社長は、蔓延する「負のコミュニケーション」を組織の問題として直視せよ
「うちの職場は女性が多いのですが、資格を持っている方も多く、みなプロ意識を持って働いてくれているのです。ところがそのプロ意識があるせいか、よくぶつかることもあって、職場がギスギスしているんですよね。どうも相手の粗が見えてしまうのでしょうけど、相手を責める、裁くという意識が職場に蔓延してしまっているんです。本当は、協力しあって働いて欲しいのですけど。」
自身もプロ意識の高い女性社長さんからのご相談です。個々の社員の能力や可能性はとても高いのにも関わらず、チームとして働くことになると、「彼女がすべきことをきちんとしていないから困る」「あの人は仕事が雑なので、結局私がやりなおさなければならない。」など、不平や不満が蔓延してしまっていたのです。
個々人は、十分に能力ややる気があるわけですから、何とも勿体ない話です。女性社長はその両者の間を取り持ち、なだめる役を必死にされていらっしゃる
のです。そのため、ほぼ一日の社長の仕事が、社員の不平、不満を聞くということで終わってしまっているという厳しい現状が続いていました。
もちろん、社長が社員の言葉に耳を傾けることは大変重要ではあります。ですが、そのことで本来、社長がすべきことがおろそかになっていては問題です。社長自身も社員の仲を取り持つことに疲弊されていたこともありますが、これではまずいという強い危機感を持っていらっしゃいました。
さらに、この現状を個人の問題として捉えている限り、一度は問題が収まっても同様のことが繰り返し起きてしまいます。また、「まあまあ、そう言わずに」などと、実際に起きている問題を直視せずに、なんとか丸く収めようとすると、プロ意識の高い有能な社員ほど、職場に見切りをつけ辞めてしまうのです。
つまり、このようなギスギスした職場にありがちなコミュニケーションは、根本から変えていかなければなりません。しかも、個人間の問題として捉えずに、職場全体の問題として捉え、その構造的なあり方にメスを入れるべきなのです。
そうしないと、せっかくの有能な社員が辞めてしまうという損失を避けられないばかりか、信頼関係がないためミスがおきたり、職場によっては、それが大きな事故になり顧客と信頼を失うなど、会社を揺るがすほどの大問題に発展してしまうこともあるのです。
社長は、ギスギスした職場のコミュニケーション不全は、会社にとって大きなリスクであるということをしっかりと腹落ちさせていなければならないのです。
解決のためには、職場全体のコミュニケーション、雰囲気など、全体を底上げする必要があります。普段くすぶっている不平や不満、両者の言い分をとにかく吐き出してもらうことも必要でしょう。良い成果を出すため、また、お客様に喜んでもらえるために、それぞれが協力し合うことで生まれるより良い「ゴール」を共通認識としてもった上でのコミュニケーションは、相手を一方的に否定したり、批判したり、貶めるものとは違います。
また、普段、「責める」「裁く」の意識が蔓延していると、残念ながら「上手くいっていること」「出来ていること」などは当たり前のこととして見逃されたり、軽視されていることも多いのです。
あらためて、相手の良いところ、出来ているところを両者で確認しあうという新しい視点、新しいカルチャーを熟成していくことが求められるのです。社長には、社員の言い分の聞き役に徹するだけではなく、職場に新しいカルチャーを作る旗振り役という大切な仕事があるのです。
御社は職場に蔓延するコミュニケーション不全を直視していますか。
その場しのぎではない対応をしっかり行っていますか。
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