第68講【新規事業に意欲的になる社員を育てる秘訣】
企業寿命30年説ということがあるように、今の現在の事業そのものが30年後も存在しているかどうかはわかりません。そのため、本能的に危機感を持つ経営者が新しい事業の立ち上げを考えます。
「新しい事業をする」と聞いただけで、本来、社員の立場でもワクワクするものです。ところが不思議なほど多くの企業で、新規事業を立ち上げるときに希望者を募っても社員が手を挙げることはありません。
そんな状況を見て経営者は嘆きます。うちの社員は意欲がなくて新しいことに挑戦しようとする人がいない。
この経営者の感想は間違っています。すべての社員とは言いませんが、新しいことに取り組めるチャンスは長い人生の中でそうあるものではありません。
そんなことは社員もわかっています。新しい事業に取り組むことができるのであれば、やってみたいという気持ちは間違いなくあります。ところがある事情があって手を挙げることができないのです。
それが新規事業で失敗すると、自分の評価が下がり、それだけではなく場合によっては昇給・賞与まで下がることです。これがその会社での過去の事例として残っているのです。
もちろん新規事業を成功させたいという気持ちはあるでしょう。しかし新規事業がすべて100パーセント成功することはまずありえません。
新規事業の成功する確率は2、3割です。多くの新規事業が失敗するのです。新規事業に集まった優秀な社員であったとしても、その成功の確率は変わることはありません。しかし、新規事業に着手しなければ、企業を100年以上存続発展させることはできません。
この問題を根本的に解決する方法があります。それが新規事業に集まった社員の評価の昇給・賞与を決める今までの成長点数は一切変更しないということです。
たとえば、新規事業のチャレンジ期間が1年間であったとすれば、優秀な80点の社員が新規事業に取り組む場合、これからの1年間はその80点で昇給・賞与を決めると約束することです。仮に新規事業が失敗したとしても、一切そのA社員の昇給・賞与が
下がることはありません。
ただし、評価そのものは新規事業が順調にいっているかどうかを確認するためのものでもあり、その新規事業の成長シートで社員の評価をすることになります。
もっともこの成長シートは、新規事業には当然ながら優秀な社員がまだいませんので、新規事業に集まった社員がチャレンジシートとして作成することになります。
「チャレンジシート」。とてもいい響きです。このチャレンジシートは、そこに集まった社員がとにかく実現したい目標を掲げます。
この高い目標が実現できないとしても、自分の評価に何ら影響を与えないとわかると、どれぐらい高い目標を設定するか。今まで多くの経営者が驚いてきました。それほどまでに社員は挑戦したいと考えているのです。
この成長シートで新規事業の社員は挑戦していくことになります。成功すればその新規事業に参画した社員たちは大きな経験をしたことになるでしょう。大いにこれからの事業に自信を持つことになります。
また、失敗したとしても、その失敗は決して無駄ではありません。その失敗から学ぶことはたくさんあるからです。どちらにしても新規事業に参画したら、社員にとってマイナスになることはない。
このような仕組みをつくった会社は、社員が「新規事業」という言葉を聞いた瞬間に、我も我もと手を挙げます。
その様子を見ながら、社員の本来の成長意欲を阻害させない仕組みはとても重要だと感じるでしょう。そんな成長シートの活用の仕方を工夫してください。
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