失敗する新規事業の典型的パターンとは
「会長の時代から続けて来た請負型の仕事を見直して、自社商品を事業の柱に育てる新規事業チームを立ち上げてもらいました。手伝ってもらえないでしょうか」
昨年秋に弊社セミナーにご参加頂いた企業の役員さんから仕事の打診を受けました。
話を詳しく伺うと、まだ具体的な新商品のアイディアもない状態で、これから何をしようか…という段階。
全くの白紙からの立ち上げは、得意中の得意分野ではありますが、プロジェクトメンバーの構成と意思決定のあり方を聞いた瞬間、残念ながらお断りをすることにいたしました。
と言うのも、2代目社長が新規事業をやれ!と号令をかけたものの、このプロジェクトには参加をしないと言うからです。
もちろん、好きにやれ!と権限を委譲されているのであれば、問題はありません。
しかし、意思決定は自分がするが、プロジェクトには参加しないと言うのは、プロジェクトが形骸化する最も多いパターン。
成功確率も極めて低いので、お互いに時間の無駄になりそうだから、やめましょう…とお伝えしたわけです。
2代目社長は、役員会で「いまの稼業がこれからずっと続くとは考えられない」と、危機感を持って「新規事業の立ち上げ号令」を出したそうです。
肝いりのプロジェクトのはずなのに、検討段階で社長は関与しない。
ボトムアップで推進し、事業化の判断は自分で行う!と言うのです。
ハッキリと言いますが、事業モデルをガラッと変えるような新規事業開発において、ボトムアップは絶対にあり得ないからです。
既存商品のリニューアルや、コモディティ商品分野での新商品企画なら、ボトムアップでも構いません。
競合がひしめき合い、差別化競争をしている中においては、多くの情報を集め、その中で「今、顧客が感じている不便、不満、不愉快」を机の上に並べ、そこから差別化アイデアで出すためには「たくさんの頭脳」があった方が、儲かる企画が立てやすくなるからです。
漏れなく、重複することなく、市場から不便、不満、不愉快の情報を得られれば、自ずと「こんな商品があればいいのに!」と言うアイディアは出てきます。
しかし、新規事業の立ち上げや新しい価値を市場に問う新商品の企画開発は、リニューアルとは異なります。
無を有にするためには、混沌とした世界からヒントを手繰り寄せ、自らの事業分野に転換させていく「革新的な発想」が必要になります。
こんなことを言うと怒られるかも知れませんが、残念ながらお給料をもらって働いた方が安全という「保守的な発想」で日々を活動しているタイプの人には、真逆の発想である「革新的な発想」が出るはずもありません。
これは、商品のライフサイクルにおいて、最初に革新的な商品を採用する「イノベーター」や「アーリーアダブター」の概念を引用して行くと理解できると思います。
ビジネスをしているだけで、遊びと同じくらい興奮する人種は、革新的な発想を採用(着想)する器を持っています。
しかし、ビジネスを受け身で捉えている人たちは、冒険を怖がります。前例がないと、前に進めません。
当然ながら、革新的な発想が頭に浮かんだとしても、発言することなくスグに発想を消去してしまいます。
これは2:8の法則(パレートの法則)を世に広めたイタリアの社会学者のパレート氏の学説からも「2対8で人種が別れている」ことが明らかになっています。
そんな保守的なメンバーだけでプロジェクトを組んだら…
「新規事業のアイディア」すら出ないのは、想像に難しくありません。
百歩譲って、秀逸な「新規事業アイディア」が出たとしても、事業プランに昇華させるプロセスで腰折れになってしまうでしょう。
誤解しないで頂きたいのは、保守派は不要と言っているのではありません。
逆にロジェクトメンバーに1人か2人は参加してもらい、ブレーキ役となってもらうのは悪くはありません。
リスクヘッジのアイディアの源泉になったり、第3の道を考える元になったりするためです。
これまで新規事業のプロジェクトは何度も立ち会ってきましたが、チームメンバーはバランスが大事です。
斬新の着想。
奇想天外な視点。
そして、消極的な意見。
混沌とした情報から、いつも突破口は見えてきます。
その中で、「これだ!」という道は、多くの場合「たったの一つ」しかありません。
もちろん、満場一致で『これだ!』と言うアイディアなどはありません。
革新者だけが賛同することがほとんどです。
だからこそ、その場に意思決定者がいることが何よりも重要なのです。
御社では新規事業プロジェクトを社員任せにしていないでしょうか?
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