生産性を上げるための原理原則
経営者の皆さんは“生産性”という言葉をよく使われると思います。
また、よく聞かれるのではないでしょうか?
生産性は高いに越したことはありませんが、生産性が高いとはどのような状態かご存知でしょうか?
ちなみに、生産性という言葉はさまざまな意味を持っています。
広義では、生産性とはどれだけの投入量で、どれだけの産出量(価値)を生み出したか、という意味で使われます。
単位もさまざまで、人や時間などいろんな視点から幅広く分析していきます。
式にすると、
生産性=産出量÷投入量
となります。
しかしこれだと漠然としすぎていますので、店舗ビジネスではそこからさらに絞り込んで、労働生産性、すなわち従業員一人当たりの付加価値額で見ていく方がよりリアルに現状を把握でき、業務の改善や改革などに使えます。
式にすると、
労働生産性=付加価値÷従業員数(または労働量)
となります。
付加価値は基本的には粗利と考えて問題ありません。
従業員数はそのまま従業員の数を使います。
店舗ビジネスの核である、飲食サービス業の労働生産性の年間平均値は一人当たり299万円(2016年中小企業白書)となっています。
これはどういうことかというと、一人当たりの粗利が299万円ということは、従業員の年間給与は一人当たり299万円以上になることはないということです。
それどころか、粗利から家賃や光熱費などさまざまな経費を引くと、さらに厳しい数字になります。
給与月額で20万を超えることも難しいということです。
もちろんこの従業員数の中にはアルバイトやパートの人も入っており、正社員になるともっと額は上がるでしょう。
ですが、この数字は他業種との比較でも圧倒的に低い数字となっているのです。
経営者の皆さんはこの状況をどう見るでしょうか。
「飲食サービス業はこれが当たり前で、もうどうしようもない状況だ」
「ウチは精一杯やっている」
「従業員のことだから、自分には関係ない」
と思ってしまうとかなりまずい状況になります。
飲食サービス業は他業種と比べ、労働集約的であり、従業員に肉体的、精神的負担がかかりやすい業種です。
それだけでも働き先として敬遠されやすい中、その労働に見合わない安い給与だと人材難になるのは明白です。
給与を上げたくても上げられない、という状況もあるかもしれません。
しかし、もうそういうことを言っている余裕は無いと思ったほうがいいですね。
生産性を上げることは、従業員の待遇を改善することを実現可能にします。
生産性を上げるには、付加価値額を上げるか、従業員数(または働く時間)を少なくするか、その両方を実行することが必要です。
こういうとだいたい人や時間を減らす方向に行く会社が多くなります。
一人ができる業務の幅を増やし、より早く、より多くできるように訓練することで最低人員の運営を実現する。
これで労働生産性の一つである人時売上高や人時生産性は上がりますが、一定のレベルまで来ると効果は薄れます。
従業員に対しても負担が非常に大きくなり、健康をはじめとしたさまざまなリスク増大し、離職にもつながります。
この最たる事例は、某牛丼専門チェーン店で発覚した「ワンオペ」ですね。
従業員一人ですべての店舗運営をおこなうことです。
生産性向上のために、ムダを削減することは必要ですが、さすがにここまでするのは論外です。
私が考える生産性向上の肝は、付加価値額を上げること、すなわち粗利益率、および額を上げることです。
作業のスピードや効率を追求してもたかが知れています。
また、人を減らしすぎるとサービスレベルは低下し、当然顧客満足度も低下し、間違いなく競争力が落ちます。
経営者の皆さんも、生産性を上げる時にまず考えるべきは“減らす”ことよりも“増やす”ことです。
つまりどこまで価値を価格に乗せることができるか、ということです。
ただ、何の価値も無いのに、価格だけを上げても誰からも納得されず、売れもしないでしょう。
価格に転化できるような価値をつくるためには、まず価値の要素を知らなければなりません。
価値には
- 有用性
- 希少性
- 即時性
の3要素があります。
次週、深く掘り下げていきたいと思います。
これは非常に重要な考え方です。
ぜひ皆さんもこの3要素がどういうことなのか、ご自身で答えを考えてみてください。
色々な発見がありますよ。
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