成長等級と役職が一致しない理由
中小企業と大手企業では、人事制度の内容が大きく変わります。
大手企業も最初は中小企業でしたが、発生する問題を徐々に解決することで人事制度の内容が変わっていきます。そして、現在の大手企業の人事制度の内容になったのです。
たとえば中小企業の経営者の大きな悩みである
- 「なかなか人が定着しない」
- 「なかなか人が成長しない」
- 「なかなか優秀な人が採用できない」
この3つの悩みが、規模が大きくなるにしたがって問題とならなくなる場合があります。
その中小企業と大手企業の人事制度の違いに次の1つがあります。現在1000人の社員がいる企業であれば、社員は一般職層、中堅職層、管理職層と成長しています。創業50年ともなれば、このすべての階層に、そしてすべての成長等級に社員が成長しています。
もちろん最上等級の9等級にも社員は成長していることでしょう。そのため、仮に部長を任命するとなれば、9等級の社員を任命することになります。
一方、中小企業で仮に10人の社員のいる規模であれば、まだまだ管理職層である7、8、9等級まで成長している社員はいないでしょう。ところが、管理職層まで社員が成長していないのに部長がいます。それは社員が成長したからという理由でその役職に任命しているのではなく、対外的な理由で部長に任命せざるを得ないからです。
場合によっては、中堅職層の一番最初の成長等級である4等級の社員を部長に任命しているケースすらあります。これは、その社員の成長に合わせてその役職を与えているのではなく、対外的な理由で役職に任命しているからです。
このことに気がついてもらう必要があります。
それは、この部長は4等級で部長だということです。まだまだ人を育てることはできていません。これから10年以上かけて人を育てることが上手になっていくでしょう。
そのことを本人に知ってもらわないと、「自分は、役職は部長だからもう社長にいろいろ指導される必要はない。部長に任命したのは社長なのだから」
という大きな錯覚をしてしまいます。そのためこの部長職の社員はまだまだ人を育てることができないと評価している社長の指導を受け入れることができず、腹を立てて辞めてしまうことすらあります。
中小企業では、このように成長等級と役職が一致しないケースが多々あります。それを明確にして、社員に教える必要があります。
成長等級は社員の成長を示すことであり、成長給を決めるときの大きな要素となります。それと役職はまったく連動していないということ、この事実を理解したうえで、人事制度を可視化する必要があります。
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