり、現は商売の「本質」へと回帰し、考え方のリニューアルが必要不可欠です。
魔法は、淡々とひたすらにお客様の心に刺さるコピーを書くことから生まれます。売れるコピーを書くのではなくて、「欲しいコピー」を書くことです。主語はお客様です。全体性を見て、プロモーションの隅々まで「お客様に買っていただく」姿勢を浸透させる必要があります。
言葉は武器であり、言葉は御社の考え方です。
言葉は考え方であり、経営者そのものです。
言葉は経営者そのものであり、そして、商品サービスそのもの。
コピーに熱さは不要です。
今の時代、世は自慢話であふれています。キラキラなモノ、コト、ヒトであふれています。だからこそ、大きな声で自慢すれば嫌われます。
自演のキラキラにあふれた騒がしい時代だからこそ、落ち着いた声で淡々と伝えることです。お客様に「想像する時間」をギフトすることです。お客様の話に耳を傾ける「沈黙の時間」も求められています。売り手は、熱い想いを胸に秘めながら、言いたい気持ちをグッとおさえてください。微熱を感じたら一度クールダウンしてください。
御社の商品サービスで、キラキラと輝くのは「お客様」。
商売という舞台において、常にスポットライトを浴びてキラメクのは「お客様」。
スポットライトの光で気持ちが上がり、熱っぽくなるのは「お客様」なのです。
御社の言葉でお客様のハートに火をつけましょう。火をつける仕組みを再構築しましょう。
お客様の熱量を上げるのは、他でもない、御社の商品サービスです!
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