機会費用を頭に入れて、時間のロスを最小化する
「あの時はほんと焦りましたね」
前職で一緒に働いていた仲間が3人集まって飲みにいった時のこと。必ず話題になるのは、あるプロジェクトでの納品のことです。
前の会社はGPS関連の企画・開発を行うベンチャー企業。大口のプロジェクトが決まり、自社で開発して製品をバス会社のナビゲーションシステムに導入する案件が進んでいました。しかし、製品の仕様を巡って二転三転し、プロジェクトは予定よりも大幅に遅れ気味でした。
そんなある日、元受先の某大手IT企業の方から、「御社の製品とバスの機材を結ぶ回線を何とかしたいんだけど・・・」というご相談。
会社として受注していた仕事は自社製品を製造して納品すること。しかし、実際にシステムを稼動させるには、製品とバスの機材を回線で結ぶ必要がありました。本来、その仕事は、元受先である大手企業さんのマターだったのですが、回線にも詳しい下請け先の社長に相談を持ちかけられたのです。
結論から言うと、会社としてはその回線の手配を受注しました。しかし、・・・。
納期と予算に見合う適当な生産先がなかなか見つかりません。結局、中国で作ることになったのですが、待てど暮らせど回線ができてこない!
途中、業を煮やした社長が1週間ほど現地に乗り込んで直接指導し、ようやく本格的に生産開始。でも、時間的なロスを回復するまでには至らず、納期には到底間に合いそうにありません。このため、最終的には、中国からの納品では足りない分を社員総出で作ることになったのでした。
徹夜して、ようやくできあがった回線をダンボールに詰めて早朝の東京駅へ。宅急便では間に合わないため、当時あった新幹線の荷物便で先方に送ったことが何回も・・・。
今となっては懐かしい思い出ですが、会社として客観的にみた場合は明らかに仕事の順番が違っていました。
リソースの少ない中小企業の場合、仕事をやる際には機会費用を頭に入れる必要があります。つまり、その仕事をやることで、できない、または、後回しにされる仕事の影響を常に考えて、やるかやらないか、どちらを先にやるかを決めなければなりません。
先の事例で言えば、回線の仕事を新たに受注したことによって、「本来優先すべき自社製品の生産がさらに遅くなった」、「納期がギリギリになったため、材料の購入、製品の納品などで割高なものを利用せざるをえなかった」、「全社員がその仕事に集中したため、他の案件がストップした」、というような弊害がいろいろありました。
目に見えるコストの部分は比較的分かりやすいのですが、直接目に見えない機会費用は後からボディーブローのように効いてきます。この点、お金のロスは稼げば取り戻せるけれども、時間のロスは永遠に取り戻せません。
「時はカネなり」ではなく、「時はカネ以上」。貴重な時間を大切にしましょう。
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