多くの経営者が間違った節税対策をしてしまう理由
ダイヤモンド財務®社長は、大局的・論理的な意思決定をする。
ガラス財務社長は、局所的・感情的な意思決定をする。
「舘野さん、私は自分で言うのもなんだけど、結構、節税対策には詳しい方なんですよ。今年の決算対策も、中古のベンツを買って税金を減らしましたからね。ウチの顧問税理士も税金なんか払ったってしょうがないって言ってますし、税金払うぐらいだったら、欲しいもの買った方がマシでしょ。」先日、あるパーティーでご一緒した30代のオーナー社長さんの一言です。
あまりにも得意気に、嬉々とした表情で仰っていたので、ビックリして、一瞬言葉を失ってしまったのですが、逆に、お節介ながら「この社長さん、この先大丈夫かな~?」と心配になったりもしました。
私の関与先から同じような相談があったとしたら、絶対にそんな間違った節税対策をオススメすることは、ありません。なぜなら、他にもっとお金が残る節税対策があるからです。この社長さんがいっている節税対策は、お金を残すという視点から見れば、「百害あって一利なし」という経営判断なのです。
残念ながら、きっとこの社長さんも、そして、それをオススメした顧問税理士さんも、この節税対策が「間違った節税対策」であるということに、今はまだ気が付いていないのだと思います。
さらにいうと、世の中で謳われている節税対策というものは、全てがすべて正しい節税対策ではなく、正しい知識を持ったうえで取り組まないと税金以上にお金がドンドン目減りしていってしまう事態に陥ってしまうことだってあるのです。
では、なぜそんな間違った節税対策をオススメしてしまう専門家が世の中に存在しているのでしょうか?理由は簡単で、その専門家の仕事の目線が「過去」にある場合は、「未来」に対する質問に対する答えが、そもそもないからです。
本来なら、会社の将来を見据えて、未来に向けてお金がしっかり増えて残り続けるためにどうしたら良いのか?という視点で節税対策も考えていかなければなりません。仕事の目線が「未来」にある専門家は、当然のようにそういった視点でアドバイスをします。
ですが、仕事の目線が「過去」にある専門家は、とにかく税金を減らすことだけを考えます。
そうなると、結果として「社長が喜ぶことを提案すればよい」という風に考えるようになるわけです。社長としても、「顧問税理士に言われたから、節税対策として〇〇を買った」という大義名分ができますし、一見するとなんだかカシコイお金の使い方のように見えます。
ですが、お金を残すという視点からすれば、むしろ逆で、「税金を減らす」以上に、「お金を減らす」という行為に過ぎないのです。
例えば、利益が1,000万円、現預金が1,000万円の会社が節税対策として600万円の中古車(耐用年数3年・定額法償却と仮定)を購入したとします。
税率が仮に30%としたら、
税金は、800万円(1,000万円-減価償却費200万円)×30%=240万円
現預金は、1,000万円-車600万円-税金240万円=160万円 となります。
もしも、間違った節税対策をしていなければ、
税金は、1,000万円×30%=300万円
現預金は、1,000万円-税金300万円=700万円 となります。
つまり、今期において実際に節税効果があったのは、60万円(300万円-240万円)のみであり、現預金の減少は、540万円(700万円-160万円)にものぼるのです。
お金を残すという視点で考えれば、無駄な費用が増え、資金が流出し、さらにはお金を生み出さない資産が増えてしまっているのです。車は、当然貸借対照表上にも計上されますから、腕のいい銀行員だったら、融資審査の際、「この社長は、もしかしたら浪費家なのでは?」と警戒をもするでしょう。
もっというと、社員からしてみれば、「そんなモノ買うより、自分たちの給与やボーナスを増やしてよ」というのが本音でしょう。場合によっては、社員の一斉退職や競合会社の設立など、このような安易な節税対策が社員の不満の引き金になることだってあるのです。
後々「しまった!」と思っても、その時は既に時遅し、もう後の祭りなのです。
会社経営において、将来に向かっての明確な経営計画があれば、何の収益も生まないところに600万円を使うよりも、もっと生きたお金の使い方を考えるはずです。
「人材教育のための投資」だったり、「販路拡大のための販促費」だったり、経営効率向上のための「戦略的システムの導入」など、投資すべきものはもっと他にあるはずです。どうせ資産を買うのであれば、その資産そのものがお金を生み出すいわば「金のタマゴ」でなければ、ならないのです。
特に中小企業は、大企業と違って経営資源が限られています。だからこそ、自社が目指すべき「未来」から逆算して、最短距離で、最適なタイミングで戦略的に動かなければ、お金はあっという間に底を尽いてしまいます。
間違った節税対策しかり、間違った設備投資、資金調達、資本政策・・・。
世の中にまことしやかに流布されている情報が沢山ある中で、どれを自社に取り入れるのかは、当然ながら経営者自身の審美眼を磨く努力が必要になってきます。だからこそ、上手くいっている経営者ほど、その審美眼を磨く時間を短縮するために、洗練されたノウハウや知識を買うという発想を持つのです。
成功している経営者ほど、利益が10億円、100億円あったとしても、お金がなければ会社はつぶれてしまう「黒字倒産」のワナがあるということを良く理解しています。事業永続のために、密かに正しい経営判断を下すための「経営のモノサシ」をつくって、将来にわたってお金が残る仕組みづくりをした上で経営の舵取りをしているものなのです。
あなたの会社には、正しい経営判断を下すための「経営のモノサシ」がありますか?
社長と会社にお金が残り続ける仕組みがありますか?
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