年商10億以上に育つ可能性のあるビジネスモデルに変革するのは、ひじょーーに難しいのです。その検討の第一歩と絶対に必要な条件とは!?
ピークタイムである14時、展示会場は、その業界の人であふれていました。
ブースに挟まれた通路では、沢山のスタッフが、来場者に声をかけています。
「何かお困りごとは無いですか?」、「いま、お時間よろしいですか?」
私は、案内状を手に、お目当てのブースに真っすぐに歩きます。
遠目に、その設備会社のブースを見つけることができました。そこには、W社長と社員が立っています。
遠目でみても、その「地味なブース」が見つけられるほど、その周囲に来場者はいません。社長は、私に気が付きました。
「矢田先生、ありがとうございます。狙い通りです。何もかもが狙い通りです。2件のアポイントがとれました。」
そのブースの静かさとは逆に、W社長は、満足そうな表情を浮かべます。その横で、若い技術社員が、賛同の頷きをしています。
年商数億から年商10億に進むときに、もっとも難しいのが、ビジネスモデルの変革となります。
ビジネスモデルには、そのモデルに合った規模があります。
よく経営の世界には、「ある規模になると、成長がとまる」と言われます。(これを「年商〇億の壁」や「組織の壁」と言ったりします。)そのもっとも大きな原因は、このビジネスモデルにあります。
その停滞を迎えている年商が2億であれば、年商2億に適したビジネスモデルであると言えます。それが年商6億であれば、年商6億に適したモデルであると言えます。
それは、正しく表現すると、「停滞」ではなく、「適切」となるのです。
この適切な規模は、それぞれの業態によって、ある程度の目安があります。
例えば、ネット通販サイトであれば1億~2億。住宅系工務店であれば2、3億。受注設備系で3億。商社系・卸系で7、8億、販促支援で1億数千万から2億。
この目安を人数で表すこともできます。ネット通販サイト10名、住宅系工務店12名、受注設備系18名、商社系・卸系は13名、販促支援は8名。
これを、決して停滞と考える必要はありません。その事業を立ち上げ、その「適切」な規模まで成長できた、と喜ぶべきです。
そして、次に進むためには、その狙う規模に合ったビジネスモデルに変革する必要があります。その規模での「適切」を保った状態で、次のステージに進むことには、やはり無理があります。
変革することができれば、そのビジネスモデルが「次の適切」と言える規模まで、成長を進めてくれます。その過程は、驚くほどスムーズです。
狙うべき年商を決め、その狙い通りに事業を作っていくのです。
狙い通りのターゲットである見込客を集め、その狙い通りに商談を行い成約する。そして、その狙い通りにサービスを提供し、狙い通りにお客様満足を勝ち取る。
その結果、狙い通り儲ける。
これが、事業になります。
社長は、どんな事業をつくり、どう儲けるのか、の狙いを持つことになります。社長の頭に、それを描けられないうちは、次のステージに進むことはできません。
年商10億を狙うとき、年商10億のステージに進むために、重要となるものの一つに「単価」があります。
一人のお客様が、いくら当社に売上げ(粗利)をもたらしてくれるのか。
1社を開拓すると、いくら年商を積み上げることができるのか。
一店舗出店すれば、年間いくらの儲けが見込めるのか。
この基準となる「単価」を、持つ必要があります。
年商2億の時には、単価500万円 × 年間40件でした。
年商10億を目指すということは、500万円という単価を上げるのか、40件という件数を増やすのか、を変更することになります。(またはその両方)
単価を2000万円に上げることができれば、50件で10億になります。
それに対し、単価500万円のままであれば、件数を200件にすることになります。
このどちらが良い悪いではありません。そのときには、下記の視点を検討することになります。
「手間に見合っているか?」
単価を上げても手間は大きく変わらない、件数を増やしても今と同様に仕組みでこなせる、のであれば問題ありません。そのまま拡大を続けるという判断ができます。
しかし、もし今現在が単価500万×40件で、多忙で社内が疲弊気味であったり、不具合などの混乱が発生していたりするなら検討が必要になります。また、その状態で儲かっていないのであれば、なおさら問題があります。
このまま、見直しをせずに、集客などの売上げアップ策を取り続ければ、益々混乱は拡がることになります。
「細かい業務で社内は溢れかえっている」、「取り扱い商品が多く、在庫が増える」、その結果「忙しい割りに儲からない」となります。
そして、そこに仕組化が進んでいないと、そのまま、不良品の流出や手戻り、各工程の判断ミスが頻発するようになり、原価率やコストの上昇を招きます。
そして、生産性(一人当たりの儲け)は徐々に低下していき、利益が出し難くなります。その状況に疲弊した社員の離脱も起き始めると、いよいよ悪循環が始まります。
「いまの単価で、年商10億にすると、何件必要であるか?」
「件数が倍になったとき、その量をこなせるのか?そして、その時、きちんと儲かっているのか?」
この問いに対し、NOであれば、『単価』を再構築する必要があります。
当社の基準となる『単価』はいくらであるべきなのか?
年商10億に行くために『単価』は、いくら必要なのか?
年商10億を考える時には、『単価』を決めてから、ビジネスモデルを考えることをします。ビジネスモデルから単価ではありません。単価からビジネスモデルなのです。
特に今現在「適切な規模にある企業」は、この考え方が必要です。
次の狙うステージの『単価』は、いくらであるべきか。
展示会に出展する目的は、大きく二つあります。
ひとつは「調査」のため、もう一つは「販売」のためです。
自社のサービスがまだ売れるか確信が持てない、ターゲットが想定できない、他にどんなニーズがあるのか調べたい、そんな時には、「調査」を目的に展示会に参加することになります。
もう既に売るものは完成しており、市場が有ることも解っている。そして、そのための販促資料もできている、という時には、「販売」を目的に展示会に参加することになります。
この目的をしっかり使い分ける必要があります。
前者の「調査」であれば、社長がブースで立つことになります。社長自ら来場者に説明し、反応を見るのです。そして、用途や課題なども聞かせてもらいます。
また、アドバイスももらいます。
後者の「販売」が目的であれば、自社の社員にやってもらうことになります。
または、手配したイベントスタッフに、マニュアルで説明をし、依頼することになります。
その時には、明確な「自社の売り物」が必要になります。見込客が抱える課題も把握できており、自社のサービスがその人達に「刺さる」ということが解っているからこそ、社員でもイベントスタッフでも、チラシで興味を引くことができるのです。
刺さるものが出来上がっていないと、行き交う人に向けて、「何かお困りごとは無いですか?」、「いま、お時間よろしいですか?」と、頓珍漢な呼び込みを行うことになります。その結果、沢山のなんとなくの名刺を手に入れることができます。後日アポをお願いしても、ほぼ全滅で断られることになります。
「販売」を目的とするのであれば、「刺さる売り物が有る」ことが条件になります。
冒頭の設備業W社は、ビジネスモデルの変換により、単価を500万円から2000万円にすることが出来ました。
もうすでに事業性の確認もできています。そして、販促資料の整備もできています。
そのタイミングでW社長は、展示会への参加を決めました。出展費用と地味なブースの装飾で、300万円以上はかかっています。
その結果、この日は14時までに、アポイントを2件取ることができました。
そのアポ先は、社長が狙った通りの業界の、狙った通りの規模の企業です。
W社長は、数少ない自社ブースへの来場者に、いろいろ質問をしました。
「どうして当社に来られましたか?」、「どんな課題をお持ちですか?」、「検討の際、優先する条件は何ですか?」。どちらが、購入検討者か見分けがつきません。
その結果、下記のことが判明しました。
・殆どの方が、今回のフェアに、W社のその設備を第一目標にして、来場されたこと。そして、事前の出展企業を調べている時に、「刺さった」とのこと。
そして、狙い通りの業種と規模であったこと。
これが確認できたことに、W社長は喜びました。そして、その場でアポイントをお願いしました。結果、精度の高いアポイントが2件とれました。
W社長は、「狙い通りの見込客を集め、販売の第一歩であるアポイントの獲得までの流れ」を確立することができました。
社長の今回のフェアの目的は「構築(開発)」です。新規顧客開拓の仕組みを、作るために参加しました。これで新規開拓の仕組みが完成すれば、社員にやらせることができます。いよいよ「展開」です。毎年同じサイクルで、新規を開拓できます。
単価を大幅にあげたので、その対象となる見込客は、大きく減ることになりました。しかし、その分、その新しい見込客には、「刺さる」内容とすることができました。
そして、その刺さる内容だからこそ、精度の高い見込客を集めることができました。そして順当にいけば、大きな単価の取引になります。
だから、アポイント2件で十分なのです。展示会に年間300万円かけて、1社でも新規開拓できれば十分です。
名刺1000枚よりも、価値があります。
この2件のアポイントはお金にできる可能性を十二分に持っています。ただ集めただけの名刺1000枚とは違うのです。
年商10億へのビジネスモデル変換を本気で考える。
その第一歩が、「単価」の設計となります。
手間に見合った単価であること、そして、年商10億になる単価であること。
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