経営者が目を背けずに向き合うべきもの
「プラス思考」をもつことがビジネスや人生において大切だと言われます。私自身も積極的精神を唱えた中村天風氏を敬愛し、常に「逃げていないか?」と自分に問うということを課しています。
しかし、この「プラス思考」が自分の都合のいいように捻じ曲げられて使われていることも多いです。
つまり現実の苦しさから目をそらし、「信じていればいつかは報われる」と言いながら何も考え行動しないというものです。しかし、もちろん信じているだけでは現実は何も変わりません。
人は次のようなサイクルを繰り返して、知識や考え方を進化させていきます。
①疑念(なぜだろう?)
②思考
③信念(ならばこうしよう)
④行動
簡単に言えば、問いを立てて、考えて、仮説を立てて、それに基づいて行動するということです。
このサイクルを回していかない限り、現実は何も変わりません。しかし、考え、行動することは楽なことではないですから、弱者、視点の低い人は信念に逃げるわけです。
こういう弱者の発想をもつ人にとって、プラス思考やポジティブシンキングは非常に聞き心地のいいものです。
「念ずれば花開く」と聞いて、そうか、念ずればいいのかと安心する。しかし、念じただけで現実が変わるのならば、社長は社長室で瞑想していればいいはずです。
「考えるな、感じろ」も思考弱者にとって都合のいい言葉。
哲学者ニーチェは、「人間の本性はエゴイズムである」とし、「人は自分の欲望に応じて「事実」を決める」と、人の本性を看破しました。そして、自分の欲望が満たされないと都合よく事実をねじ曲げ、自分を安心させるためのあらゆる「言い訳」を捏造する。この都合のいい、ねじ曲げられた言い訳は「ルサンチマン(弱者の逆恨み)」であると。
金儲けばかり考えている奴は悪人だ。
自分が結果が出ていないのは環境のせいだ。
本当の自分はそうじゃない。
すべては決まっている。
すべての出来事には意味がある…。
すべてルサンチマン、つまりねじ曲げられた言い訳ということです。
一方でニーチェはこうも言いました。 人は「力への意志」を持つ。 つまり、人よりも優位にありたいという意思、欲望が引き起こすエネルギーの力があると。そして、「神は死んだ」という有名なセリフとともに、「超人」という生き方を提唱したのです。
人生は絶望の連続。
しかし、
力への意志を抱えた自分を素直に見つけ、
ルサンチマン的なひねくれた考えを持たず、
現実の苦しみをそのままに受け入れ立ち向かっていく。
どんな人生にも背を向けずに耐え、
その時々の状況に耐え、
逆恨みせずに現実を受け止めて、
ねじ曲がらずに立ち向かう。
否定と絶望に向き合い、そんな運命をも愛する生き方。
思考し行動していくことは苦しいことです。行動すればするほど失敗も積み上がります。
「現状はそれほど悪くない。」
「厳しいといってもまあなんとか回っている。」
そのように考える経営者もいらっしゃると思います。
しかし、現状維持というのは結果的にそうなるのであって、狙ってできることではありません。現状維持を選択したとたんに落ちていくものです。
特に今のように、世の中の仕組みが大きく変わっていく局面では、その流れに乗り切れない企業は、究極の絶望である死を迎えることとなります。 実際、過去の歴史においても倒産件数がピークになるのは不況時ではなく景気拡大の局面なのです。
座して死を待つのではなく、死への先駆的覚悟性を持ち、無くなることのない痛み、絶望と向き合うことで、実際に現実を変え、人を導くリーダーになれる。 社員の人生をも背負う経営者こそ、「超人」の生き方を志向し、現実を変えていかなければなりません。
最後に、私の好きなニーチェの言葉を紹介して締めくくります。
おまえは偉大に向かう
おまえの道を行かねばならぬ。
おまえの背後にもう道がないということが、
いま おまえに最善の勇気を与えねばならぬ。
友よ、世界には、君以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。
その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない、ひたすら進め。
友よ、私の涙をたずさえて、君の孤独の中へ行け。
私は愛する、自身を超えて創造しようとし、そのために滅びる者を。
孤独な者よ、君は創造者の道を行く。
孤独な創造者として絶望と向き合い、現実を変えようと立ち向かう経営者を弊社は全力で応援します。
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