アナログで非効率でも続けるものは?
先日クライアントさんからのご紹介で、企業の危機管理に取組んでおられる会社の方からお話をお聞きする機会がありました。
新しい取引先を開拓する時、いわゆる反社会勢力ではないかというのは誰しも気になるところです。その会社では30年近い実績があるので、豊富なデータベースを持っておられます。そのデータを必要に応じてお客さんに提供しているのですが、意外に思ったのはその収集方法です。
今だとインターネットで、様々な情報を検索できます。けれども、最近は反社会勢力側も手口が巧妙になっているので、ネット検索だけでは黒白がハッキリしないケースもたくさんあります。
そこで、その会社では、「国会図書館に行って、過去の新聞から事件をすべてピックアップする」→「事件で逮捕された主犯の容疑者だけでなく、同時に逮捕された関係者の名前も一人ひとり書き出す」という作業を繰り返し続けています。その結果、暴力団だけでなく、暴力団と何らかの関係があった人も、データとして蓄積しているとのことでした。
つまり、提供しているサービスはITを駆使してシステム化しているのに対して、サービスの基になるデータ収集はアナログ的な手法を採用しているという訳です。
取引先の情報を得ようとした時、インターネットを使えば、必要な情報をある程度入手することができます。しかし、普通はいちいち国会図書館に行って、新聞記事を調べるといったようなことまではしません。
情報をデジタル化することで、検索したり、並べ替えたりすることは非常に簡単になります。けれども、その情報がどこまで正確なものなのかは情報を生成するプロセスまで遡ってみないと検証できません。そして、その情報は普通は面倒くさくてやりたがらないような方法で入手したものであるほど、価値が高いと言えます。
会社の仕事を見直す時に、「効率化」はキーワードになります。
今まで1時間かかっていた仕事を30分でできるようになれば、生産性は2倍になります。そして、そのためのやり方もたくさんあります。しかし、大事なのは、効率化を実現した後で、何に時間と労力をかけるかという点です。
先の会社では、たとえ非効率的であっても、図書館に通って、必要な情報を一つひとつ拾い上げるということを地道に続けておられます。また、別の会社では、IT技術を使ってお店の在庫管理にかかる時間を短縮し、その分、お客さんとの接客に力を入れています。
効率化は一つのプロセス。効率化した後の目的をハッキリさせることで、効率化するために必要なお金のかけ方も変わってきます。逆説的ですが、業務を効率化するためには、時間をかける業務を先に決めることが鍵になります。
特に中小企業の場合、効率化が行き過ぎてしまうと、せっかく持っている強みも消してしまい、大企業との差別化が難しくなることもあります。
アナログ的だけれど、引続き続けていくものは何か。お盆休み明けこの時期、ちょっと考えてみてはいかがでしょうか。
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