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マーケティングでは、エステサロンでキッシュは売れない

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

東京の郊外にある創業10年のエステサロンオーナーからのご相談です。オーナーがひとりで営む小さなサロンですが、昨年末に近隣レストランと協業し店頭でクリスマス限定の「キッシュ」を販売しました。(営業許可済)

キッシュとはフランスのパイ料理の一つです。卵ベースの生地に肉や野菜などを加えてオーブンで焼き上げた軽食。認知度の低い料理ですが、例えば大手コーヒーチェーンのスターバックスではフードメニューの1つにキッシュを販売しています。タルト型で380円です。

エステサロンでは、手のひらに乗るホール(円型)タイプのキッシュを1台500円で販売。近隣レストランから仕入れました。店頭に小さなコーナーをつくり、ラッピング済みの完成品をサンプル展示。簡単なディスプレイと小さな手製POPだけの販促です。トライアルし、期間限定のわずか数日間で40台を売り上げました。何も置かなかったらゼロです。この売上をどう視るかが大事です。

サロンでは売上増のためにエステ関連商材を販売しています。オーナーご自身がマンネリズムに陥り、何か新しい可能性を探りたいということでご相談にいらっしゃいました。知り合いのレストランが縁でキッシュに出会い、店頭販売してみたい、ということでした。

自分の直感だけでは、と思い、周囲に意見を求めたそうです。税理士先生はじめ様々な方が「サロンでキッシュは絶対に売れない」「無駄だ、やめた方がいい」と呆れられ否定的な意見ばかりが出たそうです。

諦めきれず、マーケティング関連の「未来ビジネス予測セミナー」のような勉強会に参加し、講師に個別で質問すると「エステサロンで食べ物、しかもキッシュ??? 売れるわけがないでしょう。マーケットがちがうんだから、、、それよりもスマートフォン全盛なんだからSNSを一生懸命やりましょう」と一喝されたそうです。

しかし事実は、店頭に置いておくだけで40台。お客様の反応も良く「また買いたい」「次はいつ?」というリクエストの声、声、声。サロンでキッシュ、がお客様から嫌われるどころか大好評の手応えです。

外来マーケティングでは見落としがちな大事なポイントがあります。アメリカによるアメリカ人のためのアメリカ式マーケティング手法は、常に市場ベースで発想していきます。基本的に「ターゲット市場」から顧客ニーズを的確につかみ論理的に顧客にアプローチする手法です。

マーケティング的に考えれば、エステサロンの市場、ターゲット層が求めているのは、美しくなるための商品サービス。軽食のキッシュはまったく「刺さらない」商品となり、先生がおっしゃる通り「買うわけないでしょ」ということになります。

一方、わたくしの商品リニューアルコンサルティングで顧客側からの発想をします。コンサルティングではオーナーにきっぱりとお伝えしました。「時代が変わればお客様は必ず離れてゆきます。いままで築いて来た技術もノウハウも、残念ながら時代が進めば使い物にはなりません。新しい時代には新しいやり方があるからです」と。

この言葉で目覚められ、自社の本質的価値やご自身の考え方のリニューアルに着手されました。果たして、エステサロンの実務30年のオーナーは「ほんとうの美しさとは内面から生まれる。お客様の心を喜ばせること、小さな“うれしい”を引き出すのが自社の使命」だと再発見され、ビジネスの定義を本質的にリニューアルされました。

考え方の再定義により、オーナーの視点がガラリと変わります。

エステにいらっしゃるお客様の多くが単身で60代以上のシニアとキャリアウーマンです。提供するキッシュは栄養がつまった地元野菜15種類を使い、食感がやさしい。卵を使った高タンパク商品。キッシュ=軽食ではなく「顧客の心を喜ばせる商品」として考え方をリニューアル。「ラクに手間なく栄養がとれる。食べやすい。クリスマスシーズンの軽食にうれしいアイテム」と再定義しました。お客様の心を喜ばせることが自社のビジネスなのだから「売れる! 」と確信し、あとはコミュニケーションプロセスを組んでゆくだけです。

エステサロンの仕事はお客様のお肌をあずかるビジネスです。肌は脳(心)の表れです。ゆえに、肌をあずけるオーナーに対して、顧客の心理的距離はものすごく近い。オーナーに対して圧倒的な信頼感があり、独特の一体感があるはずです。

「オーナーが言ってるなら食べてみようかな」「この人がオススメしてくれるなら買ってみたいな」「あなたが良いと言うんだからまちがいなさそうね」という顧客心理から発想していくのです。

アメリカ由来のマーケティングにかけているのが、日本式商いを支える細やかでソフト、ウエットでファジーな日本式コミュニケーションからの設計です。フレームワークを策定しても一番重要なソフトをしっかりと自社オリジナルにリニューアルしていなければ、商売には活かせません。

商品リニューアルとは、ビジネスにおける考え方のリニューアルに他なりません。考え方を再定義することで、人まねやパクリではない、自社オリジナルでどこにもない市場を創造することができます。原始的で泥臭いことにこそ本質があるのではないでしょうか。

商品リニューアルとはビジネスにおける考え方、事業思考、経営哲学のリニューアルそのものです。「そんなの無理」「ありえない」と狭義しているのは自分自身の心、考え方です。マーケットという大きな森を見るのではなくて、自社という「木」をしっかりと視ること。木のもとにいらっしゃるお客様のハートをていねいに感じることが要請されています。

 

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