社長の我慢と本気度が試される 真の「職場改革」
メンタルヘルスにこれまで熱心に取り組んでこられた人事の方のご発言です。
「これまでは、メンタルヘルス不調者とその予備軍への対策にのみ力を注いできました。一人でも不調者を出さないよう、復職は100%成功させることばかりに気を取られていましたが、業績を伸ばすためには全社員が自身の能力を100%発揮できるような環境づくりが最も必要なんだと理解できました。」
ストレスチェック義務化後は特にそうです。メンタルヘルス対策については、不調者をなくそう、復職を成功させようと、どうしてもマイナスの状態をゼロに戻すという発想になりがちです。つまり、不調になる前の状態にすることがゴールというわけです。
ですが、それでは業績が伸びる職場環境改善とは言えません。マイナスの状態をゼロに戻すでは足りないのです。よりプラスの方向にもっていくという視点が必須なのです。
そのためには、まず、所謂「メンタルヘルス対策」と「職場環境改善」の違いを知り、明確なゴールを持っていなければなりません。どちらも必要であるのですが、当社ではメンタルヘルス対策だけを一所懸命行ったとしても、メンタルヘルスの徹底予防にはなり得ないと考えています。
明確なゴールというのは、言うまでもなく「社員がイキイキ仕事に熱中して業績が伸びる職場づくり」を行うということです。これは言い換えれば、「働きがいのある職場づくり」でもあります。そして、この職場づくりの実現には、トップマネジメントの強いコミットメントが何より重要なのです。
人事や総務の実務担当者にすべてを任せていてはいけないのです。トップが自ら、どのような会社にするのか、どのような職場にするのかを自らの言葉で説明し、何が何でも実現するという強い意志を社員に伝えなければならないのです。
というのも、一口に「社員がイキイキ仕事に熱中し業績を伸ばす職場」といっても、個々の社員がイメージするものはそれぞれ異なります。そのため、自社の目指すゴールが、いったいどんな職場で、何のために行うのか、そして職場環境を改善することで何を目指すのかが、明文化され共有されていなければなりません。
職場改革を行うにあたり、その手順というのがとても大切になります。これを間違えると大変なことになります。社員の中に変化に対する「抵抗感」「不信感」が生れてしまったら、それを払拭することから始めなければならなくなるからです。
そのため、トップマネジメントが強い意志と熱意をもって職場環境改善を行うことを社員に広く伝えることが最初のステップとなります。そして、社内の様々な機会や媒体を使って、何度も伝える必要があります。
たとえば全社的な会議で必ずアジェンダとして取り上げるとか、イントラネットなどで、常に目に付くように頻繁に情報公開を行うとか。長々と説明するより、スローガンのようなものを作れば、よりわかりやすく、社員に伝わりやすくなるでしょう。
このような社内啓発は決して手を抜いてはいけません。そして、社長が自らの言葉で語る必要があります。そうでないと、せっかくの新しい取り組みが正しく理解され、社内に根付くことはまず不可能だからです。
そしてもう一つ重要なことは、数か月や1年ほどの短期間で根付くことは難しいということを認識することです。まずは土を耕し、種まきをし、と花が咲くまでの土台づくりが必要となります。そのため、導入当初は我慢の連続です。抵抗勢力に対する対応の連続となります。が、一旦土台づくりが成功すると、社員自らが職場改革に積極的に取り組むというあるべき姿に到達することも可能になるのです。
「○○改革」「○○改善」など聞こえの良い言葉に踊らされ、思いつきで行っているのではないという自社の本気を示さなければ成功しないのです。
御社では職場環境改善が担当者任せになっていませんか。
トップのコミットメントと明確なゴールを社員に正しく伝えていますか。
職場改革を成功させるという本気度を示していますか。
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