『人財』がいれば、売上はアップするのか?
「辻先生、会社の業績は最後は〝人”が決め手ですか?」
弊社の講習会に参加された経営者からの質問です。私は、次のように答えました。
「〝人”は重要ですが、あくまで一つの要因でしかありません。」
【会社は人なり】とはよく言われますが、この時の〝人”は、多くの場合、社員を指すケースが多いと考えられます。
優秀な社員が多いほど、経営者の指示命令への理解度は高く、現場でも自ら工夫して良い動きをするでしょう。しかし、それだけで会社の業績は良くなるでしょうか?
私には、次の疑問がどうしても湧いてくるのです。
「お客様は、優秀な社員に対応してもらうために、果たしてお金を払うのかと…?」
現場レベルで、一番わかりやすいのは卸販売や小売業です。
営業マンや受付応対が良いからといって、例えば、商談相手が経営者に近くなればなるほど、それだけで契約や購入を決めるはずもありません。
優秀な社員かそうでないか以上に、契約・購入を決める要因は、
『自分が欲しい商品を販売している会社だから、あるいは、現在抱えている問題を解決してくれる取引相手だからです』
もちろん、接客態度に難があったり、約束を破るようであれば問題外です。ゆえに、一定レベルまでは社員を引き上げる必要はあります。しかし、接客や挨拶が重要と考え、必要以上に強化しても、更なる売上アップにはつながらないのです。
次は経営レベルで考えてみましょう。
これは、昨年から報道をにぎわす大企業を挙げれば充分です。
「東芝やシャープには、世間で言うような〝人財”は、いなかったのか?」
私には、同業界で比較すれば、日本でもトップクラスの人々が集まっている会社と思えてならないのです。社員研修や幹部教育も、世間水準以上に実施していることでしょう。しかし、ここ数年の業績は、皆さんも知る通りです。
『人財』などという耳触りの良い造語に踊らされてはいけません!。
中小企業の経営者こそ、優秀な社員が多くいるだけでは、会社の業績は決してあがらないことに改めて気付くべきです。
そうすれば、経営者が、もっと良い社員さえいれば…という「無いものねだり」の落し穴に陥る危険性がなくなります。
真に経営が強くて儲かる中小企業とは、現有戦力を最大限活かすことで、営業戦略や商品戦略で競合他社と差別化できており、今後も入社してくるであろう同業界で平均並の社員でも利益を生み出せる仕組みのある会社のことを指すのです。
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