顧客データの法則
お客様データは御社にとって守るべき最も大切な財産です。ものすごく大事なものです。冒頭から当たり前のことを申し上げております。しかし、案外軽やかに考えている会社が多いものです。お客様データについて頭の中では「重要」とわかっているが、当たり前に在る「空気」のような存在になっていたら、それは御社ビジネスにとって非常に危険なことです。
どうしてこんなことを申し上げるかというと、私自身が提供している商品サービスであるコンサルティングビジネスにおいて、お客様データの重みを日々痛感しているからです。今日は私自身を題材にお伝えします(恥を書く覚悟で)。少々長くなりますがおつきあいください。
約1ヶ月後の7月14日に自主開催のセミナーを企画しています。渾身の企画ですので、ぜひお役に立てるものと自信を持っています。このセミナーを知っていただくためにお知らせDMをお送りします。送り先は、一般的常識的考え方では「既存客」か「新規客」かという二つの道があります。今までお取引のあった方達、名刺交換させていただいた方、勉強会やセミナーなどで知り合った方達、、、。その方たちに送れば在る程度母数も揃い、非常にラクです。
例えば、支援先のビジネスで考えてみます。商品サービスをリニューアルした時にそれをだれに告知するか。まずは既存客にお伝えしよう、ということになるはずです。しかし、ここで立ち止まって考えることが要請されています。それは「自社の都合で考えていませんか?」ということです。既存客がリニューアルした商品サービスを求めているかどうか。立ち止まって考えなくてはなりません。いかがでしょうか。
私の場合は、今年1月に新しいサービスとして「商品リニューアルコンサルティング」を体系化し、約6ヶ月のプログラムとして提供できるようパッケージにしました。立ち上げの理由は、フリーランスのプランナー時代に、お客様のご要望が非常に強かったこと、提供するととても喜ばれたこと、他にやっている方がいなかった、からです。いわば20年やってきた実務を再構築し商品サービスとしてリニューアルしました。では、弊社のお客様はどこにいるのか。フリープランナーの時代に知り合ったお客様がそれを希求しているかどうか。一人一人のお客様を思い浮かべながら考えてみました。既存客ですから、その方達がどんなビジネスをしていて、どういう状況であるか、ということはじっくりと立ち止まって想像すればわかることです。
目の前にある名簿をじっと見つめていると、不思議とお客様の声が聞こえてくるのです。「足りてるよ」「欲しくない」「もう持ってる」「ぜひ知りたい」「聞いてみてもいい」・・・。恐ろしくアナログ的検証ですが、AIにはできないことです。業種業態、従業員数、売上高、営業利益といった属性データで抽出することとは全く異なります。お客様は人間です。属性で振り分けることは、効率的ではありますが非常に雑な作業と言えます。
お客様の声を想像し新しいお客様に出会うことが最も大切だと感じ、次のステップに進みました。私の場合はコンサルティングビジネスですので個人の方ではなく、企業に向けてのご案内です。お客様データを作ることは様々な手法があります。ネットやタウンページ、ハローワークの掲示板、新聞広告等々、自分であらゆる媒体から企業データを集める方法です。効率良くそして広く精度の高いデータが欲しい場合は、帝国データバンク、東京商工リサーチ、iタウンなどの知名度のある会社から名簿を購入します。実際に見積もりましたが非常に高額であり、こちらの事業規模によってはまったく相手にしてくれない取引ができません。つまり、見積もりを取ることもできません。
そこで出てくるのがネット上にたくさん存在するコストパフォーマンスの良い「名簿提供会社」です。DM発送代行から一括受注の会社もありますし、とにかくものすごい数です。口コミサイトも第三者が作っているように見せて自社PRをしているので、信用できません。検索しても検索しても、どこに頼めば良いのか迷走するばかりで、時間ばかりが過ぎてゆく・・・。私も複数の方にオススメの業者をヒアリングしましたが「使ったことがないから」「〇〇社はよかったけどデータが古い」とか、一長一短。ますます迷走します。
新規のお客様と出会う、ということは「時間」「お金」「信用」さまざまな壁をクリアしていかなくてはならない。とてつもないパワーが必要だということです。何を申し上げたいか、と言うと「お客様データ」は当たり前にあるのではない。買えばものすごく高く、価格以上の価値があるもの。事業体によっては、欲しくても買えないもの、でもある。それがなければ、ビジネスのスタートラインにもたてないこともある。
大手企業の場合は特に上記のような実感がありません。ある程度、世の中に認知されている中小企業も「お客様データ」があるのは当たり前で気にもとめていない、という感覚ではないでしょうか。さらに危険なのが、部下に任せておられる経営者やエクゼクティブの皆様です。こうしたデータはビジネスをしていれば、自然と積もってゆくのが当たり前。仕組み通り回していけばいい、そのくらいの軽やかな気持ちなのではないか。そこにお客様の顔、一人一人が浮かぶでしょうか。データを提供してくれたお客様への感謝の気持はありますでしょうか。その名簿がなくなってしまい、全てゼロからスタートしなくてはならない、そんな事態を想定したことがありますでしょうか。
自然にお客様が来店してくださり、当たり前のようにデータが入手できる時代は終焉を迎えています。既存客も日々変容しています。ライフサイクルもライフスタイルも社会情勢で変化します。顧客心理も変化変容しています。いつものように今月もDM出して、メルマガ送って…そんな感覚は要注意です。自分たちの「仕組み」を回すことにフォーカスしていると、必ずズレていきます。思考回路は「仕組み」というフレーム内におさまっているためズレていることに気づきません。
日々回しているお客様データを、一度フレームの外に出して向かい合う時間を作ってください。リニューアルした商品サービスを真に欲しがっている方達はだれか。どこにいるのか。お客様の顔が浮かべてみることです。お客様の声を想像する。さらに、実際にお客様とコミュニケーションしてみる。こうしたご自身の想像力を駆使した検証こそが、ご自身のビジネスの指針となります。顧客データひとつとっても、ビジネスの主役はお客様です。
社長にはさまざまなアドバイザーがおられることでしょう。財務状況から「この商品サービスはやめといたほうがいい」と進言してくださる士業の先生、マーケティング手法からのアドバイス、まずは人財という先生、どの先生方も正しいのです。正しい、けれど、いついかなる時も忘れてはいけないのが、商品サービスあっての経営であり、それを買ってくれる求めてくれるお客様こそが、真の「主役」です。その方たちとの関係づくりに必要不可欠な「チケット」、それが「お客様データ」です。
日々の支援の中で「お客様データ」の風景はさまざまです。創業したばかりで手書きの名簿を恥ずかしそうに見せてくださった社長、レジと連動しているが活用したことはない、DMを出してるけど高齢化で届かなくなって使えない、整理できてない名刺の束をドンと見せてくださった社長、アンケートがそのままになっている、700件一晩で手入力したオーナー、高額な名簿をそろえて新規開拓にチャレンジするトップ等々、、、。百社百様です。
どんな時も忘れてはいけないのが、お客様視点です。ルーティンで回している先にいるお客様の求めているもの、欲しいもの、気分、必要感、強烈に欲しいもの、満たされたいと感じているものコト。財務状況、会社の重点商品、またはマンパワーから「商品サービス」を発想するのではなく、お客様の視点から考えることです。そうしてはじめてお客様へのチケットが「有効」になるのです。
お客様データの集積は、御社にとって財産です。ものすごい宝物です。たとえ大手のビッグデータであっても、起業したばかりの手書きの名簿であっても、会社都合で活用し仮にダイレクトメールが届いたとしても受け手にとっては「不快なもの」となります。欲しいと思う人に、確実に届けるために、謙虚に感謝しながら調えてゆく姿勢が求められています。私自身が、社会に参加しているものとしてそう在りたい。自分の経験を通し、いま襟を正したところです。
追記:7月14日にセミナーを開催いたします。ぜひ一度、話を聴きにいらしてください。商品サービスのリニューアルの具体策について知っていただき「実はこんなのが欲しかったんだ」という希望、ビジョン、未来への展望がパッとひらけていく…そんなセミナーになるよう全身全霊でお話しさせていただきます。
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