社長が考えるべき新しい視点の自社アピール方法―古くて新しい経営者が行なう情報発信―
世の中に「士業」というものがあります。よくご存知の弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、行政書士といった職業です。一方「師業」というものもあります。医師、歯科医師、教師、調理師、美容師と言った職業です。実は普通「師業」の方は使いません。もっぱら使われているのは「士業」の方です。
それはともかく、どちらも「し」がつくことに変わりはないのですが、この二つにはいくつかの共通点があります。それはこれらの職業が入口のところで国家資格が必要ということです。いずれも資格試験に受からなければ、この職業に就くことはできません。
その他にもいろいろ共通点、相違点あるのですが、仕事を始めてからの共通点が幾つかあるのです。
それはどちらも、一般の企業が普通に行なっている営業活動や販売促進、広告宣伝というものをあまりやっていない、という点です。
これらの「士業」或いは「師業」の人たちが、熱心に営業や宣伝に取り組んでいるというのはあまり聞かない話なのです。
その根本的な要因の一つに「あらかじめ規定された資格」なので「宣伝などしても仕方がないだろう。」という思いがあるのではないでしょうか。
「何をやる仕事なのか。」は、既に世間には知られているのだから、広告宣伝と言っても特に知らせることもないのではないか、という思いが根本にあるのだと思います。
特に、税理士、弁護士、医師などというのは世間的にはかなり知られた職業なので、長い間広告であるとか自身をアピールしていくとかとは無縁の世界でした。
しかし近年、弁護士も医師もマスメディアなどを使って、派手に広告宣伝を打つ人や法人なども出てきました。特に弁護士、司法書士といった資格は「過払い金返還請求」という、願ってもないビジネスモデルを得て鼻息が荒いようです。医師や歯科医師も「美容」という、これまであまりアピールしてこなかった切り口で広告宣伝に向き合う人が増えてきています。
この人たちは、同じ資格で仕事をしていても、その中身はかなり異なっているので、その違いをはっきりとアピールした方がわかりやすいのだ、ということに気がついたようです。
また、弁護士の「過払い金返還請求」にしても、相談の気軽さ手続きの簡便さをうたい文句にして、彼らの持つ堅苦しさ敷居の高さを払拭しようとしています。いずれも、これまでその利用者に伝わっていなかった情報を届けることによって、新しい境地を開拓しているのです。
さて、ここまで「士業」或いは「師業」をサンプルにして、いろいろと語ってきましたが、私が言いたいのは、似たようなところが一般企業にもあるのではないか、ということなのです。つまり、彼らが「与えられた資格で仕事をしているのだから、広告や宣伝などしなくても世間はわかっているはずだ。」という思い込み、或いは自己規定は他の企業にも当てはまるのではないかと思うのです。
「私が○○屋ということはみんな知っているはずだ。」とか「私は○○屋なのだから世間の人はみな○○屋としか思っていないに違いない。」と、ほとんどの経営者は思い込んでいるのではないでしょうか。なるほど、極めて狭い範囲であればそれはその通りです。
ただし、人口減少が進む現在、その共通認識が通じている範囲ではビジネスの成立が厳しくなってきていることも事実です。これまでよりビジネスの守備範囲(商圏)を広くとればとるほど、みんなが知っているはずだ、という共通認識は薄くなっていきます。またその範囲内の人であっても御社の仕事を本当に理解しているのかどうかはわかりません。新しい情報の提供を行なえば、これまでの顧客も変わってくる(新しい受注に繫がる)可能性があるのです。
「私が○○屋ということはみんな知っているはずだ。」という前提を一度捨ててみて下さい。
もう少し正確に言えば「みんなが俺のことをよく知っているはずだ。」という前提を一度白紙に戻すということをしてみて下さい。自分の存在や専門性をよく知らない人に、自分のことを正確に伝えるというのは簡単なようで案外難しいものです。
今回サンプルとして紹介した「士業」や「師業」の人たちは、こちらのことをなんとなく知っているはずの顧客候補達に、どうやって自分の専門性や得意分野を伝えていいのかわからずに四苦八苦しているのです。また、資格業である彼らには、多少業界の監視や自主規制があるので、その分伝え方にも制限がありやや窮屈になります。その点、一般企業であれば、思いっきり自分なりの広告を打つことが可能です。
そんな中でも、私がお勧めしている社長自らが行なう「自社ストーリーの情報発信」はかなりユニークです。
広告宣伝とくくることさえ少し違和感があるくらいこれまでの情報発信と趣を異にしています。
もちろん情報発信の中身も大切ですが、情報発信すること自体がユニークですので、その効果は大きいと言えます。
例え長年やって来た商売であっても「みんなが知っている。」という前提を捨てて、情報発信を心がけてみて下さい。
新しい世界が広がるはずです。
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