お客様の困りごとはどう聞き出す?
「何かお困りのことはありませんか?」
先日、弊社に飛び込んで来た営業マンにこう聞かれました。IT機器の販売をしている会社で、経費削減や効率化の提案ができます!と少し強引にチラシを差し出されたのですが、「結構です。特に困っていることはありません。」…そう言って入り口のドアを閉めました。
日常よくある飛び込み営業の風景で、営業マンのほうも断られて当然…という顔で帰って行きましたが、こうした営業を朝から晩まで毎日続けていると、そのうちに心は折れ、足取りが重くなり、自信を失っていきます。「自分はダメ人間なんじゃないか?」「他社の製品の方が安いから売れなくても仕方ないよな…」「ウチの会社が有名じゃないからだよ…」そんな風に自分に言い訳をしながら喫茶店で時間を潰す営業マンをたくさん見てきました。
こんなやり方を繰り返している会社が多いためか、営業はキツい・厳しい・嫌われる…“3K”だなどと言われますが、まったくもってその通り!何の楽しみも味わえないうちに辞めていく人が多くいる職種です。駆け出しの頃は、「とにかく足で稼げ」と言われても自分の力量を知れば納得なのですが、いつまでもその生活が続くと、いい加減イヤになるものです。「何かお困りのことはありませんか?」と聞けば「ハイ!実は…」と答えてもらえ、顧客の役に立てるチャンスを多く創出できる環境を徐々につくりあげて行きたい…多くの営業マンが望むことではないでしょうか?
それでは、そのような環境は一体どうしたらできるのでしょうか?
既存の取引がある顧客であれば、当然、繰り返し情報提供をする機会があり、自社の能力や実績・経営者の熱い想いなどを伝えることは可能であり、その上で困りごとを聞けば、「貴方(貴社)だったら…」と、心を開いてもらえる確率は非常に高いと思いますが、飛び込みや初めて会った方に少しでも心を開いてもらうには少々工夫が必要です。
ここで大きなポイントになるのが「自己(自社)紹介」。相手にしてみれば、どこの何者か分からない人間に対して、心を開き、自らが抱える問題点をさらけ出す…ということはなかなか考えにくいことです。「何かのセールスだ…」、「売り込まれる…」と警戒された瞬間に心のシャッターはガラガラと音を立てて閉じていきます。
そうならないための気の利いた自己(自社)紹介に必要なのは、「相手がどんな人で、何を求め、何に困っていそうか?」を想定することです。飛び込み営業の場合であれば事前にある程度の情報を入手しておくことが可能ですし、たまたま出会った方であっても、頂いた名刺を見たり仕事の内容を聞いたりすることで何となく想像できるものです。
特に自分が営業をかけたい相手(ターゲット)に対しては、日頃から興味・関心を持ち、いくつもの想定パターンをつくっておくことが重要です。そのパターンに応じた困りごと&解決事例を自分の引き出しの中に入れておけば、最初の2〜3分の会話がグンと深く濃いものになります。この感度&精度を上げて行くことで、相手が心の扉を開いてくれる確率は格段に上がります。
冒頭の営業マンが、もしも事前にウチのホームページをチェックして業種や規模の想定をしていれば…もしも同業他社の導入事例を引き出しに持っていたならば…間違いなく私の困りごとは「経費削減」では無いことは予想できたでしょうし、最初の言葉に「攻めのIT活用」とか「販促用かんたん動画」といったワードが入っていれば多少は話しを聞いたかもしれません。
初めて会った瞬間に相手に刺さるキーワードが飛び出すようにするためには、相手を想像する力を養い、それに役立つ存在であることを示すための自己(自社)紹介=能力開示の精度を上げる必要があり、そのためには、自分の勝てる土俵をしっかり見極め、そこに対する攻撃量を増やし、データを積み上げて行く必要があります。自社の強み分析やターゲットの選定、プロセスの見える化の意味はそこにあるのです。
経営者の皆さま。御社の営業部隊が力を入れているターゲット層はどこですか?その相手はどんな困りごとを抱え、何を求めていますか?御社はそれに対し何ができますか?そのマッチングパターンを一つでも多く作り出し、自社の営業マンの引き出しを豊かにして、お客様に「ありがとう」と喜ばれる仕事ができる環境づくりはできていますか?
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