儲かるビジネスをつくる社長が見ているもの
世の中の変化のスピードが激しく、経営にもさらなるスピードと効率化が求められるこの時代、事業の構築や人材の育成に関してすべて一から自社で進めるのではなく、事業買収や提携という手段で自社に足りないものを一気に手に入れるというケースが、大企業のみならず中小企業においても増えてくると思います。
例えば跡継ぎがいない小規模の同業者から商権と数名の従業員を譲り受けるというようなケースです。人材の採用が難しい状況でもありますし、熟練の社員を雇えて彼らに紐づいたビジネスまでついてくるわけですから一考に値します。
もしくは市場シェア拡大を狙う大手プレーヤーと真っ向勝負をするのではなく、彼らと組んで、自分たちのユニークな強みを彼らに提供することにより、そのビジネスの果実の一部を得るという道も考えられます。
ここで大切なのが、こういった事業の買収や提携に踏み切るかどうかの決断に際して何を見るかです。この「視点」や「考えるべきポイント」を間違えると大きな失敗につながります。
やってしまいがちなのは事業買収・提携によってこちらが得られるメリットやリターンばかり考えてしまうということです。相手は当然こういったプラス面をアピールしてきますから、安易にそれに乗っかってしまうということが起こりがちです。
メリットやリターンを考えるのは「快楽」です。相手がいいことばっかり言っているということはわかっていながらも、それと引き換えに発生する対価の支払いという「痛み」をやわらげようと、「快楽」を自分の中で膨らませてしまう。
しかし、本当に目を向けるべきはその提携・買収から起こりうるデメリットやリスクの方です。こういった、起こり得る「痛み」から目を背けないことが非常に重要です。
これは前回のコラムでもお伝えした、「買う理由よりも買わない理由に目を向ける」という考え方と同じです。買収や提携に踏み切ることで起こりうるリスクを徹底的に洗い出し、それに対処する方法を見出すことができれば、結果的には買収・提携に踏み切るという意思決定に近づくわけです。
実際、私は過去に数百億円規模のアメリカの企業買収に携わりました。数週間のうちに相手からの膨大な資料を読み込む必要があったのですが、ここでやったことは、相手の主張の正当性を確認するだけではなく、「相手が何を言っていないか」を見いだすということでした。
相手が我々に伝えたくない、もしくは相手も気づいていない事業上のリスクを徹底的に洗い出し、そのリストを相手に渡してその対策を考えさせる。こうすることで、相手より上のポジションを取ることができ交渉を有利に進められただけでなく、実際の買収後の事業戦略の立案にも大いに役立ちました。
こういった事業の買収までいかなくても、ビジネスで手を組みましょうと持ちかけられることはあるでしょう。ここで相手にセールスピッチにそのまま乗っかり、最後は「あの人はいい人だから」「うちのことをすごく考えてくれているから」「断るのは悪いから」といった理由で決断してしまうとどうなるか。
デメリットやリスクから目を背けているために、それらに対する事前対処を打つことができず、結局失敗の確立を高めてしまうのです。そしてこういった場合にありがちなのが、その失敗を相手のせいにしたり、運のせいにしたりして片づけてしまうということです。しかしこれでは次につながる成長はありません。
安易に決断してしまう理由として言えることは、「リスクを想定する」「相手を疑う」「相手の言っていないことをみる」という発想に対してネガティブなイメージを自分の中で植えつけてしまっているということです。世間一般の常識に捉われている状態とも言えます。
また、相手が言っていないことや人が目を向けていないことを見抜くためには、高い視点と深い思考力が必要とされますから、その苦しさから逃げているとも言えるでしょう。
しかし、多面的な方向に視点を向けていくことはビジネスの発展に不可欠であり、誰もが見落としていることに気づけるかどうかが、競争から抜け出し大きく儲けるための秘訣であることは言うまでもありません。
儲かるビジネスを考える際も同様です。誰もがやっていることをやっても相手にされません。言わば当たり前のこの原則を自己都合で無視し、ごく普通の事業をやってしまって「儲からない」と嘆く経営者に多く会ってきました。
ここで選択は2つです。苦しくてもしっかり思考と向き合い、業界の盲点を見いだして、まだ誰もやっていないビジネスをつくるか、それとも考える苦しさを避け、よくあるビジネスを継続して儲からない苦しみに耐え続けるか。
前者を選ぶ経営者を当社は全力でご支援し、ユニークで儲かるビジネスの構築をお手伝いいたします。
常識の枠を外し、非常識な結果を追い求めていきましょう。
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