衰退ビジネス再生の原理原則
お客様の話の中で、最近多く耳にするのが「衰退産業だから」という言葉です。「うちのビジネスは業界的にも衰退産業です。自社もその影響を受けていて・・・」という文脈で使われますが、「自社の業界は他と比べて衰退している」というお気持ちを隠されています。自分たちの業界だけ、という意識は、よく考えれてみれば不思議な考え方です。なぜなら数字的に予見すれば、急速に進む人口減の日本。国内マーケットにおいては、すべての産業が衰退化の運命にあります。どんなビジネスであっても衰退化対策を打たなければ市場活動を続けていくことができないのです。
そんな中、今朝の情報番組で「コンビニエンスストアの深夜営業無人化が試験的にスタート」というリポートを目にしました。仕組みはシンプルです。スマートフォンに専用アプリケーションをダウンロード。パッケージについているバーコードにスマートフォンをかざせば、スマートフォン上のカートに商品が入り決済するだけです。並ぶことも、お金を出し入れすることからも解放です。リポートを観て直感的に「これは浸透してゆくだろうな」と感じました。これが当たり前になれば、店舗スタッフの大幅削減で仕事の消失です。
仕事の消失は今に始まったことではなく、例えばメディアの変遷も同じです。メディアとは「媒体」であり、語源は「メディウム」霊媒師を意味します。本質は「伝える」ツールということです。遡れば、古来壁画による伝達手段から、パピリス、紙の誕生。14世紀グーテンベルグが活版印刷をイノベーションし印刷技術で大量生産、19世紀初頭にはタルボットがダゲレオタイプ(銀板写真)発表、記録の効率化。銀板写真館を営む父親を持つリュミエール兄弟が19世紀末にシネマトグラフを発表、動画の普及。20世紀、無声映画からトーキーになり、モノクロームからカラーフィルムとなり、やがてデジタル技術へと変転し、今ありとあらゆるものがインターネットにつながり、世界中で受発信できるようになりました。
見たい、知りたい、量産したい、早く伝えたい・・・そんな「欲望」や「願望」そして「夢」が進化を後押ししイノベーションを生み出し、その陰で縮小し衰退していくマーケットがあります。いつの世も、進化と人の欲望はワンセットです。
翻って、ご自身のビジネスにフォーカスしてください。いまやインターネットでの買い物やリアル店舗におけるスマートフォン端末での買い物スタイルが浸透していく。それによる未来はどうなるのか。自社ビジネスが「お客様の何を解消解決し、お客様にとってのどんな欲望を満たしているか」。この質問に対して、すぐに答えられますでしょうか。
このような変化の時代ですから足元をみるように「あなたの仕事は無くなります」「衰退していきます」ときてプロモーションに限ってみれば「これからは動画の時代」「インスタ映えする写真の撮り方を」等々ノウハウコンテンツ過多の傾向が強まっています。来年は平成から新しい時代へのバトンタッチ、さらに2020 年東京五輪によるインフラ整備で街も大きく様変わりしてゆくので、ますます精査されない情報で氾濫していくでしょう。どんな状況にあっても、自社ビジネスの衰退の根にある「変化の本質」は何か。そこをご自身の頭でしっかりと考えない限りどんなノウハウを積んでも宝の持ち腐れされとなります。研修やセミナーに時間とお金をかけることではなくて、注力すべきは自社ビジネスの深掘りです。
現代人はさまざまな欲望を満たすことができています。満たしたその先には何があるのでしょうか。新しい不満、とはどんなことでしょうか。人にとって、全てを満たしても手には入れられないものは何か。手に入れたいもの、なりたいもの、夢や憧れとは何でしょうか。シンプルではありますが、自身のビジネスがこれから生き残るかどうかは、お客様つまり人間を研究していくことです。まず自分を生活者として視点を戻して深掘りする。そこから身近な人へ、地域へ、お客様へとイマジネーションを膨らませてゆくことです。データや数字は補助的に活用するのことがコツです。
商品リニューアルの視点で考えれば、将来的にだれの欲求も満たさず、だれの夢や願望に寄与せず、不快や不満を解決しない商品サービスであるとすれば、そのビジネスは厳しいと考えてゆきます。しかし、まだ未知の世界で求めている人がいるかもしれない。その可能性に気がつくかどうか。この発見ができる環境が御社に整っていますでしょうか。
商品リニューアルコンサルティングは宣伝や販促を組み込んだマーケティング的手法の伝授と考えられているかもしれませんが、それらは道具の1つにすぎません。メーカー在籍時代、知識やノウハウは1割くらいで、ほとんどが生活者であるお客様のことをひたすら考える、日々お客様の頭の中に入って感じ考え、企画立案をし現場での実践していくことを生業としてきました。今に生きる生活者のつま先から頭の天辺まで、人に湧き起こる感情、欲望、意識、そして行動からの着想する戦略そのものです。
社長、刻々と日常が激変している時代です。
一番考えなくてはならないのは、業界衰退もろともといった悲観的観測ではなく、もっと奥にある自社の本質的観測です。商品サービスは、お客様にとって役に立てる「場」があるのか。その「場」は人間心理を根拠とするものなのか、自社都合ではないのか。厳しい現実を受け入れることができれば、あとは逆算していくことです。他社に追随することはとても勿体無いです。誰でもがやっていること、できること、自分を賭けてゆくような覚悟の必要がないライトな価値観でこの大変な変化を乗り越えることができるのか。自力で立ち上がり、独自性で勝負する時です。その再定義こそが商品リニューアル戦略の本質です。静かに深く自社の本質的価値を深掘りしていくことが求められています。
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