「営業量の確保」に潜む問題点
「この仕事を始めて10年になります。現在3店舗目のオープンに向けて準備中ですが、私が理想とするサービスを追求したら、かなり身の丈を超える金額の借り入れを起こしちゃいましてね。もう死にもの狂いでやるしか無いんです!…背水の陣ってヤツですよ。」
…これは、私が良く知るお店の経営者のお話しです。日頃からストイックに生きている方なので妙に納得してしまいましたが、本人にとっては相当の覚悟で取り組んでいらっしゃるはずです。毎日誰よりも早くお店に出て、一番の笑顔で接客する姿は正に社員の鏡。若い社員さん達にとって憧れの社長のようです。
一方で、
「保険証券を何度持ち出して見たことか・・・でも、それでは足りなかったんです。借金が膨らみすぎて、私の命を犠牲にしても返せない額だったんです。これはもうやるしか無いって奮い立ちました。」
…こちらは、先日ある経営者の会でお会いした40代の社長。まだ子どもさんも小さいようなのに物騒なことを口になさる方だな~と思って聞いていましたが、親会社からの仕事が年々少なくなってくる一方で、新たな設備投資をしないと仕事がもらえないジレンマと戦う日々を過ごしている間に、年々借入金が膨らんで行ったのだとか。数十名の社員を抱えていた社長は、「辞める」と言う決断をし損ねてズルズルやって来てしまったそうですが、「本当にもう後がない」と思ってからは、なりふり構わず出来ることは全てやり、社員と力を合わせて何とか立ち直らせたそうです。
日頃、このような経営者の方々の生き様を間近で見ていると、自分自身の生き方を改めて考えさせられるのですが、同時に、社員とひとつになって盛り上げる経営者と、自分の想いがなかなか社内に伝わらない経営者の違いはどこにあるのだろう?と考えさせられるのでした。先日も、こんなご相談をいただきました。
「ウチの営業マン、毎月の目標訪問件数を決めて活動しているようだし、毎日きちんと日報を書いてマネージャーとミーティングもしているようなんですが…一向に業績が伸びないんですよね」
毎年、各自の目標を設定して行動計画に落とし込み、それを管理する仕組みをつくっているとおっしゃる社長様からのご相談ですが、ちゃんとやっているのに伸びないのがお悩みのようです。弊社へのご相談の中には、そもそもの目標設定をしていない会社や、目標はあるが、それをどう達成するか?行動レベルに落とし込みができない会社も多いので、先程のレベルまできちんと出来ているところは珍しいくらいです。目標はあっても掲げているだけ…計画を立てても実行が伴わない…多くの会社の悩みどころですが、それをやっても業績が伸びない?!となると、社長様の悩みもかなり深刻のようでした。
「この目標や計画は誰が決めていらっしゃるのですか?」と聞くと、「目標額は私が。そこから先は社員に任せてあります。会議できちんと話し合っているハズです。」と。「それでは、なぜその目標を掲げたのか?今年、会社はどう成長したいか?社長の考えや想いは伝えられましたか?」とお聞きすると、「そんなモン言わなくてもわかるでしょう。売上が無けりゃ会社は潰れるし、給料も払えないんですから」…と返ってきました。
確かに売上が無ければ給料は払えない…ですが、社員にとっての生きがい・やりがい・働きがいは、決して給料や年間休日数などの待遇面だけで決まるものでもないし、会社の規模や役職に価値を感じる人ばかりでもありません。モノや情報が溢れ、価値観が多様化したのは消費者だけでなく足もとの社員やその家族も同様です。取り組む理由や自分の存在意義を感じないと動かない人が増えているのはまぎれもない事実です。社長自らの想いを伝え、一緒に盛り上げて行こう!という指導をおこなっていかなければ全社一丸体制は実現できません。これら無くして、社員がイキイキ強気な営業体制は在り得ないのです。
経営者の皆さま。今年度の会社の方針はきちんと伝えていますか?社員のやりがいにつながっていますか?社長の熱い想いは伝わっていますか?社員のやる気スイッチを押すのは、社長の心の中のストーリーなんですよ。
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