衰退リーダーは、部下の仕事を奪って、忙しく走り回る 成長リーダーは、部下に仕事を与えて、次の計画を練る
「その時、『私がやる必要なかったんだ』って思ったんです。(中略)『私がみんなの成長機会を奪ってた』と」
ある時、面談をしていましたら、会社の生命線である部門を統括するSさんが心境を吐露してくれました。
このSさんは、「○○は私がやらなければならない」とか「他部門へは部門責任者である私が話すべき」と考えていたそうです。
組織が多くなり、部門も増えると、部門をまたぐ業務も当然増えていきます。各部門間の調整は、部長が行うという過去のルールでは、いつしか誰も得することがなく、誰もが損することになっていました。
単なる伝達事項ですら、幹部経由してやっていたそうで、単純な言い忘れが大きな問題になることが頻発するようになったそうです。
そんな中、、Sさんが、「じゃ、○○事業部長に伝えておくね」と部下に伝えたら、部下がSさんの言葉を遮るようにして言ったそうです。「それは私が直接○○事業部長に伝えておきますよ。」と。
その言葉に、Sさんは、気づかされました。「そうか、それは、私じゃなくても大丈夫だ!」と。そして、冒頭の言葉につながります。
ここまで読んだ多くの経営者の方々の中には、違和感を感じた方も少なくないと思います。でも、これが現実です。
「なんで、そんなことも判断できない?」
「なんで、そんなの最初から自分でやらせない?」
このようなことを怒鳴ったところで、ほんの少しの変化しか望めません。幹部の行動を司る行動の基準を変えない限り、永続的に、自動的に、そして、加速的に、幹部の行動が変わることはありません。
今感じてる違和感を解消することなしに、御社の幹部が次のレベルに引き上がることはありません。
仕事は大きく4つに区分けすることができます。
- 仕事には今の実力で対応すること
- 今の実力以下で対応できること
- 背伸びしたら対応出来ること。
- どう頑張ってもすぐには対応できないこと
組織を上手く動かせない幹部は、部下に1と2の実力以下の仕事を与えます。中長期でみれば、部下の価値は陳腐化は避けられません。もちろん、陳腐化した社員の集まりである組織自体の陳腐化は自明のことです。
退職が多い、組織の成長が滞っている、そんな組織に接するとき、この社員と組織の陳腐化が原因であることは 少なくありません。
驚くべきことに、衰退リーダーは、この状況を更に悪化させるようなことを平気で行います。
特に頻繁に遭遇するのは、次のような衰退リーダーの行動です。
それは、外部からちょっとでも、自分のチームに背伸びをするよう圧力が掛かると猛反発をする衰退リーダーです。この衰退リーダーは、「何を守ろうとしているのか?」自問することはありません。
その代わり、「大変なことは避けたい」「面倒なことは避けたい」「努力することは避けたい」という、変化を嫌う社員達の熱狂を 勝ち取るのです。
そして、「自分は大変よいことをした」等という飛んでもない勘違いをするのです。
幹部が「部下の成長の機会を作る!」と意図していない限り、3の背伸びをした仕事を部下に渡すことは至難の業です。
「人は易きに流れる」ため、多くの場合、部下にちょっとでも、背伸びを要求しようものなら、「嫌な顔をされる」「顔が強ばる」「目が伏し目がちになる」等々の嫌々サインを幹部に送ってきます。
リーダーが確固たる意図を持たない限り、この嫌々サインに敏感に反応します。そして一度それをすると、中毒になるのです。
部下の顔色をうかがい、部下に変な気を遣い、部下の反応に過剰に反応する、ことになってしまいます。
つまり、衰退リーダーは、社員と組織の陳腐化に手を貸すのです。衰末路は、上司も、部下も、組織も、顧客も、不満足。まさに悲劇です。
その点、成長リーダーは、自らの役割を果たすために、徹底的に部下に仕事を委譲していきます。もちろん、部下に背景を説明するのですが、全員がそれを理解し、協力的になるとは限りません。
それでも、非協力的な社員の言動に臆することなく、自分の仕事とそれ以外の社員の仕事を明確に分けていきます。とある企業の新規事業の役員になった女性幹部のYさん。
お会いした当初は、社員に仕事を任すのも、おっかなびっくりでした。ところが、衰退リーダーが陥りやすい罠を知り、自らは成長リーダーになると決めてから、それを徹底しました。
あらから3年、社員の発言が変わり、行動が変わり、そして成果が変わりました。その結果、Yさんの率いる組織は、業界全体が前年割れする中、3年連続、前年の実績を上回るという快挙を成し遂げたのです。
そして、Yさんは、組織を動かせる成長リーダーとして、新規事業の責任役員となったのです。
さて、御社は如何でしょうか?
幹部は、部下の成長の機会を作っているでしょうか?
それとも、部下の成長の機会を奪っているでしょうか?
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