優れたリーダーは朝令暮改
「うちの社長は言うことがコロコロ変わる」というのはいつの時代になっても社員から出る不平不満の代表格です。確かに会社のトップの「軸」がブレブレだと見えれば社員が不安になるのもわかります。
しかしながら、経営者やリーダーは意見や考えがコロコロ変わって当然であり、変わるべきです。なぜなら、物事の進化や成長というのは連続的ではなく、突然に変わる「非連続」なものだからです。
例えば通常我々が正しいと信じている「科学」。これも実際は「現時点では正しそう」というだけのこと。科学の進化というものは今正しいとされているものがジワジワと「より正しく」なるわけではなく、突然に違うものが「今後はこっちが正しいということにする」となるわけです。
科学だけではなく、いまの時代に通説や規範となっているもの、いわゆる「パラダイム」は連続的に変わるのではなく、パーン!と突然変異するものです。パラダイムチェンジと言わずパラダイムシフトというのもその変化の非連続性をあらわしています。
これを哲学では「認識論的切断」といいます。
つまり私たちの生きるこの世界はすべて「非連続性」でできている。
世界が非連続に動いていくならば、人の価値観や考え方も同様に非連続に進化していくべきものです。しかし我々はついこの世界は少しずつ連続的に変わっていくものと思ってしまい、今のパラダイムを固定的に「正しいもの」と捉えてしまいがちです。そしてこのように世界を観てしまうと、自分自身についても同様に固定的であることをよしとしてしまいます。
今までのやり方がこうだから…
この業界はみんなこうだから…
うちの強みはこうだから…
それはうちではやってないから…
急にやり方を変えると古いお客様が離れてしまう…
あなた変わったねと言われるのが嫌だ…
ある意味無意識的にこのように考えて自らの成長や変化にブレーキをかけてしまうのです。
さすがにこのご時世に時代の変化を否定する人はいないと思いますが、その変化が連続的に起こると考えていると、自分だけ飛躍して大きく変わることに抵抗を感じてしまうでしょう。逆に、世の中なんて非連続的なもので、既存の枠組みやこれまでの延長に意味はないということに臨場感を上げていけば、むしろ大きく変われない自分に危機感や違和感を感じられるはずです。
大切なことは、周りがガラッと変わってから慌てて自分も変わるのではなく、どうせいずれは世の中や自分の置かれている環境は大きく変わると捉え、自らを自己否定して他に先んじて変わろうとする姿勢です。
先日サッカーのクラブワールドカップで2連覇を果たしたレアル・マドリードにエースとして君臨し続けるロナウド選手。TV解説の受け売りですが、彼は持ち味であったサイドから鋭く切り込むプレースタイルから、いずれ来る肉体の衰えを考慮し、センターに切り込んでディフェンスを自分に集めて相手陣を崩すスタイルに変えたそうです。
アスリートでも経営者でも、見えている人は自分をとりまく全体を俯瞰し、自らをも客観視し、自己否定を乗り越えて突然変異的に進化していきます。「抜けた!」と表現されるような変化です。
弱者は追い詰められて嫌々変わる。強者は自分が先に変わって周りも変える。
世の中の変化をリードする経営者は、世界の見方を薄め、自分を薄め、固定点を持たずに非連続な変化を遂げていきましょう。朝令暮改上等です!
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