生産性への影響大。なぜ今、メンタルヘルス対策だけでは不十分なのか。
ストレスチェックの義務化をきっかけとして、あるいは労災認定の増加などリスクマネジメントとして、社員のメンタル不調の予防に真摯に取り組む企業が増えてきています。メンタルヘルス研修の導入、長時間労働の是正、そして、復職者への手厚い支援など、実に様々な取り組みがあります。
ですが、今、メンタルヘルス対策だけでは不十分であるという認識が少しずつ広がりつつあります。
その理由は、「プレゼンティーズム」にあります。「プレゼンティーズム」とは、職場には行けているけれど、調子が悪く100%の状態で仕事ができていないという状態のことです。
このような状態で働いている社員は、そもそもメンタル不調者としてカウントされていない場合も多いので、会社にもまわりにも気が付かれないこともあります。ですが、このような状態の社員が職場に溢れているという事態は企業の「生産性」に大きな影響を与えるのです。
たまに、高ストレス状態にあるというのに本人でさえ気づいていないこともあり、まわりからも理解されないこともあります。そのため、ストレス反応が出ているにも関わらず、休養もせず、治療も受けず、職場からも配慮されず、一見、普通に仕事をしているように見えてしまうというわけです。
職場に出ている以上、会社は給料を支払わなければならないので、企業の負担は変わりません。ですが、100%のパフォーマンスを発揮できていない状況なのです。実は今、このコストが問題視されているのです。
そもそも調子が良くないのですから、調子が良い時と比べて、集中力の欠如から同じ仕事にも時間がかかります。さらに、この状況で残業が増える可能性もあるということです。しかも残業したからといって、100%のパフォーマンスを出せないのですから、本当にきちんとした仕事が出来ているのか、その完成度にも大いに疑問や不安が残ります。
つまり、自社のメンタルヘルス対策が、この「プレゼンティーズム」の状態にある社員を放っておき、明らかにメンタル不調で休職しているという社員や、復職する社員のみを対象としているのであれば不十分だということです。この時点で、プレゼンティーズムを減らすことは生産性に大きな影響があることを理解し、企業にとって「経営戦略」のひとつであるということに気づいていないと、しっかり対策をしている企業に今後大きく差をつけられてしまいます。
「プレゼンティーズム」を減らすためには、メンタルヘルスの徹底予防として、組織を活性化する「働きがいのある職場」の土台づくりが必要になります。そのことに気が付いている企業はすでに何らかの手を打っています。
例えば、「社員の心身の健康や幸福」にもっと積極的に関わろうと取り組みを始めている企業もあります。社員の体の健康増進に向けて様々な制度や手当を導入する企業もあれば、社内交流会やイベントを行い、普段から職場のコミュニケーション向上に努めている企業もあります。
他にも、社員にストレスに強い考え方や行動を身につけてもらうため、実習を含んだ研修を取り入れ、それらを職場内で実践する機会や場所を提供している企業もあります。
このような土台作りはそう簡単ではありません。時間をかけて作り上げ、その後もコツコツと継続していくことが求められます。が、一旦出来上がれば、徐々に社内に根付き、自ら積極的に関わろうとする社員が現われるなど、時代とともに進化していきます。そのためにはまず、経営者がこの重要性に気づき、自らリーダーシップをとりつつ、社内のプロジェクトのひとつとして社員とともに作り上げていけばよいのです。
御社は社員のプレゼンティーズムに気がついていますか?
すでに何らかの手を打っていますか?
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