人を褒めるために必要な条件
今回は人財育成の華ともいうべき“褒める”についてお伝えしていきたいと思います。
特に私がここでお伝えしたいのは、よくある小手先のスキルではなく、“褒める”ということの本質です。
“褒める”ということの知識やノウハウなどを得たければ、本屋に山積みになっている
何十何百という数の書籍を参考にすればいいですし、会社でも研修やセミナーなどでテーマになる機会も多いでしょうから、そちらを活用しない手はありません。
知識やノウハウを活用するには、その基盤が何よりも重要です。ここではその基盤をつくりあげる材料を提供していきたいと思います。
さて、そもそも“褒める”とは何でしょうか。辞書的な意味は、「すぐれているとして、その人や事を良く言う」となります。
しかし辞書だけの意味ではよくわからず、しかも味気ないので、ビジネス的にその意味を足すとすれば、「優れた行動を正しく評価し、より良く伝え、感情の高揚を呼び覚ますことで、良い行動を強化し、成果に結びつける一連の流れ」という感じになるでしょうか。
“褒める”の意味を理解したうえで、その構造を見ていきましょう。まず“褒める”と
“褒められる”の関係性でいえば、褒める人のほうが、褒められる人より立場が上、もし
くは同程度に位置していることが必要条件となります。たとえば、上司と部下、先輩と後輩、親と子、経験者と未経験者、同僚同士などですね。
部下が上司を褒めたり、後輩が先輩を褒めたり、子が親を褒めたり、といったことは通常ありません。(上司がいない場での部下同士の話や、会社でそういう評価システムを導入している、また、あえてそういう場を作っているところはその限りではありません。)
つまり年齢、経験、実績が同等以上であることが“褒める”基本構造となります。
誰も自分より年下で、経験も少なく、実績もない人から褒められたくないでしょう。
この基本構造に加えて、感情的な部分も“褒める”ことに対して影響を与えます。
褒められて嫌な気がする人はあまりいないですよね。しかし、自分が感情的に受け付けない人(嫌い、苦手など)から褒められて嬉しい人はいるでしょうか。また、全く知らない人から褒められた場合、少しは嬉しい半面何か怪しさを感じる人が大半ではないでしょうか。
これらのことから、“褒める”という行為がしっかりと機能するには、良好な人間関係
が必要だと言えます。少なくとも嫌われていないこと、そしてお互いが多少の情報を持っていることですね。
何を当たり前のことを…と言われそうですね。しかしながら、これをわかっていない人(特に上司)が非常に多いのです。
大半の人が会社で与えられたポジションがそのまま自分の力であり、自分の信用であり、高い人間性を表していると勘違いしているのです。
もちろん仕事が出来て人徳もあるような人もいますが、これはかなりの少数派です。
つまりほとんどの上司は、部下から信頼されてもいない、良好な関係を築けていないのに、“褒めて”います。(これは親子でもいえるでしょう。ついでに言えば、“褒めない”人も多いのですが。)
こういう状況で“褒める”ことは無意味であるばかりか、さらに信頼を損ない、その溝
を広げる可能性があります。しかも、上っ面の褒めるスキルを使ってしまい、目も当てられない状況を自ら作ってしまうことも少なくありません。
人を褒める、すなわち人財育成を成功させるには、あなたが人を褒めるに値する人間になることです。
それは決して難しいことではなく、当たり前のことを当たり前にするだけです。仕事のレベルアップをはじめ、言行一致、積極的なコミュニケーション、オープンな環境づくりなど基本的な事柄を普段から徹底して行うことです。
褒めることについては、「何を言うか」よりも「誰が言うか」がより大きな影響を与えます。
経営者の皆さんも、まずはスタッフから「あの人から褒められたい」と言われるよう
に日々の仕事に取り組んでください。
人は誰でも自分が尊敬する人から褒められたいものです。そしてそういう人から褒められると倍以上の力を出し、会社を成長させる原動力となるのです。
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