「希望」をもつために社長が向き合うべきもの
「いまの日本には何でもある。ないのは希望だけだ」と小池さんが唱えて立ち上げた「希望の党」は選挙前から勢いが失速し、「絶望の党」などと揶揄されましたが、果たして小池さんのこの冒頭の発言は、現状を正しく言い表しているでしょうか。
そもそも、希望があるというのはどういう状態をいうのか、段階で表してみました。
第1段階: 現状を変える決意ができている
第2段階: 現状よりよくなる可能性が見えている
第3段階: ゴール(あるべき姿)が見えている
第4段階: ゴールを達成する手段が見えている
第5段階: その達成手段の実行に着手できている
このいずれかの段階に進めていれば「希望がある状態」と言えます。そして我々コンサルタントは、ご自身の決意でしっかり第1段階に立たれた経営者が第2、第3とこの段階を進んでいくご支援をしていると言えます。
つまり、第1段階に立とうしない人をお助けすることは難しいわけです。
では、この第1段階にすら立てていない、つまり希望を持てていない人はどういう状態にあるのか。実はこの5段階のベースとなる第0段階というべきものがあります。それは、現状を直視し、「絶望する」という段階です。
そして、希望を持てていない人というのは、実は「絶望できていない人」なんです。
希望と絶望は表裏一体です。絶望があるからこそ希望が持てる。いまの自分の置かれている状況に絶望するからこそ、これを変えていこうと立ち向かい行動していく原動力を得ることができるのです。
だから、小池新党は「絶望の党」でもいいわけです。
実際、成功者と言われている人は、常に絶望と希望を併せもっています。
例えばイチロー選手はシーズンの成績が良かろうと悪かろうと、シーズンが終わるとスイング改造に取り組むと言います。現状に浮かれることなく、自己否定と向き合いさらなる高みを目指していく。
ビジネスの例でも多々ありますが、例えば昨年とある経営者の会の企業訪問で伺った武蔵境自動車。激戦区の東京、中央線・西武新宿沿線で19年連続生徒数No.1、ユニークなサービスで顧客満足度が非常に高い会社ですが、会長曰く「この業界はもってあと10年。だからおかげさまで業績がいい今のうちに新規事業の種を仕込んでいる」と。
さらにコメントはこう続きました。
「我々はいいですよ。あと10年で駄目ということは、逆に言えばあと10年の猶予があるからいろいろ仕込むことができる。皆さんの業界は10年持たないかもしれませんよ」と。
言葉はきついですが確かにその通りで、この変化が目まぐるしい時代に、現状のまま5年も10年もやっていけると思う方がおかしいということです。
「現状はまあそこそこ回っているし、来年、再来年ぐらいは売上も読めるし、もうちょっと厳しくなったら考えよう。」このように考える社長も少なくないですが、この状態に長く浸るとゆでガエルになってしまい、いざというときにはもう飛び上がることはできなくなります。
数年前にとある自動車関連企業の幹部ミーティングに同席したことがあります。その席で経営幹部が「そもそも自動運転なんて俺らが定年まで実現しないだろー。あはははー。」そして一同も「あはははー。」
私には彼らが温泉につかっているカエルにしか見えませんでした。
大企業の経営者はだいたいこんな感じです。自分の代のことしか考えていないからイノベーションは起きないし不正もなくならない。業績が悪くなれば社員を大量解雇すればいい。
しかし、中小企業の社長はそうはいきません。自分の代で向こう10年の策を仕掛けていく必要があるのです。そのためにも現状を否定し、絶望し、そして現状を変える決意をすることが求められています。
「だから、絶望せよ。心を尽くして、思いを尽くして」
これは哲学者キルケゴールの言葉です。
絶望があるからこそ希望があります。ゆでガエルは希望を持つことなどできません。将来茹で上がる絶望を選ぶのではなく、社員とその家族のためにもいま絶望と向き合い、「力への意志」を持って未来を変えていきましょう。
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