組織活性化に求められるコミュニケーション よくある間違い2つ
「今後は、コミュニケーション研修に力を入れようと思っているんですよ。やはり職場が活性化するには、コミュニケーションが活発であることが大切ですからね。」
人事役員の方が、同意を求めるように話しかけてこられました。確かに、やりがいがある、働き甲斐がある職場内でのコミュニケーションは活発です。情報共有が的確になされており、仕事が可視化され、同僚や部下を応援、支援しやすい環境になっているものです。
ですが、ここに落とし穴があります。コミュニケーションの量よりもっと大切なものがあります。それはコミュニケーションの質です。
ある部署で、やり手で自信家の部長がいつも部下に対して叱咤激励、つまり、お小言を連発していました。「もっと粘れ」「頑張ってやり遂げろ」「弱音は吐くな」と本人は愛のムチとばかりに声をかけています。しまいには、声を荒げて、特定の部下に対して厳しい指導をすることも・・・ここまでくると、パワハラと捉えられる可能性大です。
この部長は、「部下のためを思ってやっている」と言います。これは耳障りの良い言葉に聞こえますが、本当に部下のためになっているのかという相手目線が全くありません。おそらく部長自身が不安や恐れの強い方であり、自己防衛のために他者に厳しくしているのではないかと推測できます。
さて、この部署は果たしてコミュニケーションが活発と言えるのでしょうか。答えはもちろんノーです。特にこのような事例では、コミュニケーションが一方通行になりがちで、誰も部長に対して意見はもちろん、状況説明すら冷静に客観的に出来なくなってしまうこともあります。
たったひとりの高圧的な上司がいるために、部署全体が萎縮してしまっています。これは組織としては大問題です。本来、職場活性化のために必要なコミュニケーションは、双方向の対話なのです。
「対話ね、だったら大丈夫。部下の話に耳を傾け、きちんとフィードバックしているから、問題ありません。」と自信をもって言われる方がいるので、ここで、もうひとつの落とし穴の話をします。
部下が相談に来た時に、上司がきちんとフィードバックをすることは重要であることに間違いはないのですが、実は、ネガティブなフィードバックをしてしまう方が実に多いのです。
- 部下の出来ていないところを指摘する
- 上手くいかなかったところを注意する
- 部下の考えを「それは違う」と否定してしまう
ここでも、上司側は「相手に期待しているからこそ注意している」と言い、真っ当なように聞こえるものですが、社員がイキイキ・仕事に熱中し、能力を発揮できる職場では、これを見逃しません。
これらの否定形のフィードバックは、部下のやる気を奪うだけではなく、いずれは、「報告するといつも嫌な気分になるから今回は辞めておこう」という結果をもたらす危険性すらあると気づいているからです。
社員がイキイキ・仕事に熱中し、能力を発揮できる職場でのコミュニケーションは、その質が良いのです。一方通行ではなく、対話が出来ているのです。そしてその対話も、まずはポジティブなフィードバックから始まります。
部下に対して勇気づけのフィードバックができる上司のもとで働くことができれば、部下は自分に自信を持ち、上司への報連相も抵抗なく頻繁に行うことが出来、結果的に対話の量も質も良くなるのです。
職場環境を良くしたいと考えているのであれば、コミュニケーションを活発にするという考え方は重要なステップのひとつです。ですが、結果を出すためには、コミュニケーションの質が問われていることを忘れてはなりません。
また、「なぜ、このような対話が重要なのか。」「部下を勇気づけるポジティブなフィードバックは実際にどうようにすればよいのか」が腹落ちしていなければ、実行することは難しいのです。かけ声だけで簡単にできるようになるものではないのです。
あなたの職場では、質の高い対話が活発になされていますか?
その重要性が職場全体で理解されていますか?
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