多くの企業ができていない「御社を選ぶ理由」の言語化
「創業○十年。長年の実績が当社の強みです。」
このように、自社の強みとして「長年の実績」を挙げる企業は多いです。起業して8割以上の会社が5年で倒産するというデータもあるぐらいですから、何十年も事業を続けられているということは確かに素晴しいことです。
しかし、それが「自社の強み」としてアピールし得るものでしょうか。言い方を変えると、長年の実績が見込み客にとって「わざわざ御社を選ぶ理由」になるかどうか。
結論から言うと、単に「長年の実績」をアピールしただけでは、見込み客にとっては「御社を選ぶ理由」ではなく「選ばない理由」になり得ます。
大量生産、大量消費、イケイケどんどんの時代は、数多くの「似たような会社」が共存できました。需要が旺盛で、しかも求められていることが画一的であったためです。この時代の競争の源泉はオペレーショナル・エクセレンス(Operational excellence)、つまり業務プロセスがしっかりできていることが求められました。当たり前のことをミスなくきちんとできることに価値があったわけです。
この時代には「長年の実績」は価値あるものとみなされたでしょう。長く続いているということはお客様の期待を裏切らず、きっちり仕事をしている証とも言えますから。
しかし、そんな「大きな物語の時代」は幕を閉じました。情報化と多様化が進み、マスマーケティングが死を迎えた今は「小さな物語の時代」。モノは溢れ情報はとめどなく流れ込み、もはや普通のことをしても買い手の興味を惹くことはできません。
そうです。いま求められていることはお客様の期待を裏切ることです。今までにない新しい切り口の商品やサービスが求められています。そうでないと、もう「間に合っている」のです。
これをあっさりやってしまうのが異業種からの新規参入組です。彼らは業界の常識にしばられるどころか、それを壊すパワーをもっています。
もし、以下のように新規参入プレーヤーが打ち出してきたらどうでしょうか。
「この業界ではお客様が○○といった不便を強いられています。これは業界の怠慢です。これを変えるために当社は⬜︎⬜︎という今までになかったサービスを立ち上げました。これによりお客様は以下のようなメリットを得ることができます。もう今までの苦労は必要ないのです。」
このように打ち出されてしまうと、「長年の実績」というのは強みどころか、極端に言うと「悪の象徴」のように捉えられてしまうでしょう。
一番問題なことは、「当社の強みはこの業界で長くやっていることだ」と自分で思ってしまっている企業にイノベーションは起こせないということです。業界の慣習、これまでの自社のイメージ、常連客の声、、、こういったことが気になって新しいものを生み出せない。つまり「過去」を守ろうとしているということです。
言わずもがなですが、いまや過去の延長線上で戦っていける時代ではありません。イノベーションを起こすには「過去」を捨て、「あたりまえ」を疑い、自己否定と向き合っていくことが求められます。
かつて「自民党をぶっ壊す」と叫んで大勝した小泉氏ではないですが、この自己否定と向き合う姿勢がリーダーシップを示し、多くの支持を集めるのです。
繰り返しになりますが、企業が長く続いているということ自体は大変立派なことです。しかし、長く続いていることは「結果」であって、そのこと自体は今後も選ばれるための「強み」とはなりません。
もちろん、長く続けてきたからこそ見えていることや、できることもあるはずです。活かせるものは活かし、捨てるものは捨て、自社の強みをしっかり形にし、それを相手に伝わるように言語化することが重要です。
独りよがりの強みではなく、買い手が納得できる「わざわざ御社を選ぶ理由」の言語化にしっかり向き合っていきましょう。
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