販売促進策としての価格競争に巻き込まれないために―極めて重要な要素である「隠れ企業資産」―
販売不振に陥ったとき、なかなかいい知恵が浮ばないと「値段を下げたらどうだろう?」というところへ、つい行きがちになります。
私が、これまで見てきた多くの経営者がそうでした。有効な販売促進策が思い浮かばないのでついここへ行きつくのです。
しかしこれは、最も安易で最も愚かな策と呼ばざるを得ない一手です。
以前、私のクライアントであるガソリンスタンドの社長が、近隣の大手資本のスタンドが仕掛けてきた価格競争に真っ向から対抗したことがありました。値下げ合戦の末、とうとう向こうが音を上げて終止符を打ったのですが、その年の決算書は売上最高、利益は赤字ではなかったものの近年では最低のものでした。
鬼ように働いたにもかかわらず利益はチョボチョボだったことになります。最後に、あんな消耗戦は二度としたくない、と社長が吐き捨てるように言っていた姿を思い出します。
これは、仕掛けられてやむなく受けて立ったというお話ですが、少なくとも自分から値下げの口火を切るという愚は避けたいものです。
しかしここでこんな意見があるかも知れません。「そう言うが、値下げをすれば最も早く結果は出るじゃないか。他に有効な手を思いつかないときはやむを得ないんじゃないか。」と。
なるほど・・しかし、このご意見には大事なポイントがあります。「他に有効な手を思いつかなければ・・・」というところです。販売不振に対して有効な対策を考える・・・・もちろんこれはやらなければならないことですし、大事な経営上の判断でもあります。
しかしながら、いつもいつも販売不振の度に、まるで泥縄式に何か考えるのでしょうか?右往左往するのでしょうか?これでは遅い!と言わざるを得ません。
つまり、経営者たるもの、販売促進については常に頭に置いて考えておくものなのです。普段考えていないから、いざというときに「値下げ」しか思いつかないのです。
販売促進策というのは普段から考えていたとしても、そのすべてに手が打てるわけではありません。いつもは優先順位をつけて、できることから手をつけているはずです。
しかし、販売不振に陥ったときはその順位を入れ替えることも必要です。多少予算をかけてでも、普段手をつけていなかった思い切った手を打つこともあり、なのではないでしょうか。普段からこんな準備ができていれば、いざというときに「値下げ」という情けない方向に舵を切らないで済むのです。
更に言えば、こんな時に振り返るべきは、私が以前から提唱している「隠れ企業資産」です。改めてその定義を述べてみますと
「企業の理念や哲学、思いやこだわり、信条、受け継がれてきた伝統といったもの。更に、特殊な技術や人材、社長の人脈といった決算書上の『貸借対照表』には全く表現されない裏に隠れた無形の資産」
ということになります。
販売不振のときは、新たな販売促進策とともにこの「隠れ企業資産」に磨きをかけることを考えるべきです。何故ならば、最も早く思いついて最も安易な愚策であった「値下げ」をしなくて済むからです。しなくて済む、というより「値下げ」から最も遠い策と言った方がいいかも知れません。
そもそも「値下げ」の発想は「比較」からきます。或いは「競争」があるからそっち(値下げ)へ行こう行こうとつい心が動くのです。
「どうせ(他社と)同じようなものなのだから、値段が低い方が売れるだろう。」
と、つい思ってしまう訳です。
しかし、自社の提供する商材が唯一無二のものだったらどうでしょう。唯一無二のものですから、そもそも比較の対象になりません。わざわざ競争の世界に入っていく必要がないのです。
もちろんこれは、完全無欠の唯一無二と言っている訳ではありません。そういった強い印象があるだけでまるで違う、と言っているのです。
普段から御社の持つ「隠れ企業資産」について怠りなく情報発信を続けていれば、唯一無二的印象を世間に向かって与えることは可能なはずです。そうすれば簡単に他との比較競争に巻き込まれることもないでしょう。
普段から「有効な販売促進策」を考えていることと「隠れ企業資産」について常に磨きをかけていること、この2点は販売不振という逆風にさらされた時、極めて有効に働く企業戦略であることを覚えておいてください。
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