「売場を動かさないで 儲かりますか?」
「先生、ウチは重点商品を決めて1カ月間同じ商品をエンドに積んで、やってるんですが、変化しない売場って飽きられませんか?」
とあるチェーンの社長からのご相談です
―――誰が飽きるって言われてるのでしょうか?
「皆ですが、私もそう思ってます。」
―――ん?は?皆って 誰ですか?
「・・・・」
自社の売場に飽きてしまっては、商いはできません。だからと言って、チラシを入れて、猫の目のように、くるくると売場を移動させていたのでは、時間もお金もかかり、利益は増えません。
売場を動かすことが、売上になることと思っていることは、間違っていないにしても、それが儲かっているかどうかは別問題となります。
仮に、一カ月間儲かって売れる商品を一か所に決めて量を売るのと、目先を変える為に、一週間ごとに手を変え品を変え陳列するのとでは、どちらが儲かるかと言えば、間違いなく前者が儲かります。
先の社長は感覚的にお話しをされたようなのですが、実際に販売実績を調べその人時を差し引くと、十中八九売場を変えない方が儲かる結果がでてくるからです。
お客様に楽しんでいただくために、商品大量陳列やディスプレー、タイムセール、朝市や夕市といったパフォーマンスも、悪くはありませんが、それもすべてコストがかかってくることですから、本来であれは、そのコストを事前に用意しておかなくては、単に人件費を投入し続けるだけの、ハイコストオペレーションになるばかりです。
それを回避するには、まず標準の状態でも利益が出せる店舗のオペレーションにもっていくということにあります。
「それができないから困ってるんですよ!」という声が聞こえてきそうですが、
その為には、店舗状態の基準を決めることから始めなくてはならないのですが、これを作るためには、人時という概念を理解しなくてはならないということです。
人時といいますと、「コストカット」「リストラ」「人件費削減」といった一見ネガティブなことしか、思い浮かばないかもしれないのですが、全く違うということです。
人時を戦略的に活用するということは、利益を生まない作業についていた、人件費を利益を生み出す作業にリアルタイムで、置き換えていくということです。
もし、人件費を削りすぎて、利益を生む作業人時が不足していれば、当然投入しなくてはならないのですが、そういったことが店舗で、売場主任クラスにも活用できる環境を経営が指導しているか?ということです。
これを、実践されている企業の店舗は、従業員は笑顔ですし、作業スピードが速く、ムダがありません。ムダというのは、作業のムダと思われがちですが、実はお客様にムダをさせない。ということがその先にあります。
例えば、品切れを無くすということは、お客様が商品を探す時間を節約するということにつながりますし、レジのスピードや正確さということは、お待たせしないレジでこれまたお客様の時間の節約に貢献します。
清潔感ある店ということは、ここで買えば安心ということで他の店やネットで探さなくても済むので、ここでもお客様に時間を節約することになります。
一方で、チラシやイベントに人員をかけて集客しても、今晩作ろうとしていたメニュー食材が、一品切れていたら、メニュー変更のために全てを買い替えなければなりません。
また、日替わりチラシ超目玉を買いに来たお客でごったがえし、混雑したレジでは待たなければなりません。お手洗いを使おうとしたら汚れていて我慢しなければならなかった。ということをお客様に一度でも経験させてしまったら、普通のことではありますが、この店舗はこの時点でビハインドにいるということです。
この事態を重く見て、異常事態だと感じ、その対策としてそれを定期的にトラッキングすることにコストをかけている企業であれば、必然的にこういった項目が重要項目であることを認識できますから、標準時の店舗コンディションが上がり、それがための標準作業が確定され、改善に繋がります。
お客様の立場からみれば、こういった言葉になるのかもしれませんが、小売り側はそれを満足感に変え、再び来店してお金を投じてくれるまでの、導線を敷いておくことが目的です。
そういった儲かるための導線計画が無いために、飽きるとか、みんなとか、といった曖昧な「言葉」がでるのであって、これではビジネスは成り立たないわけです。
利益を稼ぐ商品がどれで、そういった商品が品切れしていないか、品切れの要因分析ができてその改善できているか?わかりやすく買いやすくなっているか、レジの間違えがないか?といったことも、投資ひとつで、実に簡単に評価結果がでるものもあるくらいです。
○○フェアーや日替わり商品の連続といった、エンドの積み方、演出の仕方を変えることも大事かもしれませんが、それによって、稼ぐ商品が品切れしていたり、レジでお待たせすることがあれば、本末転倒といえます。
お客様の心をつかむのは、難しいことですが、稼ぐということに、飽きないようにするために、売場を動かすのではなく、かけるコストを動かすのは、経営者の意志一つでできます。
それを、顧客目線だ、販促強化チラシだといって、モノや体を動かすことが、変わるコトと思ったら増えるはずのお金も、借金しか残らない状態、となるのは火を見るより明らかです。
ネット通販で、クリックひとつでモノが自宅に届く時代に、売場を時間をかけて日々変えることにもはや意味はなく、むしろ365日同じところに、鮮度ある商品がきちんと並んでいる方が、飽きられず、安心な店舗と評価されるのは当然のことと言えます。
先のチェーンにもし ひとこと アドバイスするとすれば、固定化された人件費を見直し、儲けを最大化させる、コスト移動計画を立案することと言えるでしょう。
ビハインドからの出発になりますが、まだ間に合います。
さあ、来年度予算を昨年並みの「現状維持」にコストを使いますか?
それとも大きく「成長変化」させるコスト移動の戦略をとりますか?
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