国産食材へのシフトと多店舗展開
外食の食材及び小売店の店頭で国産品が非常に存在感を強めているようです。
外食各社もこぞって国産、国内産をアピールしてきています。このような状況の中
消費者はどう思っているのでしょうか。またどこに向かおうとしているのでしょうか。
多店舗化を目指す経営者はこの流れをしっかりと掴み、その対応を前提としたコンセプトの組み立てが求められます。ここを間違えるとお客様から支持を得られないことになります。それがブランドイメージになるわけです。「コストだけに目が行き、このくらい大丈夫」が命取りになるケースは多く見受けられます。
大手外食各社が現在国産原材料をアピールすることの意味をしっかりと捉えたいと思います。
昨年末から円安傾向で輸入食材が値上がり傾向にあり、国産価格競争力が相対的に高まったため。各社、国産食材は鮮度を保ちやすいという強みと、安全性を消費者に訴えやすいという理由から使用を増やす傾向にあります。消費者の食の安全を重視する意識の広がりが後押しをしているようです。
ある消費者調査によると外食するときに食材が国産かどうか気にかけている人の割合は、2013年1月は27.1%、2015年1月は39.1%と2年前に比べて12ポイント上昇しています。国産食材へのニーズは高まっているようです。
日本政策金融公庫の一月調査で、国産が安全と答えた消費者は68.3%、輸入食品は2.7%。割高でも国産品を選ぶと答えた消費者は12年7月の調査では51.2%と過去最低であったがこの1月は54.4%に上昇した。東日本大震災で低下した安全性に対する国産品のイメージ回復を思わせる内容になっています。
この消費者の変化が、外食大手が国産原料へシフトする大きな要因と成っていることがわかります。
大手パンメーカーでも国産小麦を使った小麦粉の調達が前年の10倍となり、パン用としては北米産がほとんどであったが、国内産小麦の増産にも繋がりそうです。
そば粉も国産粉の使用が大幅に増えていくようです、ファミリーマートが国産そば粉を使用またサガミチェーンも国産を使い始めています。
鶏肉に関しても円安の影響で輸入の9割を占めるブラジル産も値上がりし、解凍して使うブラジル産より国内産の方が消費者の反応が良いと中堅スーパーなどは答えています。
しかし、物によっては品質面でも国産優位とは限らない輸入の白身魚、カニを原料に使うマルハニチロなどは国産原料に切り替えてない。「円安で原価は上がったものの品質が原料として適しているから」と答えています。当然安全を担保できれば原料としてベストな方を選ぶということです。
そんな中3月31日、今後10年の農業政策の方向性を示す「食料、農業、農村基本計画」を閣議決定した。今現在の自給率(カロリーベース)39%を50%に引き上げる計画でしたが45%に引き下げた。これは米粉、大豆など無理な計画で行き詰まったためのようです。
国産品の生産拡大に偏った路線を修正し高付加価値品の育成に力を入れることとしています。
兼業コメ農家への一律の補助金で米粉の増産を促す考えだったことの失敗です。
しかし、この流れは国の自給率を上げるということは、少なくとも国内産の比率を上げていく動きであることは間違いありません。こんなときに国内産の信頼を壊すようなことの無いように注意をしたいものです。
輸入品の安全への信頼が回復するのには時間がかかりそうです。今後円安が修正されれば、国産品の優位性は失われる可能性があるが、デフレ脱却がすすみ、消費意欲が高まれば、国産原料の食材の使用を一段と増やす動きが強まりそうです。
多店舗展開を目指すフードビジネスの経営者は消費者の意識の変化、国の政策の方向性から全体の流れを掴み、この全体の動きの中で、割高になるフードコストを前提にした組み立てが求められます。
お客様の安全、安心への信頼を基盤とした魅力ある店舗作りが必要です。
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