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専門コラム「指揮官の決断」 No.056 プロトコール後進国 ?

SPECIAL

クライシスマネジメント(想定外の危機への対応)コンサルタント

株式会社イージスクライシスマネジメント

代表取締役 

経営陣、指導者向けに、クライシスマネジメント(想定外の危機への対応)を指導する専門家。海上自衛隊において防衛政策の立案や司令部幕僚、部隊指揮官として部隊運用の実務に携わる。2011年海将補で退職。直後より、海上自衛隊が持つ「図上演習」などのノウハウの指導依頼を受け、民間企業における危機管理手法の研究に着手、イージスクライシスマネジメントシステムの体系化を行い、多くの企業に指導、提供している。

「おもてなし」というのは日本の得意芸であり、世界中の人々が感動する私たち日本人の美徳だと思っています。
 アメリカでもイギリスでも、それなりのホテルやレストランなどに行くと、思わず唸りたくなる心遣いがされていることに気付くことがありますが、日本の「おもてなし」はそれらに一歩も引けを取らないでしょう。

日本流の「おもてなし」は、欧米のそれと質は異なるように思います。相手が気が付かないように行うのを美徳としているようです。誰も気が付かないような細部にまで心遣いをしていながら、そんなことはしていませんよ、という風を装ってしまうのが日本のおもてなしには顕著であるように思うのですが、いかがでしょうか。

私が体系化したクライシスマネジメントシステムの重要な柱の一つに「プロトコール」が掲げられています。
 IT関係の方々にとってはプロトコールとはデータの受け渡しのフォーマットなどを連想させるかもしれませんが、元々は外交用語であり、儀礼、議定書などを表す言葉でした。

私が体系化したクライシスマネジメントにおいては、組織とそのステークホルダーとの関係の一切を示しています。つまり、組織と組織外の人々との接点に関わるものすべてをプロトコールの問題として捉えているのです。
 会社にお出でになる来客の接遇要領に始まり、諸外国の関係者、関係機関との関係をいかに作っていくかなど、その問題はおそろしく広範囲にわたりますが、それらを重要視しているのです。

何故かと言えば、どのような素晴らしい組織を作っても、その組織がステークホルダーの信頼を勝ち得なければ無力だからです。
 どのような優れた技術を持っていても、クライアントが信頼してくれなければ意味がないのです。
 信頼を勝ち取るのはおそろしく大変ですが、失うのはいとも簡単です。
 ちょっとした油断で、何十年もかけて築き上げてきた信頼はあっけなく崩壊することがあります。
 経営者はこの問題には誰よりも敏感でなければなりません。
 最近、次々にデータ偽装の問題が発覚しておりますが、それらは経営者が鈍感であったことを示しています。

私はこのようにプロトコールの問題を重視していますので、組織を見る時、まず、その観点から見てしまうことが多いのです。
 冒頭で日本の「おもてなし」は世界に冠たるものであると述べているのですが、ただ一点、どうしても看過できない問題があります。

「トイレ」です。

もちろん、日本のトイレの清潔さは超一流です。私は東京駅をよく利用するのですが、この東京駅の地下街にあるトイレなども非常に清潔で、ウォッシュレットなども装備されています。
 高速道路のトイレも同様です。海外で日本に住んだことのある方と話をすると、必ず言われるのがこの点です。真夜中に女性が一人で入っても恐ろしくないというのが評価されています。
 中国は北京オリンピックにより少し改善されたようですが、それでも私たちの感覚からすれば恐るべきレベルだそうですし、インドなどではまだトイレの設備の無い学校などが無数にあるそうです。
 そのような世界の事情と比べれば日本の公衆トイレには文句のつけようがないと思われるかもしれませんが、私にはどうしても看過できない問題があります。

それは清掃にあたる従業員の問題です。
 日本ではトイレの掃除はどうも女性の仕事と見做されているようなのですが、これが大問題であるということに私たち日本人は気付いていないのかもしれません。
 会社のトイレでもそうですが、駅や空港、そして高速道路など私たちがよく利用する公衆トイレの清掃職員はほとんど女性で占められています。

一昨年まで米国で現地法人の取締役として勤務しており、米国、カナダ、メキシコなどを飛び回っておりましたが、空港やハイウェーの男性用の公衆トイレで女性の清掃職員に会ったことはありません。
 私の商社マンとしての経験は北米に偏っていますので、世界中の事情に詳しいわけではありませんが、それでもこれまでに20数か国に足跡を残しています。その中で、男性用トイレで女性の掃除人に会った記憶はありません。

なぜ、私たち日本人はこれが異常な事態であるという認識が無いのでしょうか。
 多分、トイレの清掃を担当する人々を自分と同じ独立した人格を持った人間と認識していないからだと思います。そうでなければ、そこに異性がウロウロしていることに違和感を感じないわけがないからです。
 それは人権問題を惹起することに発展しかねません。
 「日本では女性蔑視の思想が残っており、トイレの掃除は女性の仕事ととされ、彼女たちに男性用トイレの掃除も強要している。」と世界から非難されることになると大変な問題となります。
 せっかく築き上げてきた「おもてなし」という日本のお家芸が台無しになってしまうでしょう。

プロトコールを重視するクライシスマネジメントの専門家としては到底看過することができないのです。
 多分、どこも人手不足に悩まされているので、男性のトイレ掃除のスタッフを採用するのは難しいのかもしれません。
 また、女性のきめ細かな作業が必要なのかもしれません。
 しかし、男性用トイレに女性職員を入れて平気でいるということは、その文化レベルを疑われても仕方ないでしょう。

経営者の皆様には早く気が付いて頂きたいと願っています。

 

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