社長が決断できない本当の理由とは?
複数の事業があれば、当然、それぞれでの稼ぎ方は変わってきますから、結果的に手元に残るお金の残り方が異なってくるものです。
例えば、わかりやすい身近な例で説明すると、ある会社が、賃貸用のマンションを建設する事業と、自社で建設した賃貸用マンションの賃貸管理をするという2つの事業を行っていたとします。建築事業、つまり、マンションを建てるには、平均6ヶ月かかるとしたら、工事が終わるまで、工事にかかった材料や人件費などは、未成工事支出金として、会社側が一時的に立て替え払いをするような形になります。
もちろん契約内容によっては、工事着手前の着手金や中間金などもありますが、すべて入金されるのは、工事がすべて終わった段階になりますので、それまでの運転資金をちゃんと確保しておかないと資金繰りが行き詰まってしまいます。ただし、工事さえ無事終われば、まとまった金額の資金がドーンと入金されます。したがって、建築事業の場合は、資金の多寡の波が激しいのが特徴です。
その一方で、管理事業は、管理スタッフの人件費は必要になるものの、基本的に小資金で運営することができます。毎月のコストもほぼ定額で、売上も家賃収入の5%など、ほぼ定額です。したがって、建築工事と比べれば1件あたりの金額は少ないものの、将来の見通しが立てやすく、キャッシュフローも安定しやすいのが特徴です。
このように、どんな会社であっても、複数の事業が絡み合って最終的な「利益」を稼ぎ出し、「お金」が動いているものなのです。「建築事業」と「管理事業」のようにわかりやすいものであれば良いのですが、実際のところは、もっと複雑で、わかりづらくなってしまっているのが大半です。
しかし、PL(損益計算書)には、自社が抱える経営課題が数字として表現されてきます。例えば、自社の商品力が落ちてきたら、必然的に売上が落ちてきたり、あるいは、粗利率が下がったりするなどの異変が、必ずといっていいほど現れています。財務中心の会社づくりができている会社は、常に自社の数値情報が瞬時にわかるようになっているため、決断すべきときに決断を下すことができます。
その一方で、財務中心の会社づくりができていない会社は、いつまでたってもなかなか決断することができません。なぜなら、社長自身が経営判断を下すための材料がそろっていないからです。よく、「自分は優柔不断で、なかなか決められないんです」というご相談を受けることがあります。しかし、ほとんどの場合は、決めるだけの材料がそろっていないだけだったりするものです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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