感じの悪い社員の存在を、許してはいけない。サービス型事業で、絶対にスタッフに教えるべきこと。
「御社の社員さんは、感じが悪いですね」
コンサルティングが始まり、訪問も今回で4回目です。
事務所の扉を開けた時の空気、お茶を出される時の態度から、私が「歓迎されていない」と感じることが多くありました。それを社長にお伝えさせていただきました。
社長は、答えます。
「申し訳ありません。私もそう思っているのですが・・・」
矢田 「そうですね、お客様にも、彼女にも申し訳ないですね。そして、世間様にも。」
サービス業の特性として、次のものが上げられます。
「サービスは、お客様の前で、生産と消費が同時にされる」
これを言い換えると、「サービスは、事前に生産することが出来ない」となります。
そして、人がサービスをつくり出すために「品質のバラツキ」が大きくなります。また、「品質を安定させること」も難しくなります。そのサービスは、事前に造ることができません。「在庫が持てない」のです。
そして、「管理しにくい」ということになります。
社長や管理者が絶えず傍に付き、見ていることは当然できません。そのため、その多くをスタッフに「任せる」ことになります。
それに対し、製造業や物販型事業(以下製造業で統一)は、「事前に生産することが可能」です。
一見、当たり前のことのようですが、製造業とサービス業の事業特性を決定づけているところは、この「事前に生産できるかどうか」にあります。そのため、品質の安定やバラツキを抑えることがサービス業に比べ容易にできます。
そして、製造業の場合、その売り物としての完成品を、「在庫として積み上げること」が可能です。
その段階で、造ることは終わっているのです。
そして、そのモノは、「工場を出るモノと、お客様が手にするモノが一緒」となります。
これらの結果が、サービス業が難しい理由になります。
このサービス特性こそが自社の特色であり、お客様に支持されている要素ではあるのですが、社長や優秀な社員という一部の人材しか「売れない」、「提供できない」という状態の最大の原因になります。
大手は、このサービス業としての要素をとことん減らそうと努力します。
出来るだけ物販型の事業に近づけます。現場のスタッフの「裁量」を狭くするために、「すべての書類を定型化すること」、「システムで業務の流れをコントロールすること」などを行います。
我々中小企業も、完全なる「素」のサービス業ではいけません。この物販型の事業に近づける取り組みが必要になります。それにより、社員でも「売れる」、「つくれる」状態を目指すのです。
そして、それと共に、それでも残る多くの「サービス」の部分に取り掛かります。
そのサービス、すなわち、顧客との接点の精度を高める努力が必要となります。
しかし、多くの企業では、このサービス業の部分の精度を高めることが出来ていません。
実際は、個人任せであり、個人の素養や気分に丸投げ状態なのです。
そのため、社長が理想とするレベルのサービスを提供できていません。また、知らず知らずのところでお客様に不信感、不快感を与えています。
そして、毎年ある割合で、顧客は去り、競合に流れていっているのです。
サービス業における顧客の満足とは、その顧客が得た成果そのもので決まるものではありません。
美容院では、綺麗にカットしてくれたからと言って顧客満足度が高いとは限りません。
- 予約の電話応対の声の感じが悪かった。
- レジで待っていると、他の顧客が割り込んできた。それを店員は見てみぬふり。
- 勤務を終えたスタッフらしき人が、駐車場で、下品に大声で雑談している。
これらすべての接点で顧客満足度が下がるのです。
私がゼネコン時代の土木資材商社のNさん
- 発注のファックスを送ると、必ず折り返しの電話を頂きました。時に、「〇〇のほうが良い」と提案もあり。
- 電話を出た時の声が、気持ちいい。元気がもらえる。
- 駐車の仕方が、とても丁寧。
そんなところを拝見して、優先して仕事をお願いさせて頂きました。
このように、すべての接点がサービスなのです。
電話、メール、お茶の出し方。
そして、そのすべてで、「顧客満足」がつくられるのです。
この接点は、サービス的な要素が大きい事業ほど、多くなります。
販促物作成、設備設計、住宅、システム開発、店舗型など。
また、土木商社のような物販の会社でも重要になります。
なぜならば、売っているモノは一緒であるため。また、物販では、物量で勝負できる大手が有利になります。
そのため、「サービス部分」の精度が勝負になります。
モノが一緒であれば、サービスの良い、気持ちがいい業者を使うものです。
モノも業者も選べる買い物を、好き好んで「感じの悪い」業者から買うことはしないのです。
すべての接点で、完成度を高めることが必要になります。
人は、人との接点において、必ず何かしらのメッセージを相手に出しています。
それは、本人が自覚しているしていないに関係無しにです。
事務所に入った時に、感じることができます。電話をかけた時に受け取ることが出来ます。
「私は、あなたを歓迎します。」
または、
「私は、あなたを軽く見ています。」なのか。
そして、また、自分が何者なのかも発信しています。
「私は、人格も兼ね備えたプロフェッショナルです。」
または、
「私は、素人です。この会社に依存しています。」
このメッセージをそのスタッフは、絶えず発信しているのです。
そして、そのメッセージを、顧客は受け取っているのです。どんな小さなことでも、人は感じることができます。
しっかりスタッフには教える必要があります、「一つひとつの業務がどういう意味を持つのか」を。
電話を受けるということは、相手に対し、「電話をしてくれて嬉しい。私は、あなたに貢献するために張り切っている」ということを伝えるという行為です。
お茶を出すことは、相手に対し、「お忙しい中、わざわざ、お越しいただきありがとうございます。あなたは、我社にとって大切なお人です。」ということを伝える行為です。
一つひとつの業務が、一つひとつの態度が、どういう意味を持ち、顧客へのメッセージを込めるべきものなのか、それを教えるのです。
それは、マニュアルの中の作業手順というものではありません。それは、そこに込めるマインドであり、何を目的とすべきかという考え方です。
具体的に、「相手にどんな印象を持ってほしいのか」を教える必要があります。
これは、教えなければいけません。なぜならば、その多くが「無自覚」だからです。彼らは、「目の前の人が、自分の給与を払ってくれていること」に気付けていないのです。
本人たちは、それが「常識」でいままで生きてきたのです。そんな世界があることを知りません。
見える人には見えて、見えない人には見えない世界があります。その見える世界が広い人をプロフェッショナルと呼び、狭い人をアマチュアと呼びます。教えないと、解らないのです。
そして、多くの人は、気づくことで変わっていくものです。
冒頭の会社は、あれから1年が経過しています。
先日、訪問すると感じの良い女性の出迎えを受けることが出来ました。
張りのある声で挨拶があり、スリッパを出していただけました。
1年前の感じの悪い彼女です。
いまでは、そんな「嫌な」要素は一つもありません。笑顔です、動作もきれいです。
そして、彼女も楽しそうです。
そして、彼女は、そうやって自社にやってくる人を「ファン」にしていきます。
また、周囲の社員も自然に笑顔が増えていきます。
彼女の応対を受けた人は、皆、気分が良くなり、元気になり、仕事にも励むことができます。
そして、人にやさしくなれます。
気付いていないのです、気づく手伝いをすることも、経営者の役目です。
そして、顧客だけではなく、その本人も、家族も幸せになります。
そして、地域も良くなります。
金儲けに真剣に取り組む、そのための社長の理想を追求する、そこにこそ理念は存在します。
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