売れる!「あきない」の作り方
先日、群馬県高崎市へ視察に行きました。
JR高崎駅周辺は数年前よりも整備が進んだ印象で、様々なお店も洗練されていました。ショップの外装や内装にとどまらず、お土産ものなどは、商品自体のデザインリニューアルも成功し、トレンドをつかんだシンプルで洗練されたパッケージが印象的でした。
そんな高崎駅ですが、お土産ショップ街のなかで一際目立つ洋菓子店があります。群馬県発祥の某洋菓子メーカーです。荘厳な店構えで、主力商品はショートケーキなどの洋生菓子ではなく、乾いていてるお菓子で日持ちする進物商品です。約15年以上前の東京進出の時から定店調査していますが、東京にはない店舗デザインと主力商品の個性で、当時から長蛇の列で、今や人気店。ブランド力を年々高めてゆき、全国展開している洋菓子メーカーの一つです。
最近では、主力商品にアレンジを加え、チョコレートコーティングしたものや、有名女性写真家とのコラボレーションパッケージなど、話題づくりも非常に上手です。東京に進出した時よりも商品自体の洗練度はアップし、味はもちろん改良されより美味しくなり、パッケージデザイン、店舗デザイン、SPツール等のアウトプットも時代の空気感を上手に読んでいます。接客も問題なしで、バランスの良い洋菓子店という印象を持ちます。オンラインショップも好印象です。
一見何の問題もない洋菓子店です。街の小さなお菓子屋さんからすれば、羨望の的となるようなパワーのある会社です。
しかし。同行していた友人のある強烈な言葉にハッとさせられました。
専門家ではない一主婦として買い物を楽しんでいた友人は、遠目からでもわかる個性的な店構えのその店をチラッと見て「飽きない?あのお店。」そう呟きました。あまりにさりげなく自然体で、聞き逃しそうになる一言です。しかし、このひと言がずっと耳に残り、胸に刺さりました。
主力商品の改善、改良を実施し、ラインナップもそれなりにトレンドに合わせて構成を変えている。季節のアレンジ商品も展開し、三大催事(クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー)もしっかりと展開している会社です。軸もあり、小さなリニューアルを繰り返しながら永続的経営ができている。ところが、彼女は「飽きた」と言っているのです。東京に戻り、急いでターゲット層に近い身近な友人に複数ヒアリングしました。同じように「飽きた」と言う人が5人中3人いました。飽きていると回答した人は60%です。
商品リニューアルの視点からみたら優等生的な企業です。しかし飽きている、という消費者がいる事実。企業努力を重ねていても「盲点」がある、ということではないか。
おそらく日々の売上や営業利益の推移を見ることや、店舗での既存客、新規客の動きなどで、顧客の声なき声がある程度は把握できます。客離れを起こしてはいないか、数字が落ちている原因は何か、そんな日々の小さな確認が非常に重要となります。様々な指数でみるまでもなく、シンプルな数字で傾向がつかめるものです。その上でしっかりと対応していくことが要請されています。顧客アンケートをとる仕組みをつくる。協力会社に依頼して覆面調査なども必要かもしれません。
御社は、自社視点を捨て、顧客目線になって自社を突き放して点検することができますでしょうか。これが案外簡単なようでいて、とても難しい。自分自身の姿を360度見ることができないことを考えれば、自社をぐるっと視ることができないことも明らかです。
前出の友人は何をもって「飽きている」と言ったのでしょうか。
5メトールほど離れた場所からの呟きです。店構えを見て「もういいよ」なのかもしれませんし、さらに商品を想起して「飽きた」と言ったのかもしれません。接客の方達、そのユニフォームを見て「知ってる飽きてる」と感じたのかもしれませんし、全てを総合して感じたのかもしれません。
最近の脳科学ではさまざまな脳の仕組みが解明されています。
例えば、最近は30代でも「物忘れがひどくなった」という症状を訴え、専門外来に受診する人が増えているそうです。調べてみると実際に記憶力が低下している人は多くないそうです。むしろ問題は別のところにある。脳はもともと「忘れるようにできている」ということです。人間にとって「忘れる」ということは必要不可欠で、とても自然な営みなのです。
スマートフォンの普及でますます情報の洪水の中で生きている私たちです。人間(脳)にとって「飽きる」ことは、インプットしいっぱいになった情報を「忘れる」ために必要なプロセスであり、欠伸をすることと同じくらい自然な処理なのではないでしょうか。飽きて忘れて、新しい情報をインプットしていく。情報が増えれば増えるほど、飽きることへのスピードが加速していくと考えられます。
お客様は飽きている。
情報洪水のネット時代、むしろそう定義したほうが自然なのではないか。どんなに好調であっても、日々の小さな変化を見逃してはなりません。外部に頼った調査資料が出てくる時にはすでに遅し。今日、いま、現場での、それがたった一人だったとしても、リアルな呟きに耳を澄まし、思考の限り考えることです。
臨場での一次情報が伝えるものは、ビッグデータを凌ぐ力があります。必ず「盲点」があります。現状をしっかりと受け止める真摯さが、今日の売上をつくります。手を伸ばせば届く小さな範囲、内的環境での小さな変化が、外側に大きく広がってゆきます。
声なき声を視ていく。弊社商品リニューアルコンサルティングにおける根幹の考え方です。リアルなお客様の声を、まずは真摯に受けとめることです。サイレントカスタマーの声を聞き逃してはなりません。
セミナー予約受付中!詳細は→https://rbnc.jp/seminar/0714
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